BMW 6シリーズ グランクーペ 「非日常を味わいながら実用性の高いバランスのいい車です」のユーザーレビュー

非日常を味わいながら実用性の高いバランスのいい車です

2022.8.25

総評

総合的には非常に満足しています。燃費に起因する維持費の高さはありますが、それ以外は目立った欠点はあまりありません。流通台数が少なく、非常に目を引く車で所有欲は満たされます。

満足している点

非常に美しく存在感のある車でありながら居住性や積載性も悪くなく、動力性能も大きな不満を持つことはないいので日常ユースでも実用性は十分で所有欲が満たされる車です。

不満な点

内装に華やかさがなく、新車価格で言えば他社に劣るところ。流石に現代の車と比較するのは酷ですがナビ周りの先進性は感じられないところです。

デザイン

4

外装は文句なく美しい車です。4ドアでありながら、セダンとは異なりワイド＆ローで、長いフロントにショートデッキ、流れるようなルーフライン。そして余計なプレスラインを入れないシンプルながらもボリュームのあるサイドやリアは非常に存在感がありながらも高いバランスで整っていて力強さもあります。
全高1350mmと一般的なセダンよりも10cm程度低いことも美しさに大きく寄与しています。
ただし内装は同年代同価格帯の他車種と比較すると無難というか高級感はありません。一応ソフトパッドが多用され、未塗装樹脂部分は最低限ではあるので、安っぽい感じはありませんが華やかさはなく無骨で質実剛健な雰囲気。メルセデスのような未来感はないです。
国産車のような各パネルのガタツキはまったくなく、コンソールを揺らしてもびくともしないカッチリ感はありますが、少しでもバランスを崩すとビビリ音が出たりと、分解にはあまり向きません。

走行性能

4

3.0L直列6気筒ターボエンジンは現在のダウンサイジングターボと比較して320馬力とそこまで高出力ではありませんが、気持ちよく回り振動が非常に少なくストレスはありません。ノーマルモード以上であれば街乗りでも十分なパワーとトルクで、不足感はないかと思います。ECO PROモードは流石に2トンの重さを感じる制御になっていますが、街乗りで前の車に追従して走るような日常的なシーンでは不満はないかと思います。
BootMOD3でライトチューンすると400馬力程度まで出力が上がりますので出力面では不満は全くありません。
また、ZF社の8速ATは非常に優秀で、ダイレクト感もあり、流石にDCTまでは行きませんが、国産車の一般的なATと比較すると早いレスポンスとダイレクト感があります。（その分シフトショックを感じる場面も多いですが）
全長5mオーバー、全幅も1.9mほどありますが後輪操舵のお陰で狭い駐車場でも1回程度の切り返しで駐車スペースに収められるほどには小回りがききますし、車幅感覚もつかみやすい方だと思いますので、よほど狭い道などを走らなければこのサイズでも十分に実用範囲だと思います。
重量配分が50：50に近く、コーナーでも安定し、ライントレースがしやすく破綻のない走りです。後輪操舵の違和感は殆ど感じず、2トンある重量を感じないくらいには気持ちよく曲がれます。
ただ、速度域が早いとアンダーではなくオーバー気味な挙動になりがちなのでヒヤッとすることも多々あります。
一方、後方視界は絶望的に悪く、リアは殆ど見えませんのでそこは注意です。

乗り心地

3

乗り心地は硬めです。ランフラットタイヤに重いホイールながらも足はよく動く方ですが、40km/hまでの低速度域では路面の悪いところでは乗り心地は割と悪く細かいギャップをそのまま拾います。大型トラックで荒れた整備されていない路面の悪い下道をずっと運転するとストレスが貯まるくらいには乗り心地は悪いです。一方、高速走行時は非常にフラットで法定速度を超えた速度でも全く不安なく安定した走りです。
静粛性はサッシュレスドアにしては高く、風切り音もロードノイズも少ない方です。後部席に座った人と会話も十分にできます。
エンジン振動は言わずもがな優秀で、アイドリング時でも振動はほぼ感じません。
シートは硬めで、外国人の大柄な体型もサポートするシートなので、小柄な方や細身の方だとシートはちょっと持て余す感じになり、人によってはコーナー時に少しサポート性が悪く感じるかもしれません。ぴったりハマる人であればサポート性は十分です。
居住性はフロント側2席は問題ありませんが、リアはデザインの都合上ヘッドクリアランスの余裕は殆どなく、175cmくらいの身長がギリギリといったところです。また、シートが沈み込むような形状なので腰回りのホールド性はいいのですがシート座面が立っているので、長時間座り続けるのは少ししんどいかもしれません。
また、フロント2席は電動シートですが国産車のようにリアシート座面まで倒すことはできず、座面角度40度程度までしか倒れないので仮眠などで思いっきり倒して休憩するといった場面では不満が残ると思います。

積載性

3

トランクは思った以上に長く見た目の割には結構荷物は乗ります。ゴルフバックも2ケースまでは余裕で乗りますし、後部座席を倒せばフラット形状になるので長尺物も対応します。このクラスの車でする人はあまりいないとは思いますが車中泊もできなくはないです。
4人での国内旅行くらいであれば十分な積載性は備えていると思います。
一方、サッシレスドアのため、ルーフキャリアなどは設定がありませんし、サードパーティー製でも設定がありません。ヒッチメンバーなどの設定もないことから外部拡張性はほぼ皆無です。
キャンプなどにいかれるような用途では積載性に不満が残るかもしれません。（innoのアテンザ用のルーフキャリアは非公式ながら取り付けはできました。該当のパーツレビューを御覧ください）

燃費

3

燃費は良くも悪くもといったところです。下道7km/L、高速10km/hといったところ。極端なアクセルワークをしてもだいたいこれくらいに収束するので、低燃費なアクセルワークしてもさほど伸びないので、気持ちよく走ったほうがストレスは少ないです。

価格

3

私の車両でオプション等を鑑みれば、だいたい新車乗り出し1200万円程度ですが、中古相場だと5年から7年落ちで300万円前後と約1/4の価格。新車のときは内容と比較するとコストパフォーマンスはあまり良くないと言われるこの車両ですが、2022年現在ではそこそこ手の出しやすい価格になっているのではないでしょうか。その分、下取りは期待が持てません。
貴重な直6エンジン搭載のFR車で、スポーツ走行というよりはグランドツーリング的な方向性に魅力を感じるのであれば、穴場な車両ではないかと思います。

故障経験

この車は壊れるところがはっきりしています。いわゆる定番故障箇所です。
・DSCユニット（ABS動作のためのブレーキ油圧制御ユニットです）
・イグニッションコイル（定番の消耗品）
・電動ウォーターポンプ
・オイルフィルターハウジングからのオイル漏れ
・プラグホールからのオイルにじみ
です。その他事例としてはウインドウレギュレーターやウインドウモーターが壊れることもあるようです。
長く乗るつもりであるならば、車両購入価格＋60万円と考えて乗ったほうが精神安定上いいと思います。
私の場合はDSCユニットが故障しました。修理費早く30万円弱です。
自分で修理できる人であればISTA（BMWの整備システム）を入手してOEM部品を活用すれば安く修理できます。
自力で整備できる人であれば燃費以外では国産車と遜色ない費用で維持は可能です。思ったより任意保険も高くありません。ただし、BMWディーラーなどでお世話になる前提だとかなり維持は高額になるので、BMWの世話ができる整備工場などが近場にあればいいと思います。（BMWディーラーでは一般的な消耗品交換で車検通すだけで30万円ほどの見積もりが出てきます）