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【スープラはコラボじゃなければ無理だった?!】トヨタはもう単独でスポーツカーを作れないのか?

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【スープラはコラボじゃなければ無理だった?!】トヨタはもう単独でスポーツカーを作れないのか?

 トヨタとBMWのコラボレーションによって、トヨタからはスープラ、BMWからはZ4がデビューした。

 トヨタとスバルのコラボで生まれた86&BRZに続いて生まれたスポーツカーだが、往年のトヨタファンからは、なぜトヨタは単独でスポーツカーを作らないのか、という声をよく聞く。

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 そこで、トヨタはスポーツカーをもう単独で作らないのか、それとも作れないのか? 売上高30兆円を誇る、世界の一、二を争う自動車メーカー、トヨタにスポーツカーを作る技術力がないのか? 

 自身、トヨタのスポーティモデルを7台乗り継いだという、モータージャーナリストの岡本幸一郎氏が解説する。

文/岡本幸一郎
写真/ベストカー編集部 ベストカーWEB編集部

■かつてのトヨタはスポーツカーが豊富だった

2019年5月17日、ついに発売された新型スープラ

 筆者はこれまで25台の愛車を乗り継いできた中の7台がトヨタ車で、そのうちGA60セリカXX、AE86トレノ、GZ20ソアラ、JZA70スープラなどスポーティモデルが大半を占める。

 ほかにも日本初の量産ミドシップであるMR2や、実質的な後継であるMR-Sを手がけたのもトヨタだ。かつて魅力的なスポーティモデルがトヨタには豊富にあったものだとつくづく思う。

 ところが、2002年の80スープラの生産終了後は、4代目ソアラ=レクサスLCや、別格的なLFAこそあったものの、いわゆるスポーツカーらしいスポーツカーが長らくラインアップされずにいた。

 やがて86が世に送り出され、レクサスからはRC、LCが登場し、このほどスープラが発売されたものの、せっかくスポーツカーが出てきたかと思えば、RCとLCこそ純粋にトヨタ=レクサスで開発したものの、ご存知のとおり86はスバルと、スープラはBMWとのコラボによるものだ。

 86もスープラも、それぞれ提携先との思惑が一致したところから話がはじまり、このような運びとなったという。

トヨタとスバルのコラボによって生まれた86&BRZ。とはいえ、エンジンはトヨタ製ではなく、スバル製FA20型2L水平対向4気筒エンジン


 86は当時スポーツカーを有していなかったトヨタと、それまでFRのスポーツカーを作ったことがなく、ぜひ機会があればチャレンジしてみたいと兼ねてから考えていたスバルとのコラボにより生まれたクルマである。

 次期86&BRZは、インプレッサのプロジェクトゼネラルマネージャーだった現・技術開発センター商品企画本部担当兼商品企画本部長 阿部一博氏が先頭になって開発しているとは聞いているが、まだ先は見えない。

 これまでの流れを見るにつけ、86はビジネスとしても十分に成功例と捉えてよいように思える。

 一方のスープラも状況は似ていて、BMWにとっても、あまり売れ行きが芳しくなくなり、しばし販売を休止していたZ4をどうするかは悩みの種だったところ、すでに提携関係を結んでいたトヨタが復活の機会をうかがっていたスープラと共同開発するという案は、願ったりかなったりだったようだ。

 いずれもそれなりに話題性は高く、期待の大きさがうかがえる。とはいえ、おそらく日本では、この価格帯の2シーターのスポーツカーがそれほど売れることはないだろう。トヨタがスープラで睨んでいる主戦場は、やはり北米市場に違いない。

 2019年初のデトロイトショーが「スープラ祭り」となっていたのも、それを象徴している。その盛り上がりようは日本の比ではない。

 また、このクルマがどんな成り立ちであるかなどを日本人はとても気にするが、北米ではあまり問題とされない。

 現物そのもので勝負というお国柄ゆえ、カッコよくて走りがよければ、それでOKなのだ。BMW云々というのがあまりマイナスに受け取られることもなければ、むしろよいほうに受け取られているともいえる。

■トヨタ単独でスープラを作れたハズなのになぜ?

スープラの兄弟車、BMW Z4。2019年7月から欧州で2L、直4ターボに6速MTを用意するそうだが、スープラには用意されるのか?

 それでも、86とスープラの2台を俎上に乗せたときに、とりわけトヨタの看板スポーツカーであるスープラを、どうしてトヨタが単独で開発してくれなかったのだろうという思いが頭をよぎるのは否めない。

 もともとトヨタは、ひとつのメーカーのなかに、いくつものメーカーがあるかのようなメーカーだと思っているが、現行モデルを見わたしても、すでにLCやRCのような高級パーソナルクーペを手がけているわけで、スープラだってやろうと思えばいくらでもできたはずだ

 ここで、2018年、グッドウッドで新型スープラを走らせた後、日本に帰国した開発責任者・多田哲哉氏にインタビューした時の内容を紹介しておこう。

「僕は直6、FR以外はスープラではないと思っています。だから直6エンジンを作っているBMWと組めなければこの企画はあり得ませんでした。

 販売台数が少なく、採算を取りにくいスポーツカーは一社単独で作るのは難しい。

 これからも趣味性の高いクルマはどこかと共同で作るというのが重要な手法になると思います。

 そもそもBMWもZ4はもう諦めていて、我々と組むことがなければ生まれてこなかったはずなのです。

 トヨタが久々の本格的FRスポーツを復活させ、BMWがZ4を存続させるためには最適の方法だったのです。

 僕は86をスバルと共同開発しました。その時には他社と組んでクルマを作ることの大変さを思い知りましたが、BMWとの仕事の大変さはその比ではなかったですね。

 初めてBMWのスタッフと顔を合わせたのが2012年のこと。その時にはどんなクルマを作るかの青写真もなく、ただ『一緒にやろう』というだけだったのですが、その後『ポルシェに負けないスポーツカーを作りたい』と言ったら鼻で笑われました。

 『俺たちはポルシェもメルセデスもライバルと思ったことはない。BMWはBMWの道を歩んでいるんだ』と。

 まずはお互いのクルマを知ろうということで自社のクルマを持ち合って試乗会を開いたのですが『トヨタ車に乗るのは初めて』という人ばかりで、86に乗って『意外とまともだね』なんて言われたり。今ではすごく仲良くやっていますが、はじめの2年は本当につらかったですよ。

 でもBMWのクルマ作りはすべてが衝撃的でした。BMWは設計図をトヨタの2倍作り、徹底的にシミュレーションを重ねます。テストカーを作る時には問題点はほとんど消されているのです。

 役割分担は企画がトヨタ、設計、生産がBMWで、スバルと組んだ86/BRZと同じやり方です。

 ただ、ベース車の開発はBMWですが、そこから先はスープラとZ4はまったく別に開発を進めていて、互いに相手がどんなクルマを作ろうとしているのか知らないくらい。

 共通のパーツを多用して安くしようという発想もありませんから内外装もまったく違うし、シフトノブも別のものを使っています」。

 このインタビューからBMWとコラボがいかに難しいか、苦労した状況や、それでも単独でスープラを開発しようとしなかった理由が紐解けたのではないだろうか。話をまとめてみよう。

 まずはマーケティングという根本的な問題だ。

 自動車メーカーも商売としてクルマを売る以上、莫大な開発費をかけて、それが回収できる見込みがなければ、あえてそこにチャレンジする必要はない。

 むろん、こうしたスポーツカーの市場が世界的にけっして大きくはないのは、いまに始まったことではない。

 仮にたとえスープラがどれだけ出来がよくて評判になったとしても、トヨタにとって満足できるほど売れるわけでもない。

 さらには、開発費を抑えるために、RCのようにすでにあるコンポーネンツを活用して、デザインや乗り味を専用に変えて出すという手もあっただろうが、それではあえてスープラとして出す意味がないとトヨタとしても考えたのではないだろうか。

 スポーツカーがビジネスには不向きであることは重々承知していても、できれば本心ではスポーツカーをラインアップに持ちたいと思わずにいられないのもまた、トヨタに限らず自動車メーカーの性(さが)に違いない。

 お互いの思惑の一致とともに、スープラを復活させるにあたって、トヨタとしてもこれまでやったことのない新しいものにチャレンジし、そこで得たものを今後のために活かしたいという考えもあったことだろう。

■スポーツカーの分野で新しい動き

 ほかにもトヨタは、このところスポーツカーの分野でかつてない新しい動きを見せている。

 2015年の東京モーターショーで初披露され、翌年初の東京オートサロンではカスタマイズモデルまで披露されたS-FRも続報がなかなか聞こえてこず、開発は中断されたと聞く。

 一方でトヨタは、GRカンパニーのような組織を起こして既存モデルのコンバージョン車にこれまでにも増して力を注ぐなど、やはりスポーティモデルに対して新しい動きをはじめているのは明らか。

トヨタが立ち上げた 「GAZOO Racing Company」(GR) は4つのラインアップに分類される

 また、2018年の東京オートサロンで披露した、LFAをもはるかにしのぐ弩級の「GRスーパースポーツコンセプト」のほうは、プロジェクトが進められている。

GRスーパースポーツコンセプト。2.4L、V6直噴ツインターボチャージャー搭載で、システム最高出力は735kW/1000ps

  市販予想時期は2021年頃。100~200台前後の限定車として登場し、市販価格は1億円オーバーと予想されている。

 自らの実力の高さを世に知らしめるには、そうしたスーパースポーツのほうがてっとりばやく、インパクトも大きいことには違いない。

 とはいえ、僕ら一般ユーザーが期待しているのは、もっと身近なスポーツカーだ。

 フルモデルチェンジの情報がなかなか出てこない86&BRZの後継モデルや、BMWとの協業で得たものを活かしたスープラに次ぐ上級スポーツカーを、次はぜひトヨタ単独で作り上げてほしい。そのほうがトヨタのイメージは一気に上向くような気がする。

■トヨタは新規エンジンをなぜ開発しないのか?

2JZ-GTEエンジンを搭載する80スープラはいまだに人気が高く、2JZ-GTEエンジンの後継エンジンをと、望む声が多い

 マツダが直6エンジンを開発中と発表し、日産は可変圧縮比のVCターボを発表するなか、トヨタは新型エンジンをなぜ開発しないのだろうか?

 トヨタのスポーツエンジンといえば、直6。70スープラや20系ソアラに搭載されていた、2.5L、直6ツインターボの1JZ-GTE、そして80スープラやアリストに積まれた3L、直6ツインターボの2JZ-GTEが思い浮かぶ。特に2JZ-GTEは、世界最強のトヨタエンジンとしていまだに人気が高い。

 特に往年のトヨタファンからは、新型スープラに、2JZ-GTE(280ps/46.0kgm)の後継エンジンを載せてほしかったという声が大きく、新型スープラに2JZ-GTEを積むキットを販売するアメリカのショップも現われた。

 トヨタの場合はやはりハイブリッドがらみでことが進められていくだろうから、新しい純ガソリンエンジンの直6は作れないのではなく、作らないのだ。

 かつては直6でならしたトヨタなら、往年に名機の数々に携わったヤマハの力も借りつつ、エコでかつドライバビリティに優れた素晴らしいユニットを世に送り出してくれることに期待したい。

 とはいえ、直6の代名詞であるBMWとのディープなコラボを経験した今のトヨタなら、直6の復活に対しても前向きな心境になっているかもしれない。

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