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スープラであってスープラでない。トヨタが追求したピュアスポーツの真価とは

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スープラであってスープラでない。トヨタが追求したピュアスポーツの真価とは

「国内外でずっとあったスープラ復活を望む声に応えたかった」、「ストレート6へのこだわりがBMWとのコラボを生んだ」など、その復活を物語るいくつかのフレーズに、スープラファンは歓喜したことだろう。

筆者もそのひとりだ。実はスープラが大好物。なにせ免許を取って初めて自分で買ったクルマが第2世代のスープラ(日本名セリカXX)だったから。フェラーリBBのような赤と黒のツートンカラーでリトラクタブルライトをもつセリカXXの中古を確か136万円くらいで買って(ヒトメボレ)、エンブレムやサイドマーカーを輸出仕様、すなわちスープラに替えて悦に入って乗っていた。今でも個体は違うけれど第2世代のセリカXX(ホワイトリミテッド)を所有している。

BMW製パワートレインを搭載した新型スープラに試乗! 日本とドイツの自動車メーカーがタッグを組んだクルマの味付けは?

第3世代は学生から社会人になった頃の最新モデルで、ソアラと同様、憧れしかなかった。豪華で高価なGTカー。高嶺の花だった。第4世代が登場した93年にはすでに自動車メディア業界にいて、新車の紹介記事からライバル対決企画など、スープラネタの企画を多くプロデュースしたものだった。

スープラがいかに思い入れの深いモデルであったことか。分かっていただけたと思う。

ここでスープラ史に詳しくない方のためにちょっとだけ解説しておこう。初代スープラ(A40型)は国産スペシャリティの元祖・セリカの6気筒バージョンとして1978年にデビューした。日本市場ではブランド力のある名前を活用するべく、その豪華版・高性能版という意味合いを含めてセリカXXと名付けられたが、Xの連記がアメリカにおける成人指定(性的、暴力的、差別的など)のレーティング度合いを表すため、スープラというまったく別の名前が与えられたのだった。

引き続き2代目A60型も国内外で“ダブルネーム”としたが、3代目A70型からは日本でもスープラを名乗ることになり、一躍、日本を代表するGTスポーツカーブランドとなる。よりスポーツカー性能を高めた第4世代のA80型で一端、その歴史に幕を下ろした。それが2002年のことで、この年、スカイラインGT-RやマツダRX−7といった代表的な国産スポーツカーが同時に姿を消している。排ガス規制に対応できなかったからだ。2002年は日本のスポーツカーが死んだ年でもあった。

ちなみに第2世代以降のスープラは、大人気を博した国産高級スペシャリティクーペのソアラと、シャシーやパワートレーンなど共通点が多いことでも知られている。

セリカXXとスープラ。それぞれの世代に今でも熱狂的なファンが数多くいらっしゃる。そして歴代すべてのスープラがストレート6を積んでいた。それゆえトヨタが直6エンジン搭載にこだわり、相方として協業態勢の素地ができつつあったBMWを選んだという事実は、すべてのスープラファンにとって有り難い話であったに違いない。

もちろん、ピュアにトヨタ&ヤマハのツインカム24復活、などと望む声も聞こえてくる。けれども、それは時代の流れが許さない。大メーカーほどスポーツカーを新規には造りづらい世の中である。それにBMWのストレート6といえば、クルママニアの誰もが一度は乗ってみたいと思うエンジンだ。次善策として、これ以上のタッグはなかった。

けれども、いちスープラファンとして未だ腑に落ちないのが2シーターであることだ。ストレート6にはこだわって、2 2をあっさりやめる合理的な理由をスープラファンである筆者は見つけることができない。歴代スープラはいつだって、豪華な2 2GTスポーツカーだったのだから。

実際、乗ってみてもストレート6を積むRZ(このグレード名は第4世代からの流用だ)には、スープラらしさなどまるでなかった。17年も前に消滅したGTカーの香りを探し求めるほうがバカだったのかも知れない。

RZは完全に現代のスポーツカーである。ボディは強く、シャシーは電子制御が満載で、いかにも鍛え抜かれた走りをみせる。ストレート6の楽しさは異母姉妹のBMW Z4に比べてやや劣る(おそらくは8ATの制御チューニングの違い)けれど、硬派で楽しいスポーツカーであることに違いはない。

トヨタが考える理想のスポーツカー像のひとつとして、スープラは2シーターで復活した。だからこそ、“GRスープラ”と新たに名乗った。GRとは、トヨタのモータースポーツ活動を統括する新ブランド名で、ガズー・レーシングのイニシャルだ。

トヨタにはもう1台、コラボで造られたスポーツカーがある。スバルと一緒に造った86だ。こちらは2+2で、同じじゃつまらないという理屈も分かる。20年以上も前ならいざ知らず、今の時代、よく似た2 2のスポーツカーが何種類もあったところで売れるはずがない。否、一機種だってビジネスとして成立するかどうか怪しい。どうせ大量には売れないのだから、と、性能にこだわって2シーターを、という理屈もよく分かる。

ホントのところは、BMWがモデルチェンジをしあぐねていたZ4(2シーターだ)とのコラボとなった時点で、2+2はあり得なかったのだろうけれど。

さらに古いスープラファンの心をかき乱すのが、4気筒を積んだ新型スープらがあることだ。SZとSZ−Rの存在である。ストレート6にこだわった、86とは違う、などと言いつつ、(たとえ高性能なBMW製ユニットであるとはいえ)4気筒エンジンをスープラに積むなんて! と、最初は思った。SZ、SZ-Rも先代のグレード名で、自然吸気の直6エンジンを搭載するいいスポーツカーだったのに……。

実際に新型を試乗してみて、RZよりもSZやSZ-Rのほうが楽しいと思えたから、話はいっそうややこしい。そりゃそうだ、そもそも新型スープラは86サイズで、ホイールベースにいたっては2シーターだから短いクルマだ。ハイパワーなストレート6を積んで、あれやこれやと制御して前後左右にクイックであることより、重量&パワーともにバランスがよく、より一体感のあるクルマのほうがリアルスポーツカーらしく感じるのは当然だ。できれば3ペダルマニュアルミッションが欲しいと思ったほど良かった(BMW Z4にはある)。スープラらしくは決してないけれど!

スープラは、いちど死んで生まれ変わったのだ。まったく違うクルマに。よくできたスポーツカーに。ボクの好きなスープラは永遠に胸のなか。それでいい。そう思えば、新型スープラの型式名が正式には歴代を継承するA90型でないことにも納得できるというものだから。

いっそ名前がスープラじゃなかったら? それじゃスポーツカーを今の時代に問うという挑戦(これは素晴らしいこと)の大義名分すら成立しなかったことだろう。

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