BMW M5 「超爆速スポーツセダン」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

超爆速スポーツセダン

2021.9.30

年式

2017年10月〜モデル

総評

高価な車両価格など高いハードルはたくさんあるが、クルマ好きのオーナーが所有した際の満足度の高さは約束できる。世界最高峰のスポーツセダンとして、きわめて魅力的な存在だ。購入するならば、せっかくなのでより高性能な「コンペティション」がおすすめだ。

満足している点

サーキット走行を視野に入れた高次元の走行性能。単に速いというだけでなく、アクセル操作に対する反応、回転上昇のフィーリング、高回転のパンチ力、そしてサウンドといった、エンジンの色気が濃いのも魅力だ。そんなスポーツカーらしさあふれる特徴とは別に、実用性や快適性といったバランスの高さも素晴らしい。

不満な点

魅力あふれるクルマだが、さすがにこの車両価格は購入層を選ぶ。自慢の電子制御システムはサスペンションの硬さやエンジンの反応に加え、シフトチェンジのタイミングといった細かいところまで設定できるのが特徴だが、設定がわかりにくいといった部分もある。一度設定してしまえば、そうそういじるものではないのだが。

デザイン

4

5シリーズをベースにしたスポーツモデルで、パッと見は上級セダンでありつつも要所にスポーツカーの魂が宿っている。開口部を広げたフロントバンパー、ワイドになったフロントフェンダーにはアウトレットが刻まれ、Mモデル専用のドアミラー、トランクリッドのスポイラーに4本出しマフラーを収めたリヤバンパー、そしてカーボンルーフ。走り好きを納得させる演出はさすがだ。

走行性能

5

もはや言うまでもないが、M5の走行性能は高い。サーキット走行を核としたモデルで、625psを誇る「コンペティション」はもちろん、600psの標準仕様でも驚異的な速さをもたらしてくれる。F90と呼ばれる第6世代モデルは、歴代M5としてはじめて4WDとしたのも注目すべきポイント。しかしながら、2WDに固定してドリフトなどBMWらしいアグレッシブな走りを楽しむモードが用意されるなど、遊び心もしっかり盛り込まれている。

乗り心地

4

バリバリのスポーツモデルだから乗り心地が良いはずがない。……そんな予想をいい意味で裏切るのが電子制御の可変式ダンパーの効果。たしかに走行モードを操縦性重視の「スポーツプラス」にするとサスペンションはサーキットモデルらしくガチガチに締まる。いっぽう「コンフォート」を選べばダンパーがしなやかになり、ばねの硬さに由来する車体の上下動こそあるものの、ファミリーサルーンとしても文句が出ないほどの心地よさを実現している。

積載性

5

ベースの車体が大型サルーンの5シリーズで、積載性もそれに準じたもの。大きなトランクルームは、後席を畳むことなく約1mの奥行きがあるから大型スーツケースも無理なく収めることが可能だ。それでも足りなければ、リヤシートの背もたれを前に倒し、トランクスルーとして荷室を拡大することもできる。

燃費

2

燃費値はカタログ上で示されていないが、最新モデルで実燃費7km/L程度が目安。数字だけをみると優れているとは言い難いが、超高出力のV8ターボエンジンを考えると効率のいいエンジンと判断できる。かつてV10エンジンを搭載していた時代は、実燃費で平均5km/Lに届けば「よく走った」といえるほどだった。

価格

2

2021年9月時点での新車価格は、標準仕様は1814万円。「コンペティション」と呼ぶ高性能仕様が1900万円。クルマとして考えるとかなり高額の部類だ。ただし走行性能がそれに見合うものであることは間違いないし、上質なサルーンと超高性能スポーツカーが1台で賄える（セダンとスポーツカーの2台買う必要がない）と思えば納得できるかもしれない。