スズキ ワゴンRスマイル 「ワゴンRだけど設計はまったく別」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

ワゴンRだけど設計はまったく別

2022.7.20

年式

2021年9月〜モデル

総評

手ごろなスライドドア付きハイトワゴンが欲しい。そんな人にとってはちょうどいい商品企画。標準ワゴンR以上に室内は広く、スライドドアのおかげで乗り降りがしやすいのも魅力です。余談ですが、車体設計のベースとなっているのは「ワゴンR」ではなく「スペーシア」。いうなれば“天井を低くしたスペーシア”なのです。

満足している点

スライドドアを採用しつつ、リーズナブルなプライスでコストパフォーマンスに優れること。昨今の軽自動車の売れ筋はスライドドア付きのモデルですが、その影響もあって車両価格は高め。そんななかワゴンRスマイルはスライドドアを備えつつ価格を抑えているのがナイスです。

不満な点

個人的にはターボエンジンが欲しいところ。自然吸気エンジンだと、バイパスやちょっとした上り坂でもパワー不足を感じます。もうひとつ、細かい話になりますが純正カーナビを装着しようと思うと、メーカーオプション品は9インチ画面に周囲360度を見回す全方位モニターまで付いたタイプだけの設定となり、18万7000円と車両価格のわりに高価になってしまうのがなんとも惜しい（内容の割にはリーズナブルとも言えますが）。もっとシンプルな機能でいいから安価なタイプがあればうれしい……のですが。

デザイン

3

名前に「ワゴンR」と付くものの、デザインにおいて（そもそも車体設計自体も）一般的なワゴンRとの共通点はなくオリジナル。丸いヘッドライトなど愛嬌のある雰囲気が特徴で、ある意味乗る人を選ぶでしょう。このキュートな雰囲気を好む人もいるいっぽうで、スーツを着た男性にはハードルが高いという印象を受けます。ただ、それはスズキもわかってやっていることであり、つまりはこのクルマの狙いが女性ユーザーを中心とした層だということです。

走行性能

2

加速のゆとりを求めるかどうかで評価は変わってくるでしょう。ワゴンRスマイルはスライドドアの採用により標準のワゴンRに比べて車両重量が増していますが、いっぽうでターボエンジンの設定はなし。だから峠道の上り坂やバイパス＆高速道路への合流では力不足が否めず、そういった道路を走る人にとってはターボエンジンが選べないのはマイナス。動力性能面でいえば、街中なら気になることはありませんが、郊外や登り坂の多いシーンだと正直なところちょっと厳しいと思います。

乗り心地

3

タウンユースを重視したソフト気味のサスペンションゆえに、快適に乗れます。意外にいいのは静粛性で、加速時こそエンジン回転が上がりがちなので車内もうるさくなりますが、巡行に入ってしまえば高速道路でも風切り音などの騒音がしっかりと抑えられて驚き。ちなみに室内の広さは、頭上でいえばより背の高い軽自動車の「スペーシア」ほどの空間のゆとりはありません。しかし「これで十分どころかそれ以上に広い！」のレベルだし、後席の足元など前後間隔はスペーシアと同等に確保されていて広々。

積載性

2

標準状態（後席を最も後ろにスライドした状態）での荷室は広いとは言い難いですが、リヤシートはスライドも折り畳みも左右独立で行えるのでアレンジ幅が広いのがいいですね。シートスライド量は160mmで、左右席とも最も前へスライドすれば後席を畳むことなく大型スーツケースの積載が可能。その際でも後席足元はゆったりとした空間が残るのだから実用的です。

燃費

4

FFモデルのWLTCモード燃費は23.9〜25.1km/L。マイルドハイブリッドを搭載したモデルはもちろん、そうでない仕様でもハイレベルな燃費性能なのだから素晴らしいところ。スズキのクルマは、実燃費でもカタログ記載値（WLTCモード値）との乖離が少ないのも隠れた美点。よほどラフな運転をしない限りガソリン消費量は少ないので、もし燃費が悪いと感じた場合は自分の運転スタイルを振り返ってみたほうがいいかもしれません。

価格

4

価格帯のイメージは「ワゴンR標準車以上、スペーシア未満」。コストの増すスライドドアを備えるのでワゴンR標準車よりは高い値付けですが、スペーシアに比べると手の届きやすい価格となっています。これは開発の狙いのひとつで、電動スライドドアの採用水準などスペーシアに比べると若干装備が落ちていると感じることもあるものの、それも「買いやすさ」を狙ってのことなのです。