良くも悪くもハイブリッド的じゃない
この車はおそらく意図的にプリウスよりもハイブリッド感が薄められており、日常使用の違和感が少なく普通の車として使う事
2009.12.13
- 総評
- 良くも悪くもハイブリッド的じゃない
この車はおそらく意図的にプリウスよりもハイブリッド感が薄められており、日常使用の違和感が少なく普通の車として使う事が出来ます。ただ、その分燃費性能もあまり驚くほどのものでもないのですが、この車がターゲットにしているのは、従来マークⅡ、プログレ、ウインダムなどトヨタ製高級車を乗ってきた中高年の方なのでしょうから、あまり極端に燃費性能を追求するより、使い勝手の良さや違和感のなさを重視したのでしょう。
それゆえこの車のハードについては特に大きな問題もなく、普通のトヨタの車だなあという印象ですが、この車の本当の問題は下記の短所の欄に記載する通り、
①とうとうレクサスブランドとトヨタブランドのバッジエンジニアリング車が発売されてしまったこと
②プリウスやレクサスHSの大量の受注残があるにもかかわらず、次々にハイブリッド車を発売するトヨタの顧客軽視の姿勢
の2点に尽きるように思います。
①については、レクサスブランドの日本展開の際に、トヨタブランド車のバッジエンジニアリング車(と前輪駆動車)は販売しないと宣言していたはずですが、それが反故にされてしまいました。SAIはともかくレクサスオーナーはこの点をどう受け取るのでしょうか?
ここ最近、RXやHSの発売によって上向いてきたレクサスの日本国内での販売ですが、依然として苦戦が続いています。(それは国内自動車市場全体の問題ですが…)
高級ブランドはどんなに苦しくてもあまり安易な拡販策に頼らず、地道に長い時間を掛けて本当に上質な車だけを販売するべきではなかったかと思うのですが…
②については、一体何故今のタイミングでのSAIの発売なのか理解に苦しみます。エコカー減税や補助金、エコカーブームで勢いのある今、ハイブリッド車を立て続けに投入して市場を支配したいというトヨタの意図が見え見えです。景気が後退している今、内需拡大・消費拡大して世の中に金を回さなければいけませんが、ブームに踊らされないよう、我々消費者も賢くならなければいけませんね。
- 満足している点
- ・ハイブリッド車として洗練されてきた運転感覚
初代プリウス以来のトヨタのハイブリッドカーの運転フィールといえば、停止直前のカックンブレーキ、CVTと回生ブレーキによる減速時の過剰な引っ張られ感など、いかにも過渡期を感じさせるものでしたが、最新ハイブリッドであるSAIはそういったトヨタハイブリッドのネガティブな部分をほとんど感じさせず、普通の車として運転できます。停止直前のカックンブレーキは多少あるものの、先代プリウスなどと比較するとほとんど問題にならないレベルです。
現行プリウスとの比較でも、プリウスでは減速時の「キーン」というインバーター音やカックンブレーキが気になるのですが、SAIはほとんど気にならず、世代が一つ新しいなという印象を受けます。
・快適性の高い室内
ハイブリッドなので、特にエンジン停止時の静かさは特筆ものです。エンジン始動中もロードノイズ・風切り音も含めクラウンよりも静かに感じます。
試乗車は18インチホイールが装着されたGグレードだったのですが、乗り心地も快適でした。マークXに比べても突き上げ感が少なくて当たりが柔らかく、18インチを履きこなしている印象です。ワインディングや高速では印象が違うのかもしれませんが、こと街乗りの乗り心地に関してはトヨタセダンの中でも最上の部類ではないでしょうか。
・フラットな後席足元
後席床面中央の排気管を通すための盛り上がりがほとんどなく、足元空間が広々としています。
最近は軽自動車でも床面がほぼフラットな車もありますが、実際の空間以上に足元が広く感じられますね。
・ナビが標準装備
最近のトヨタの車はプリウスをはじめ、一見価格が安く見えても実はナビがなかったりオーディオレスのため、ナビを装備するためのオプション料金が高額で結局は総額が高い…ということが多いのですが、SAIは最初からナビを標準装備しています。SAIクラスの車なら今やナビは常識的なので、標準装備の方がいいでしょうね。
・レクサスHSよりもバランスの良いスタイル
兄弟車であるレクサスHSよりも車体前後デザインを変える事により、10cm近く全長が短縮されていますが、その分前後オーバーハングが短くてバランス良く軽快に感じます。高級感を演出するために、逆になんとなく間延びしているHSよりも好ましいスタイルですね。
- 不満な点
- ・圧倒的ではない燃費性能
10・15モード燃費で23.0km/LとプリウスLの38.0km/Lよりもかなり数値が劣ります。排気量が1.8L→2.4Lと拡大していますし、SAIはプリウスほどには燃費指向が強くない(=モーターで走行する割合が低い?)ので数値を追い求めていないのでしょうが、それにしてもちょっと悪化度合いが大きいように思います。
・エンジンがかかった際の音と振動
ハイブリッド車の宿命ではあるのですが、エンジン始動時の音と振動が気になります。特に冷間時にはちょっとびっくりするぐらいで、レクサスGSハイブリッドなどよりも明らかに音・振動対策のレベルが低いです。
この車のエンジンは2AZ-FXE型ですが、2AZ系はいかにも大排気量の大衆車用エンジンといった感じのガサガサした音なので、あまりSAIクラスの車のキャラクターに合ってない気がします。
・掴みづらい車両感覚
フロントウインドウの下端が高いため、前方の見切りが悪いです。試乗車にはメーカーオプションのフロントモニター(クリアランスソナー・バックソナー込みで84,000円)が装着されていて、これは有効ではあるのですが、安全性にはまず直接目視による視界確保が重要だと思うのですが…
・レクサスHSとの住み分け・ブランドイメージ確保は大丈夫?
SAIはレクサスのハイブリッド専用セダン「HS」と基本骨格・プラットホームを共用する兄弟車ですが、これとの住み分けは大丈夫なのでしょうか?
これまでレクサスは、日本国内においてトヨタブランド車のバッジエンジニアリングによる兄弟車は販売しないとしていました。例えばISとマークXなどのようにプラットホームはトヨタ・レクサス間で共用するものの、実際には全く別の車…というのが従来のやり方でしたが、SAIとHSは実質的にほぼ同じ車といえます。SAIはともかくHSはこれでブランドイメージの確保は出来るのでしょうか?
・プリウスの納車もまだなのに…
プリウスは未だに販売は絶好調で、12月受注分は来年6月以降の納車になるそうです。生産工場が違うので一概には言えませんが、それだけ受注が逼迫しているのなら、まずプリウスの受注残を納車してしまってからSAIやレクサスHSを発売するのが顧客に対する誠意だと思います。
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