スバル WRX S4 「スバルの最高峰だが、何かが足りない」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

工藤 貴宏
工藤 貴宏(著者の記事一覧
自動車ジャーナリスト
評価

4

デザイン
3
走行性能
5
乗り心地
4
積載性
3
燃費
3
価格
3

スバルの最高峰だが、何かが足りない

2022.7.20

年式
2021年11月〜モデル
総評
かつて「ランエボ(ランサーエボリューション)対WRX」として世の中を盛り上げていた頃が懐かしいですね。ランエボはすでに販売を終了し、WRXは今では貴重となった本格スポーツセダンです。そういう意味では、しっかり残してくれているスバルに感謝。いっぽうで、そんな貴重なクルマだからこそMTでも乗りたいのですが……。追加を期待したいところです。
満足している点
実用的なパッケージングでありながら、サーキット走行までバリバリこなす走行性能との両立はさすが。しかも、手が届かないほどではないプライスとしてくれているのが嬉しいところです。こういうスポーツカー(ハイブリッドではないピュアエンジンのモデル)を購入できる残された時間も、そう長くはないでしょう。
不満な点
「S4」というよりは「WRXシリーズ」として気になるポイントですが、MTが選べないのは残念でなりません。よりハイレベルな走行性能が自慢の「WRX STI」も、従来の形では市販されないそうです。それはとても悲しいことですが、WRX STIが世に送り出せないのであれば、海外で展開している「WRX S4」のMTモデルを日本でも出してほしいところですが……。
デザイン

3

コンパクトなスポーツセダンらしい凝縮された塊感や躍動感は申し分ないのですが、SUVのフェンダーを感じさせる演出は賛否が分かれるところ。デザインの意図は「スポーツカーの力強いオーバーフェンダーをイメージした」とのことですが、なんとなくSUVっぽく感じてしまいますよね。ちなみに、これは単に見せるためのデザインではなく、表面にハニカム状の細かな凹凸をつけることで空気の剥離を防いで空力を向上させる“実効空力デバイス”になっています。機能が形になっているのです。
走行性能

5

速さや走る楽しさに関しては申し分ありません。先代モデルよりもエンジンのスペック(最高出力&最大トルク)が控えめとなり、トランスミッションもスポーツ走行に不向きと言われるCVTなので不安を感じる人もいるかもしれませんが、サーキット走行まで試した経験から言うと心から楽しいと思える走りでした。動きが軽快かつ安定していて、ハイスピードでも思い通りに曲がれてコントロールできるし、アクセル操作に対するレスポンスもタイレクトでCVTであることを忘れてしまうほど。不満はありませんでした。運転する楽しさに没頭できるスポーツセダンです。
乗り心地

4

乗り心地を気にするのであれば、電子制御ダンパーを組み合わせる「STI Sport R」がいいでしょう。スイッチひとつでダンパーの硬さを調整できるので、スポーツ走行時にはハードな足回りとするいっぽう、通常時はアタリが柔らかくて乗り心地のいい特性に切り替わります。このキャラ変っぷりが、電子制御ダンパーのいいところ。「GT-H」系は電子制御ダンパーではなく一般的なダンパーとなるので、STI Sport Rのような“状況に合わせた変化”はありません。
積載性

3

このサイズのセダンは車体サイズの割にトランクスペースのサイズが広いのが魅力。WRX S4も例外ではなく、大型スーツケース2個を飲み込むトランクを用意。家族でキャンプに行くような状況でもなければ、困ることはないでしょう。トランクスルーも備えているので、荷室を拡大することもできます(ただしトランクの床と倒した部分には若干の段差が生じる)。トランクスルーは左右60:40分割で行えるので、3名乗車+長尺物積載といったアレンジも可能。シートを倒した際に中央席のシートベルトは残ります。
燃費

3

WLTCモード燃費は10.8km/L。今どきのクルマとしては優れているとは言い難いところですが、水平対向の高出力エンジンを積んだ4WDのスポーツセダンと考えれば、まずますの燃費と言っていいのではないでしょうか。トランスミッションにCVTを採用しているのも燃費にとっては好条件となっています。
価格

3

もっともベーシックな仕様の「GT-H」が400万4000円。クルマの値段がどんどん高くなっている昨今、サーキット走行もバリバリこなす本格スポーツセダンがこの価格で手に入るのはコストパフォーマンスに優れていると判断できます。その上の価格帯は「GT-H EX」と「STI Sport R」が同額となりますが、そのどちらかの選択となったら、高速道路の渋滞を走ることが多いのであれば渋滞時の50km/h以下で手放し運転ができる前者が魅力。いっぽうでスポーツ性能を求めるのであれば、より凝ったサスペンションを装着する後者が賢い選択となりそうです。
工藤 貴宏
工藤 貴宏
自動車ジャーナリスト
1976年生まれ。クルマ好きが高じ、大学在学中に自動車雑誌の編集部でアルバイトしたことをきっかけに、そのまま就職。そして編集プロダクションを経てフリーランスの自動車ライターに。日々新車を試乗し、日夜レポートを書く日々も気がつけば10年以上。そろそろ、家族に内緒でスポーツカーを買う癖はなんとかしないと。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員日本自動車ジャーナリスト協会会員
スバル WRX S4 新型・現行モデル

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