大きく変わったエクステリアデザインや大画面ディスプレイで構成されたインテリアなどが賛否両論となっているメルセデス・ベンツのフラッグシップ、新型Sクラス。実際にS500 4マティックAMGラインに試乗した筆者、島下氏はどのように感じたのだろうか。進化の真意はどこにあるのだろうか。(Motor Magazine2021年5月号より)
新たなSクラスの方向性を示す内外装
2020年9月のワールドプレミアから半年。いよいよ上陸した新型メルセデス・ベンツ Sクラスは、第一印象からして鮮烈だった。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
近年のメルセデス・ベンツに共通の複雑な線や面をできる限り削ぎ落としたデザインは、事前に映像を見る限りでは、風格あるいは迫力が薄まったかも?とも思えた。だが、実際に対面するとラジエーターグリルが大型化され、スターマークがフード上に置かれたフロントマスクは新鮮でありながら威厳に満ちているし、ネット上などで賛否が分かれていたリアビューも非常に精緻な印象で、個人的には一発で気に入った。何より、オーセンティックなセダンの王道のようでいて、どこか艶めかしさもあるフォルムの美しさに、じわじわと心奪われた次第である。
では、こちらもさまざまな意見が飛び交っているインテリアはどうか。最初は大画面ディスプレイに囲まれた空間に、仕事を離れてもまた画面の前か・・・と落ち着かない感もあったのだが、実際に使い始めてみると、スマートフォン感覚で難なく使えてしまうし、動きも軽快、画質も超精細で、すぐに馴染んでしまった。ただし、まだこなれていない面はあるし、シートやミラーの調整を含むハードスイッチのタッチなどは、要改善と言っておく。
要するに新型Sクラスは、外装も内装も、まさに若々しい今の時代のラグジュアリーを体現しているのだ。重厚長大で周囲に威厳を示すものから、何より自分の心が満たされる美しさや、ハイテクを当たり前に活用した過ごしやすさへのシフトは、まさに現代のラグジュアリー観と言えるだろう。
歴代のSクラスの中で一番ワインディング路が気持ちいい
走りっぷりはどうか。アルミ比率が50%以上とされ、遮音材が構造材に一体化された軽量・高剛性ボディの恩恵は、まず類まれな静粛性に結実している。エアサスペンションはEクラスなどと同じく3チャンバー式とされ、日常域でのしなやかさと高速域でのフラット感を、より高い次元で両立。先代よりふんわり感はわずかに薄らいだが、代わりに格段に落ち着きが増した乗り味は絶品である。
しかもフットワークが素晴らしい。操舵の後、グラっと傾く動きが消えて自然なロール感で気持ち良くターンインできる。そして旋回特性は、試乗した標準ボディでも5.2mを超える全長を意識させないニュートラルなもの。ワインディングロードがこれほど気持ちいいSクラスは歴代初だろう。
これには新採用のリアホイールステアの貢献度が大きそうだ。実際、外から見ていると、山道でも駐車時でも想像以上に後輪がグイグイ操舵しているのだが、それでいてこれっぽっちも違和感を抱かせることはないのだから見事だ。
3L直列6気筒ターボエンジンに電動コンプレッサー、ISGを組み合わせたS500のパワートレーンは、滑らかな吹け上がりと電動化のメリットをフルに活かしたツキの良さが心地良い。4MATICの安心感も、ついつい右足に力が入る要因となった。
外装デザインを見て、インフォテインメントシステムを体験したところで頭に浮かんでいた思いが、実際に走らせて確信に変わった。新型Sクラスはリアシート重視のフォーマルセダンから、ドライバーズカーへと変貌を遂げている。声高にそう主張しているわけではない。
しかしながら世界のSクラスユーザーの主流は今や、若くアクティブな成功者達に違いない。彼らはリアシートでおとなしくしているより、行き先を自ら決めることを求めるはずだ・・・という変化は必然と言っていい。
しかも、それを圧倒的な快適性、フォーマル性、リアシートの居住性などを犠牲にすることなくやってのけたのが新型Sクラスである。正直、初めて自分で所有する姿を想像してしまったが、それは筆者もそれなりの年齢になってきたことだけが理由ではないはずだ。(文:島下泰久/写真:永元秀和)
メルセデス・ベンツ S500 4マティックAMGライン 主要諸元
●全長×全幅×全高:5210×1930×1505mm
●ホイールベース:3105mm
●車両重量:2050kg
●エンジン:直6 DOHCターボ+モーター
●総排気量:2996cc
●最高出力:320kW(435ps)/6100rpm
●最大トルク:520Nm/1800-5800rpm
●トランスミッション:9速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・76L
●WLTCモード燃費:11.2km/L
●タイヤサイズ:255/50R18
●車両価格(税込):1375万円
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みんなのコメント
まぁドイツ車は何処のメーカーもドライバーズカーが基本ですよ。
どうせ、次の代にモデルチェンジしたときも、同じこと言うんでしょ。