パワーウエイトレシオは4.6kg/ps! T01が持つ最大の武器は“軽さ”だ!
国内外のメーカーを問わず純正パーツを多数流用
「世界に一台のロードゴーイング“トムスエンジェルT01”」市販化に最も近かった和製スーパースポーツ
レーシングコンストラクターとして国内外で活躍してきた歴史を持つトムス。そこで得たノウハウを生かし「クルマ好きがレーシングマシンの本質を公道で楽しめること」をテーマに開発したのが、創立20周年にあたる94年の東京オートサロンでその姿を現した“トムスエンジェルT01”だ。
製作に当たって重視されたのは、クルマの運動性能を決める「軽量、コンパクト、低重心、高剛性」という4つの要素。さらに「可能な限り小さく軽い、公道走行できる2シーター」がコンセプトとして掲げられた。
まず、シャシーは当時のレーシングカーでは常識だったカーボンコンポジット(CFRP)からなるモノコックを採用し、高剛性と軽量化という相反するふたつの要素を高い次元で両立。サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン式とされ、減衰力調整機構つきの車高調を標準装備していた。また、ブレーキは当然4輪ディスクで、前後の制動力を調整できるバランサーが室内に備わるなど、走りを考えた設計であることがよく分かる。
そんなシャシーのリヤミッドに横置きで搭載されるのは、AE101譲りの4A-G 20バルブ仕様。吸排気系こそトムスによる手直しが施されているが、エンジン本体は基本的にノーマルのままで、T01の資料に記された160ps/16.5kgmというスペックもAE101に準じたものだ…と、そのメカニズムを見る限り、排気量が小さいエンジンを搭載する以外、基本設計においてはその他多くのスーパーカーと大差はない。
違いを挙げるとすれば、トムスがT01を高価なスーパーカーでなく、誰もがオーナーになれるクルマとして位置付けていたことだろう。それを現実のモノとするため、主要部品に国内外メーカーの純正パーツを流用してコストを抑えるという手法がとられている。例えば、エンジンをはじめミッションやブレーキ、ステアリングラックなどはトヨタ製、ラジエターはフォード製といった具合だ。さらに付け加えると、純正パーツの流用は信頼性や耐久性の面でも大きなメリットがあることは言うまでもない。
フロントカウルを開けると、手さげカバンを入れておくくらいのラゲッジスペースが現れる。その右奥にはバッテリーが、左奥には前後で独立したブレーキマスター&クラッチマスターシリンダーが確認できる。
ラゲッジスペースの下、フロントオーバーハング部に水平マウントされるラジエター。その上にはエアコンコンデンサー(サイドウインドウが開かないためエアコンは標準装備)と電動ファンがセットされる。
メーターはスタック製オールインワンタイプで、その隣にオド&トリップメーター(と思われる)が並ぶ。その左がエアコン操作スイッチ。ステアリングは脱着式だ。また、シフトレバーの前には丁寧にシガーライターと灰皿まで備わることから、おそらく市販化も目前だったと想像できる。
シートはスマートスタイリングと名付けられたT01専用設計のフルバケット。リクライニングはしないが、運転席、助手席ともにスライド機構は与えられる。ちなみにシート生地は張り替え済みとのこと。
オーナーの好みで装着されたオーディオ&ナビ。さらに、リバースギヤに入れると、リヤバンパーに内蔵されたカメラが車両後方の状況をモニターに写し出すようなモディファイも加えられているのだ。
本来ドアパネルは1枚モノのアクリル製でサイドウインドウ部を残してペイント。しかし、経年変化で劣化したためドア本体をFRPで作り、別体でアクリルウインドウをハメこむように手直しされた。フロントウインドウはなんとランチアストラトス用!
T01が4A-Gを搭載するリヤミッドシップマシン…ということで、車格的にはほぼ同じMR-Sとボディサイズを比べてみた。写真を見てもらえば一目瞭然、巷では軽量コンパクトと言われたMR-SよりもT01は全長で57cm、全幅で7cm、全高で15cmも小さいのだ。
ずば抜けた運動性能を実現しただけでなく、生産コストまで考えたクルマ作り。幻に終わった国産スーパーカーの中で市販化に最も近かったのは、世界に1台しか存在しないこのT01だと思う。
■SPECIFICATIONS
全長×全幅×全高:3320×1620×1080mm
ホイールベース:2175mm
車両重量:700kg
エンジン型式:トヨタ4A-GE
エンジン形式:直列4気筒DOHC20バルブ
排気量:1587cc
最高出力:160ps/7400rpm
最大トルク:16.5kgm/5200rpm
ミッション形式:MR2用5MT
サスペンション形式:FRダブルウィッシュボーン
ブレーキ:Fベンチレーテッドディスク Rディスク
ホイールサイズ:F6.5J R7.0J
タイヤサイズ:F195/50-15 R225/50-15
●取材協力:トムス TEL:03-3704-6191
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リアコンビランプはカローラFXから流用だったとか。