日産 キックス e-POWER 「元気で俊敏なコンパクトSUV」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

西川 昇吾
西川 昇吾(著者の記事一覧
自動車ジャーナリスト
評価

3

デザイン
3
走行性能
4
乗り心地
3
積載性
2
燃費
4
価格
2

元気で俊敏なコンパクトSUV

2022.11.21

年式
2020年6月〜モデル
総評
SUVの中でも若々しさ溢れる1台と感じるモデルだ。元気の良さが伝わってくる走りだったり、明るいカラーコーディネートだったりと若者向けな印象が伝わってくる。もちろん、それがどこか落ち着かないと感じたり、質感の高さが足りないと感じる部分に繋がってはいるのだが、国内市場としては日産久々の新規車種ということもあるので、今後の成熟に期待したいところ。
満足している点
このモデルの最大の長所は、手ごろなボディサイズから来る運転のしやすさだろう。ヒップポイントの高さも相まって、視界は良好で車体の見切りも良い。特に運転に不慣れな人に自信を持って勧められる。また、e-POWERもストップ&ゴーの多い日本の交通環境下で燃費性能が優れており、フィーリングも自然な仕上がりで変な癖がないのも良好に感じられる。走行性能もSUVとしては元気に走って機敏な印象がしてキックスという名前にふさわしい感触だ。
不満な点
全体的にもっと質感が高くないとライバルに比べて見劣りしてしまうかもしれない。キックス単体で見た時はさほど不満なく、むしろ良いと思えるのであるが、同じ価格帯のコンパクトSUVと比べてみると隣の芝生は青く見えるといった印象。内装ももう少し落ち着いたカラーコーディネートをするだけでも大分印象は変わってくると思う。キックスのキャラクターなのかもしれないが、他ライバルと比べると全体的に質感が劣っているように見え、逆に元気でちゃきちゃきとした印象が目立つ。同社の中でも同じ価格帯で質感の高さが感じられるノートやノートオーラの存在を考えるとその差が激しく見えてしまう。
デザイン

3

現代のコンパクトSUVとしては比較的コンサバなデザインだと感じる。Vモーショングリルを採用したことで日産らしさは出ているが、押し出し感がなくあらゆる場面とあらゆるユーザーにマッチしやすいデザインに仕上がっている。しかし、個性や雰囲気を演出するという面では今一歩といった印象。2トーンの塗分けや個性的なカラーリングも用意されているが、基本的なデザインが保守的に仕上がっているので、カラーはどれを選んでも外れはないような印象も受ける。
走行性能

4

コンパクトSUVで相対的にエントリーモデルとされることが多いモデルであるが、価格帯やボディサイズなどを考えると走行性能としては満足できる仕上がりだ。走る、曲がる、止まるが自然なフィーリングで悪くない。e-POWERの味付けも上手く出来ていて、モーター駆動の長所を生かしつつも、変に尖った印象はなく初めてモーター駆動車に乗った人でも扱いやすく感じるはずだ。SUVにありがちな腰高なロール感も少なく、加速でもコーナリングでも元気にしっかりと走ってくれる印象となっている。
乗り心地

3

路面の凹凸などの入力に対して少し角がある印象があるものの、全体的には乗り心地はさほど悪くないと思える。振動の収束も素早く、不快な振動をあまり感じられない。もちろんラグジュアリー志向なセダンやクーペに比べれば優れているとは言えないが、エントリーモデルのコンパクトSUVとして見た時に、乗り心地そのものは良いと言える印象だ。ただ、快適性能という面では静粛性はもっと高くあってほしいと思う。パワーユニット的に静粛性を求める声も少なくないと思うので、改良が望まれるポイントだ。
積載性

2

積載性という面ではあまりいいとは言えない。積載容量も数値的に優れていないし、通常時のトランクスペースも少し狭い印象がして、特にホイールハウスの主張が激しく感じる。また、シートは6:4の可倒式であるものの、フルフラットになることはなくリアシートやトランクスペース周りの便利機能もなくトランクスペースの機能性の高さもあまり見受けられない。元々のスペース的に仕方がない部分はあるかもしれないが、もう少し創意工夫が見たいと感じる。
燃費

4

e-POWERは進化して燃費性能としては良くなっていると感じる。ただ、他のライバルのハイブリッドシステムも燃費性能的に優れていて、キックスが燃費性能として素晴らしいと言い切れるかと言われるとそうでもない。感覚的には中から中の上といった具合だ。パワーユニットの特性上、高速道路よりも市街地や郊外の方が燃費的には得意なパワーユニットなので、自身のライフスタイル的にe-POWERがバッチリとハマるという人も少なくないと思うので、そんな人には魅力的な燃費性能となるはずだ。
価格

2

トップグレードで300万円ほどの金額感はスペック的にも装備的にも妥当な印象を受ける。ただ、他メーカーのコンパクトSUVと比べてしまうとお買い得感がないのも事実。全体的な質感の高さやスペシャリティな演出があればもう少しお買い得が感じられるとは思うが、国産コンパクトSUVとしてコストパフォーマンスが良いという印象に至るまでは今一歩といった印象。
西川 昇吾
西川 昇吾
自動車ジャーナリスト
1997年生まれ、大学時代から自動車ライターとしての活動をスタート。現在はWEB・紙の各種媒体で様々なジャンルの記事を執筆するほか、車両解説動画にも出演し、喋りの分野にも挑戦中。愛車のマツダ・ロードスターで定期的にサーキット走行をし、ドラテクの鍛錬も忘れない、目指すは「書けて、喋れて、走れるモータージャーナリスト」
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