“EQ”とは、メルセデスベンツの電動化モデルに与えられるサブブランド名だ。意味するところは“エレクトロニック・インテリジェンス”。2016年に発表され、2019年の現在ではフルバッテリーEVのEQCと、EQパワーモデルとしてプラグインハイブリッドモデルを数種類、デビューさせている。欧州の各ブランドが電動化へと一気に舵を切ったきっかけは2015年のディーゼルゲート事件だったから、そこからの“怒濤の電動化ラッシュ”には目を見張るほかない。
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クルマの歴史をそのまま辿る博物館【第11回 メルセデス・ベンツ博物館】
メルセデス・ベンツの日本における初のピュアEVとなったEQC。展開グレードはEQC 400 4MATICと、特別仕様車のEQC Edition 1886で、前者が1080万円、後者が1200万円。
EQCのCは他のメルセデスモデルと同様にクラスを表す。電池を積むためのスペースと現代社会のニーズを考え併せたとき、次世代BEVの基本形は背が高くて全長が短いSUVスタイルというのがメルセデスベンツの戦略だから、EQCは内燃機関SUVであるGLC相当のBEV、ということになる。実際、ベースとなったプラットフォームは共通(とはいえ共有するパーツは1~2割程度)で、同じ工場でアッセンブルされている。
19C0334_087メルセデス・ベンツ EQC|Mercedes-Benz EQCEQCのボディサイズもほぼGLCクラスと同じ(やや小さい程度)だ。ホイールベースに至っては全く同じ数値。前にエンジンを積んでいないため、専用のサブフレームをフロントに装備し、衝突時の安全対策とした。なにせ重量はEQC400 4マチックで2.5tもある。うち約650kgは80kWhの大型バッテリーのせい。側面からの衝突安全には寄与するという。
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搭載するバッテリーの充電容量は80kWh。6.0kWまでの交流普通充電と、直流急速充電に対応している。なお、納車後1年間は全国に約2万1000基ある提携充電ネットワークを利用できる。
「ベンツのクルマ作り」を徹底している床下にバッテリーを敷き詰め、前後に同じモーターを配置した。同じとはいえフロントモーターは効率重視で、ふだん走りに活躍する。リアモーターはパワー重視とし、力強い加速が必要なときなどに助太刀する。モーターやバッテリーのスペックをくどくど書くことはしないけれど、最も大切なことは、EV化、とくに大容量バッテリーの搭載、によって、SUV本来の居住性や積載性がスポイルされていないという事実だ。GLCクラスと比べて見劣りしない。つまり、航続距離というEV最大の欠点を除いて実用上のデメリットはほとんどない。これ、大事。ちなみに、運転支援システムなど装備の点でも差異はほとんどなし。つまり、エンジン&燃料ではなくモーター&バッテリー(ちなみにドイツ語ではエンジンのこともモーター)で走るということ以外、まるで“ベンツ”だ。
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前後アクスルにそれぞれ1つずつのモーターを備え、合計で最高出力408ps、最大トルク765 Nmを発揮する。通常はフロントモーターで駆動し、パワーが必要な際はリアモーターも駆動する。
そうなのだ。EQCの魅力は何かと聞かれたら、即座にこう答える。「メルセデスベンツですよ」、と。そんなこと当たり前じゃないか、と言われるかもしれないが、そうでもない。世の中のEVはこれまで、そのユニークな走りでエンジン付き既存車両との違いをアピールしてきた。だから、エンジン付き車両の権化というべきメルセデスベンツとはまるで違った走りのテイストをもつEVしかなかった。たとえばジャガーIペースは、それまでのジャガーテイストを覆す新感覚のドライブフィールで高い評価を受けている。
19C0333_093メルセデス・ベンツ EQC|Mercedes-Benz EQC翻ってEQCに乗ってみれば、正しく“ベンツ”なのだ。もちろん、無音で加速するし、その加速フィールもEVらしく強烈のひとこと。けれども、骨格に染み付いたがっしり感や、重量を生かした安定感、正確なステアリングフィールなど、走りの隅々にまでベンツ感を行き届かせている。ややもすると違う種類の乗り物になって、そこが新しいよねという評価に繋がりやすいEVを、あえて旧来のメルセデスと同じドライブフィールにもってきた。これが、すごい。
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回生ブレーキの効き具合をパドルシフトでコントロールして運転する。完全には止まらないので、いわゆるワンペダルでのドライブはできない。
安易にBEV的魅力をアピールするのではなく、あくまでもベンツらしさを優先したという点で、この老舗ブランドの電動化戦略は堅実で地に足がついている。それだけ、自身のクルマ造りに自信がある証拠だろうし、それが最古の自動車メーカーとしての矜持というものだろう。
19C0338_114メルセデス・ベンツ EQC|Mercedes-Benz EQCわかる人にはわかる魅力メルセデスオーナーなら違和感なく動かせるはず。強烈に静かなうえ、力強い加速に驚かれるかもしれないが、それ以外の走りはベンツ以外の何物でもないということに安堵もするだろう。
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エアコンの吹き出し口には、キーをモチーフとしたローズゴールドのEQC専用デザインを施している。また、シートやインストゥルメントパネルのステッチにもローズゴールドが用いられている。
ただ、ひとつだけ操作でこれまでとは違うこともあって、たとえばパドルシフトはギアチェンジではなく、回生ブレーキの効き具合を変える機能を担う。デフォルトでは、エンジンAT車をDレンジで運転したときのエンジンブレーキ程度だが、右パドルを引くとコースティングになって、空走が長くなる。左パドルを一回引くと、回生ブレーキが強くなり、シフトダウンくらいの減速フィールとなる。左パドルをもういちど、つまり2回引けばさらに強くなってブレーキを踏んでいるかのようだ。けれども完全停止はしない。つまり、アクセルのワンペダル操作では運転はできない。ちなみに、左パドルで回生ブレーキを強めたときにはブレーキランプが基本的に灯るので、心配はいらない。
19C0334_012メルセデス・ベンツ EQC|Mercedes-Benz EQCカタログ数値の航続距離は400km(WLTC)だ。条件によっては限りなく近づけそうだが、350km程度とみておけば安心だろう。EQCのようなBEVを購入しようという人は、自宅に充電設備を入れるだろうから、まずは日常利用には問題ないレベルである。
気になる価格はミッドサイズSUVの高性能グレードと同等。GLCならAMGの53あたりと同じ価格帯である。都会で乗るなら断然EQCだと思うけれど、見た目にもEVっぽくないという点で、よほどのクルマ好きやEV好き、そしてメルセデスオーナー以外からの熱い視線は受けられそうにない。否、それだけ浴びれば十分に優越感を覚えるかもしれないけれど。
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Sクラスと同等の安全運転支援システム「レーダーセーフティパッケージ」も搭載。システムには、歩行者との衝突の危険を察知してステアリング操作をアシストする緊急回避補助システムや、アダプティブクルーズコントロールなどが備わる。
文・西川淳 写真・ダイムラーAG 編集・iconic
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