ホンダ S660 「S660の夏休みの宿題「モデューロX」とはなにか」のユーザーレビュー

zato787 zato787さん

ホンダ S660

グレード:モデューロX(MT_0.66) 2018年式

乗車形式:試乗

評価

5

走行性能
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乗り心地
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燃費
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デザイン
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積載性
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価格
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S660の夏休みの宿題「モデューロX」とはなにか

2018.7.21

総評
なぜ、学生の夏休みには宿題があるのか知っているだろうか。

唐突に何を・・と思うかもしれない。学生本人はもちろんのこと、教師も、親もその真の狙いを知らないまま、子供に勉強を強いている人が多いことは嘆かわしいことだ。 夏休みの宿題の真の目的は、「計画と実行」とは何かを知るためであり、「制限事項の中でいかに人生を楽しむか」を学ぶことにある。

軽自動車には、不合理ともいえる設計上の規制がある。 夏休みの宿題のように目的があるわけでも、自動車工学からみた必然性があるわけでもないが、とにかくボディサイズ、動力システム、最大乗員数に規制がある。その上で、制限のない普通車と同様に公道での安全性も求められるし、衝突性能だって維持しなくてはならない。

その結果、全長3400mm、全幅1480mmに制限されたガラパゴス島では、世界に類のないスペシャルな小型車達が開発され、この島の中だけで多数の個体がずっと生息を続けている。 そんな中に1台のミドシップのスポーツカーが紛れ込んでいるのだ。

ホンダに対する思いは年代によって違うだろうが、ホンダのTypeRとF1への挑戦の時代にホンダVTECエンジンを楽しんだ世代のホンダファンは、現代のホンダに対して何か少し違うと感じているように見える。 しかし、ホンダスピリットは、9000回転まで回るエンジンにだけあるわけではなく、汎用エンジンからジェット機にまで形を変えながら流れているようだ。(クルマのブログだから細かいことは書かないが、ホンダジェットは、まさにTypeRの時代のホンダ製品の乗り味(飛ばし味?)なのだ)

ホンダが、本気で改定してきたモデルに、「モデューロX」という名前を付けてきたのは、新世代のホンダになったことを感じさせる。無限ホンダと、ホンダアクセスのイメージの差は大きく、「モデューロXってディーラーオプションを作ってる会社でしょ? そこのコンプリートカーなんて、見た目だけに決まってる。」と思われることも承知の上だ。既に、無限S660のコンプリートカー(289万円で660台限定発売)が存在するのに、今度はモデューロX版を出してきた。それは、そこに、「ホンダスピリッツ」があるから、躊躇なく出してきたのだ。


 S660モデューロX

S660モデューロXは、285万円と、標準モデルの67万円高で、NDロードスターよりも高い、結構なお値段がついているけれど、このクルマには285万円の価値はある。マーケットが「リーズナブルだ」と受け取るかどうかはわからない。 軽自動車の制限枠は、ピープルムーバーとして、公道を安全に走行できるぎりぎりの線で作られた制限であり、操安性を求めるミドシップスポーツカーのための制限ではない。 だから、S660には様々な欠点があるけれど、軽自動車の制限の中で、精一杯の努力をしている。 物を成し遂げるには、最初は「破れない制限事項」がある方が話は前に進みやすい。後に「ここがもっとこうだったら」ということは起きるけれど、その制限を超えてはならないという事実は議論を纏めやすいのだ。 商業的にも、税金が安く、小型故に車庫証明が取りやすいないしは、不要ということが、セカンドカー需要を呼ぶと踏んで作られているわけで、NDロードスターの価格と比較するべきクルマでもない。


 S660モデューロX



 だから、このクルマはサーキットやワインディングでも楽しめるけれど、ツーリングにも向いている。ND以上に室内は狭くうるさく、物はおけず、屋根の海苔巻は格納しづらく、横置きミッドのくせに、海苔巻をしまうと荷物もほとんど積めないが、そこは「制限」を楽しむのが、S660の本質だから、その中でいかに楽しみを見つけるかが、S660の楽しみ方だろう。目を三角にしてコーナーを攻める走りは、このクルマには向かない。だからと言って遅いわけではないけれど、速さとバランスの悪さを隠すことにポイントを全振りせず、バランスをエアロで整えた分を、「ツーリング能力」「疲れない走り」に向けたと言って良い。 そして、室内の質感も色味もよくなり、乗り込むことが楽しくなった。


 モデューロX 室内

モデューロXは、この制限の中で、ツーリングをもっと楽しくし、すっと曲がり始めるミドシップの楽しさを作り出した。 そのために、徹底的にエアロを研究してきたのだ。 モデューロのクルマ紹介を見ていると、何の迷いもなく作ってることがよくわかる。 夏休みの課題は全部予定通り終わったのに、自由研究に力を注いだので、提出が2学期に入ってしまったけど、これだけの成果を出せば、担任の先生は花丸を与えて当然だと思う。
満足している点
モデューロXを理解するうえで、良い比較対象は、無限S660であろう。無限S660の成り立ちは、ショップのチューングカーと似たような方向にあって、乗り心地よりも旋回速度(曲がりやすいとは言ってない)の向上にかけているけれど、モデューロXはもうあきらかに、公道でいかに楽しめるか、という方向に向いている。
それでいて、サーキットでも同様に速いのだ。今まで、無限S660を含めて、このクルマをミドシップカーだと認めていなかったけど、S660モデューロXの走りは、ミドシップカーだ。それも、ツーリングもワインディングもこなせる、先代のNSXのノーマルモデルに近い乗り味のミドシップカーである。 無限とモデューロの差を、上手く例えるのは難しいが、ポルシェケイマンGTSと素のポルシェ911のような関係と言えばいいだろうか。ケイマンGTSは、目を三角にして走る時は楽しい。固いし俊敏だけれど、ずっと乗っていると疲れる。 素の911はスポーツカーなんかではなく、高速移動用ラグジュアリーカーなのだけれど、これがワインディングロードで乗ってもなかなか気楽で楽しいのだ。クラウンみたいなロングホイールベースの割に、前後の剛性のバランスがよく、ステアリング操作速度と量に対して適切な反応で旋回するし、アジリティに全振りしてないから、乗り心地もよく、静かですーっと走るわけだ。 だから、例えば、中条あやみチャンみたいな素敵な彼女とドライブに行くのにも向いている。

これまでのS660はもともと、制限事項の山積みの中で作られていて、エンジンは64馬力の制限があるから、ハンドリングを楽しむためのクルマであるべきだった。 でも、全長3400mmじゃ、リアが全く落ち着かないから、曲がらない制限をかけるしかないし、脚だって動きを制限しないと危ないから固めざるを得なくて、ツーリングに行ってもリア側が固くてなんだか長距離ドライブがつらかった。カワイイ彼女をドライブ旅行に誘う事だってちょっと抵抗があった。

でも、モデューロXならば・・カローラスポーツでなくとも、このS660ならば、あやみチャンを誘って長距離ドライブにでかけても、全く問題ないはずだ。911よりカップルディスタンスが近いから、もしかしたら、もっと仲良くなれるかもしれない。 そんな期待が持てる、楽しくていい脚になっている


 無限S660


 モデューロX
 
不満な点
ここでS660の最大の残念な点であるエンジンの耐久性にはあまり触れないけれど、ECUの変更で5000回転~6000回転のトルク制限を解除して80馬力くらいにするくらいまでなら、パワーアップしても何とか持つようだ。 このクルマは、ブローバイを大気解放にしたり、粘性の低いオイルを入れたり、オイル交換をケチってはいけない。高性能オイルを頻繁に変えてやること、油温を上げすぎないように油温度計をつけること(オイルクーラーも是非つけたい)、高回転まで回さないこと(Spoonが述べている通り、限界回転数は7500回転だと思った方がいい。7700回転のレブリミットまで回したり、8000回転まで回すと壊れる確率が数倍になる) 三菱製のタービンの能力がまた残念なので、パワーを上げたければタービン交換が必須なのだが、ピストンリングとシリンダーの間の公差が故意に緩いので、大型タービンで高圧過給をして燃料を吹くと、今度はエンジン本体が持たない。 なので、エンジンのパワーアップのチューニングはほどほどに。


 S660の華奢なエンジン 7500回転以上回さないこと。
デザイン

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走行性能

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試乗車は現時点で日本中に何台あるのかわからないが、東京には常備車両は1台しかなく、転戦するクルマをいれても数台レベルでしかない。 それでも、予約すればちゃんと乗ることができるのはいいことだ。このクルマは、足回り、ブレーキ、エアロをメーカー系の会社がチューニングした、チューニングカーなのだが、そんな成り立ちなのに、まとまりが良い所をまず評価したい。

標準車との違いは、見た目にも大きく違うのがエアロで、デザイン的にもやんちゃ感が少ない。このエアロは、見た目よりもその性能の方が重要で、モデューロXの肝の一つ、いやこのエアロがモデューロXをスペシャルな一台にしている基礎であると言える。S660は、クルマが小さく軽い分、空気の影響を受けやすい。空力の特徴は、リアを16%、フロントを9%路面に押し付ける力を増やしたのに、空気抵抗がたった1%しか増えていないことだ。 私は、正直な所、公道を走るクルマ程度の速度で、エアロが圧倒的な効果を生むとは思っていなかった。 NDに着けているマツダスピードのエアロも80km/hくらいから圧着効果は感じるけれど、同時に抵抗も生み出しているとも感じてもいたからだ。 ドラッグを発生させずに、路面への圧着の方向に空気をうまく使うことに、大きな時間をかけただけのことはある。私は、公道を走る市販車は飛行機のような速度で移動するわけでもなく、空気の力で空中に浮いているわけでもないので、そこまで空気の流れに敏感になるこもないよなと思っていたのだ。

S660モデューロXが、低速から安定した空力効果を出しているのは、「層流効果」をうまく使っているからだ。航空機の設計において、層流をいかに作り出すかは最新の航空機の設計において最重要な項目の一つだ。航空機の場合、クルマのステアリングフィールと同様に、空気の流れをコントロールホイールで感じながら飛ばすので、機体表面の空気の処理の仕方は非常に重要である。それと同じことがS660モデューロXにのボディ表面に起きているのだ。


 航空機の場合の事例(ホンダジェット)
ホンダジェットは、小型ジェット機界の中でも空気の処理がうまく、操縦フィールが素晴らしい。
改良型のEliteモデルでは、さらに操縦フィールが向上した。

「層流」というのは、空気の流れ方の呼び方である。気体も液体と同じで、乱流と層流があり、乱流が起きると、そこに圧力損失が起きて抵抗になるわけだが、空気の力で押さえつけるという点で考えれば、層流の方が表面から空気が剥離しないのでより効果が高いのだ。 つまり、モデューロXのエアロは、徹底的に乱流の起きる部分を潰して、長く空気をエアロに貼り付かせて、空気の力で車両を安定化させることを目的にしている。 車両重量が軽いので、40km/h程度でも空気でボディを安定化さている効果が出ている。この処理は、軽自動車のボディサイズの制限を打ち破る一つの手法だ。 より簡単に層流を作り出すにはボディ形状が長い方が有利だけれど、エアロによって空気を制御すれば、ボディ長が短くとも空気の接着率を高くできることを証明したわけだ。


 モデューロX エアロ効果


モデューロXのサスペンションは、このエアロが装備される前提で作られている。もう、バネとダンパーで締めて、リアサスペンションを固める必要はない。バネレートも不要に高めてないから、ダンパーの縮側に十分な衰滅力を与えることもできる。 エアロがボディの安定性向上を引き受けた分、足回りの設定は、よりダンパーを大きくストロークさせて、向きを変えるセッティングに回すことができるのだ。 足回りを軽快に動かすためには、軽量なアルミホイールが必要だから、鍛造と鋳造を組み合わせた専用の軽量アルミホイールを履かせて、足回りの追従性を高めている。ダンパーの衰滅力は5段階に替えられるが、最も固くしても乗り心地は不快にはならないものの、より短時間で衰滅させようと動く傾向が強くなる方向に動くから、サーキットの縁石のような段差を高速で乗り越える時のために使うべき物だ。通常の走行は、真ん中の3段階くらいが丁度いいだろう。 最も緩くすると衰滅力が足らなくてバネの動きが大きくなると、ロールの切り替えし等で、クルマの動きがステアリング操作に遅れ始める。



 専用ダンパーとスプリング


 専用アルミホール(鍛造+鋳造)

ブレーキにも手が入っている。元々S660のブレーキは悪くないし、ミドシップなので効き自体には問題はなかった。ノーマルは、脚が、「旋回しない方向」に設定されていたので、ガンとブレーキを入れて前荷重に入れて、ブレーキを抜くときに曲げる走りを強要されていた。しかし、モデューロXでは、エアロのおかげで脚を締めて、曲がらない特性にせずとも、クルマが安定するので、「曲がるチューニング」にできた。その分、ブレーキバランスを前に寄せる必要がなく、ミドシップらしい下に沈み込む設定にできるようになったので、改定が行われているのである。(ロータを変えたり、指し色を加えて見栄え分も足されているが、それは本質的な狙いではない)


 専用ブレーキ
乗り心地

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積載性

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燃費

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価格

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故障経験

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ホンダ S660 新型・現行モデル

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