現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 「80’s Tuning Memoir/エスプリ代表・前川 勝」チューニング業界での飛躍は青いDR30とともに…【チューナー列伝】

ここから本文です

「80’s Tuning Memoir/エスプリ代表・前川 勝」チューニング業界での飛躍は青いDR30とともに…【チューナー列伝】

掲載 更新
「80’s Tuning Memoir/エスプリ代表・前川 勝」チューニング業界での飛躍は青いDR30とともに…【チューナー列伝】

ショップの名前を売るために挑んだOPTION谷田部最高速テスト

のちにトヨタ/日産/マツダ車での300km/h超という偉業を達成!

「80’s Tuning Memoir/エスプリ代表・前川 勝」チューニング業界での飛躍は青いDR30とともに…【チューナー列伝】

鈴鹿の地に店を構えてから、もう40年近い月日が流れた。国内チューニングショップにおいて、最古参の部類に入るのがエスプリである。

1982年、初めてデモカーとして購入したDR30をキャブターボ仕様に仕上げ、当時OPTION誌が主催していた谷田部最高速テストの常連ショップとなっていった。明るい青でオールペンされたDR30はやがてOPTIONの表紙を飾り、エスプリの名を広く世に知らしめることになったのである。

1980年11月、当時25歳だった前川氏がカーショップエスプリをオープンした。言うまでもなく、チューニングがまだ違法改造だった時代のことである。ほどなくして国内初のチューニング雑誌、OPTIONが創刊され、谷田部高速周回路での最高速トライアルが始まった。

「OPTIONという本は見とったよ。ただ、チューニングするというても情報源がないもんで、お客さんからお金をもらって実際にクルマをイジりながら勉強していく感じやった。唯一、相談できたんはすでに取引があったHKSくらい。長谷川社長にはいろいろ教えてもろうたよ」と、前川氏は当時を振り返る。

ショップを開いて2年、やっと経営が軌道に乗り始めたところでエスプリ初のデモカーが導入される。主流はまだ日産L型、ようやくトヨタ5M-Gが増えつつあったが、前川氏が選んだのはそのどちらでもなく、FJ20を搭載するDR30だった。

「ショップの名前を売るためにOPTIONの谷田部最高速にどうしても出たくて。すでにRRCドラッグではL型ターボ載せたS30Zでコースレコードの10秒19を出して優勝してたりもしたんやけど、それで最高速に出てったところで他にもやってるショップが多いから、埋もれてしまうかもわからんやろ。だから、ちょっとでも目立ちたいと思って話題性のあるクルマを、どこのショップでもイジってなかったDRを選んだんよ」

購入したのは白い前期型RSの2ドアだったが、まずはひと目で強く印象付けられるように純正のカラーラインアップにはなかったブルー、それも明るめの青でオールペン。ボディサイドには青に映えるシルバーのストライプを追加した。

エンジンは排気量2.0LのままHKS製ターボ用強化ピストンを組み、ギャレットエアリサーチ製T04タービンを軸としたHKSのキットでボルトオンターボ化。CPチューンができなかったため電子制御インジェクションを外し、2基のソレックスφ44を組み合わせたキャブターボ仕様とされた。ブースト圧0.7キロ、パワーは300ps弱である。

「やっぱりL型メカチューンが多かったけど、ターボチューンもだいぶ出てきた時代やな。HKSの長谷川社長と話をして、自分もこれからはターボやと思っとったし。その頃は、ターボを付けると壊れるゆう話があったけど、新しいチューニングとしてそれをなんとかモノにしたいという気持ちの方が強かった。ただ、実際は情報がほとんどないもんで試行錯誤の連続。近所のモリワキで溶接機を借りてチャンバーをつくったまではよかったけど、いざ走ったら燃料がまったく入っていかん。初めはその理由がわからんかったけど、そのうち大きな間違いをしとることに気付いてな。キャブターボは、チャンバーとジェットブロックに同じ圧をかけんとダメやったんわ」

広告出稿などでOPTION編集部とのパイプを作り、初めて声がかかった谷田部最高速トライアルも、前川氏にとっては良くも悪くも忘れられない思い出になった。本番前に常磐道でのテスト中、ピストンが一発まさかのタナ落ち。谷田部までたどり着いたものの当然アタックはできず、Daiからひとこと「よく来たな」で終わってしまった。高速道路の便が今ほどよくなく、10時間もかけて出向いた結末が、それである。

「谷田部は遠かったけど、自分も若かったもんで最高速トライアルがあれば行きたかった。最高速ではパワーありき、つまりエンジンチューンが重要。そこで店の本当の実力やチューナーとしての技量を試されたわけ。ただ、その頃のチューニングカーはエンジン以外ひどいもんで、ボディとか足回り、空力のことは考えてなかった。足回りなんかはKONIやKYBの純正形状ダンパーに、よくて強化スプリング、でなければバネカットした純正スプリング。どっちにしろガッタガタに遊んでるんやから。デフ(LSD)も最高速にはいらんゆう考えだったな。そんな作りだから、今どきのクルマで300km/h出すのとはワケが違った」

L型を筆頭とした3.0Lクラスの国産チューンド勢とアメリカンV8を中心とした輸入車勢は実速300km/hを目標にしていたが、2.0LクラスのDR30にとっては250km/hが大きな壁となっていた。

迎えた1982年12月の谷田部最高速トライアル。この年の締め括りでもあったため、1年を通じて谷田部を走ったチューニングカーの中から選りすぐられたマシンだけが参加を認められた。そこにはエスプリの青いDR30の姿もあった。

しかし、この日は最大風速14mという強風が吹き荒れる悪コンディション。残念ながら記録は238.41km/hに留まった。この時撮影されたバンクを駆けている青いDR30が、堂々とOPTION 1983年2月号の表紙を飾ることになったのだ。

「2.0Lで250km/hの壁は高かった。もちろん、記録は出したかったけど、DRが谷田部を走って無事に鈴鹿まで帰ってきたゆうだけで満足できた。なぜなら、壊れなかったこと自体が自分の技術力の証明でもあったからな。それまではドラッグレースでいいタイムを出すと、それが宣伝になってお客さんがよく来てくれたけど、OPTIONの表紙に載ったあとは本当に反響が凄かった。電話が鳴りやまなかったし、青いDRと同じ仕様を作ってくれというオーダーもたくさんあったな」

かくして前川氏が頭に思い描いた通り、DR30で谷田部最高速トライアルに挑んだ結果、エスプリは一躍、全国区レベルのショップとして知られるようになった。

その後1990年代の谷田部において、トヨタ車(JZA80/JZX100)、ニッサン車(BNR32)、マツダ車(FD3S)で300km/hオーバーを達成。3メーカーのクルマでそれを成し遂げたチューニングショップは、実はエスプリ以外に存在しない。そんな最高速での偉業も、すべては青いDR30に端を発しているのである。

●取材協力:エスプリ Tel:0593-70-8080

TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)/PHOTO:伊藤吉行(Yoshiyuki ITO)

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

新車160万円切り! スズキに「MT搭載の“本格”四駆」あった! もはや「ジムニー超え」な“高性能4WD”×デフロックが凄い! 2ドア仕様の「悪路に強いモデル」とは
新車160万円切り! スズキに「MT搭載の“本格”四駆」あった! もはや「ジムニー超え」な“高性能4WD”×デフロックが凄い! 2ドア仕様の「悪路に強いモデル」とは
くるまのニュース
【実際に購入 オーナーのレポート・番外編】EV歴13年のリーフ・オーナーが600eに試乗
【実際に購入 オーナーのレポート・番外編】EV歴13年のリーフ・オーナーが600eに試乗
AUTOCAR JAPAN
なぜ日本人はBEVを買わないのか? 世界で乗用車新車販売比率18%だけど日本だと1.8%な理由
なぜ日本人はBEVを買わないのか? 世界で乗用車新車販売比率18%だけど日本だと1.8%な理由
ベストカーWeb
35年所有したメルセデス・ベンツ「190E 2.3-16」になぜ「4輪油圧レベライザー」が装着されていた? 世界に7台だけの特別なセレブ仕様でした
35年所有したメルセデス・ベンツ「190E 2.3-16」になぜ「4輪油圧レベライザー」が装着されていた? 世界に7台だけの特別なセレブ仕様でした
Auto Messe Web
クルマ好きなら当然やって……ない! それどころか知らない人だらけの国交省推奨のクルマの日常点検15カ所
クルマ好きなら当然やって……ない! それどころか知らない人だらけの国交省推奨のクルマの日常点検15カ所
WEB CARTOP
VWとリビアン、共同出資会社が始動 開発技術は2026年発売の車両に搭載
VWとリビアン、共同出資会社が始動 開発技術は2026年発売の車両に搭載
日刊自動車新聞
YART – YAMAHA、2025年はBSBのオハローランを起用。引退のニッコロ・カネパはSBK・EWCのマネージャーに就任
YART – YAMAHA、2025年はBSBのオハローランを起用。引退のニッコロ・カネパはSBK・EWCのマネージャーに就任
AUTOSPORT web
【ひと中心の価値観】マツダ「発明奨励賞」受賞 リング式アクセル採用SeDVで移動体験の感動を創造
【ひと中心の価値観】マツダ「発明奨励賞」受賞 リング式アクセル採用SeDVで移動体験の感動を創造
AUTOCAR JAPAN
三菱自動車が最上級グレードをベースにした「デリカD:5」の特別仕様車ブラックエディションを発売
三菱自動車が最上級グレードをベースにした「デリカD:5」の特別仕様車ブラックエディションを発売
@DIME
約125万円! トヨタ新「グランツァ」発表! 全長4m以下ボディ&MT設定あり! 精悍ガーニッシュもりもりの「フェスティバルE」印国に登場
約125万円! トヨタ新「グランツァ」発表! 全長4m以下ボディ&MT設定あり! 精悍ガーニッシュもりもりの「フェスティバルE」印国に登場
くるまのニュース
語源が同じって知ってた? 方向指示器の「ウインカー」と片目をつぶる「ウインク」の知られざる関係とは
語源が同じって知ってた? 方向指示器の「ウインカー」と片目をつぶる「ウインク」の知られざる関係とは
バイクのニュース
ホンダ、世界初の車いすレーサー用「漕ぎ力計測機器」開発
ホンダ、世界初の車いすレーサー用「漕ぎ力計測機器」開発
レスポンス
RJCカーオブザイヤー、スズキ『スイフト』が4代連続受賞、輸入車はMINI『クーパー』に
RJCカーオブザイヤー、スズキ『スイフト』が4代連続受賞、輸入車はMINI『クーパー』に
レスポンス
メルセデス・ベンツ EV用電池のリサイクルに注力、しかし原材料の採掘は止められない
メルセデス・ベンツ EV用電池のリサイクルに注力、しかし原材料の採掘は止められない
AUTOCAR JAPAN
60年前のクルマとは思えない日産「ダットサントラック」を発見! タイムスリップしてきたかのような極上コンディションの理由とは?
60年前のクルマとは思えない日産「ダットサントラック」を発見! タイムスリップしてきたかのような極上コンディションの理由とは?
Auto Messe Web
「MINATOシティハーフマラソン2024」開催で交通規制! 日比谷通り、第一京浜で渋滞予想。芝公園出入口は通行止に【道路のニュース】
「MINATOシティハーフマラソン2024」開催で交通規制! 日比谷通り、第一京浜で渋滞予想。芝公園出入口は通行止に【道路のニュース】
くるくら
マクラーレン「F1」「P1」の“1”を継承するPHEVスーパーカー「W1」がジャパンプレミア
マクラーレン「F1」「P1」の“1”を継承するPHEVスーパーカー「W1」がジャパンプレミア
OPENERS
なぜトヨタはF1に戻ってきた? 自動車産業の未来を見据え、ハースと業務提携。
なぜトヨタはF1に戻ってきた? 自動車産業の未来を見据え、ハースと業務提携。
くるくら

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1180.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

498.0777.0万円

中古車を検索
エスプリの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1180.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

498.0777.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村