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【早すぎた!? 高すぎる!??】未来の常識デジタルアウターミラー 普及しない理由と事情

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【早すぎた!? 高すぎる!??】未来の常識デジタルアウターミラー 普及しない理由と事情

 量産車として世界で初めて、ドアミラーに変わるデジタルアウターミラー、(正確にはデジタルアウターモニター)を装着したレクサスESが発売されてから、半年が経った。

 ようやく街中で見かけるようになったが、「デジタルアウターモニター」の実際の機能や使い勝手はどうなのか、評判はどうなのか、探ってみることにした。

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文/岩尾信哉
写真/岩尾信哉、ベストカー編集部、ベストカーWEB編集部

■日本の法規が2016年6月に改正された

「デジタルアウターモニター」は、カメラとモニターをパナソニック、ECUをデンソーがトヨタと共同開発するという、トヨタの部品の鉄板といえる組み合わせで生み出された。ECUは「アラウンドビューモニター」用の部品や技術を流用して開発期間を短縮したという

 国土交通省が2016年6月に道路運送車両法の保安基準の一部改正を行い、バック(サイド)ミラー、正確には“後写鏡”の国際基準改正を受けて、これらのミラーの代わりに小型カメラを利用した「カメラモニタリングシステム」(CMS)を使用することを認める新基準を日本の国内基準としても採用すると発表した。

 具体的には、自動車に設置が義務づけられている後写鏡に代えて、現在の後写鏡と同等の視界が確保される、前述の国際規準が定める画質、取付位置、表示時間(タイミング)、倍率(後写鏡の曲率に相当)、個数(欧州のクラス毎の分類)の要件に適合するCMSをドアミラーなどの代わりに装備することが認められたのだ。

■価格の高さが普及を阻んでいるのか?

左右のカメラによって映し出された映像はセンターコンソールの5インチのディスプレイに表示

「デジタルアウターモニター」の機能の概略を紹介すると、車両のフロントドア外側のカメラで撮影した車両左右後方の映像を、左右のフロントピラーの根元あたりに設置された5インチディスプレイに表示する。

 カメラ部を雨滴が付着しにくい形状としたほか、ディスプレイを室内に搭載することで、天候の影響を受けにくい優れた視認性を確保したという。従来のサイドミラーを小型カメラに置き換えることで、斜め前方の見通しを確保するとともに、風切音を抑えて高い静粛性を実現したとトヨタは謳っている。

レクサスESのバージョンLのみにメーカーオプションとして設定されているデジタルアウターミラー。全体からみるとわずか1割強しか装着されていない


 メーカーオプションの価格は21万6000円だと、簡単に装着する装備とは言いにくい。

 まずはトヨタ広報部にレクサスESの売れ行きから訊ねてみると、ESの販売(登録)台数(2019年2月は1057台)のうち、「デジタルアウターモニター」をメーカーオプションとして装着できるバージョンLの割合は約半数、このうちデジタルアウターミラーを選択したのは約3割、全体としては1割強ほどになるから、お世辞にも好評とは言いにくい。

 いっぽうで、都内のレクサスディーラーのスタッフに訊ねてみたが、バージョンLの販売割合がトップで、ほぼすべての購入客が「デジタルアウターモニター」を選択しているとのことだから、地域差も多分にあるようだ。

 ユーザーとしては「慣れれば問題ない」という方が多数を占めるようで、都内の購入層ではES、それもバージョンLを積極的に選ぶこと自体、「デジタルアウターモニター」を選ぶことと一致しているのかもしれない。

 新しい物好きが多い都会よりも、冷静な購入層のほうがESでは多いというのは、目が肥えているというべきだろうか。

■バックという意外な盲点?

モニターが映し出す範囲は調整できないという

 都内で試乗して実際の使い勝手を確認してみると、まずはモニターで映す範囲があらかじめ設定されているので調整することができない(必要がない)ことに違和感を覚える。

 実は走り出す前にも手順があり、ウィンカーを点灯する際により広く遠くまで視認できるワイドモードに切り替えるには、必ず自分で設定を変更しなければならないのだ。

 走り出して感じるのは、従来のドアミラーの位置からAピラーの根元あたりにモニターがあるため、目線の移動量は少なくてすむうえに、モニターの映像を見ると確かに視野が広がっていることがわかる。

夜間での見え方が心配だったが明るくよく見えていた

■違和感のあるデジタルインナーミラー

 いっぽうで、これもメーカーオプションとして設定されている「デジタルインナーモニター」とで周囲の見え方(映し方)に微妙な違いがあることに気づかされる。慣れるまでは、確かに見えてはいても、周囲の車両などとの距離感を捉えにくいのだ。


デジタルインナーモニターは車両後方カメラの映像をミラー内のディスプレイに表示する。切替レバーを操作することで、鏡面ミラーモードからデジタルインナーミラーモードに切り替えることができる。視界を遮るものがない映像による後方の安全確認を可能としたほか、夜間の視認性確保、電動サンシェード (リアウインドウ) 使用時の視界確保、後席乗員のプライバシー確保にもなる

 細かい見え方に触れれば、LED信号がちらつくのも違和感を助長してしまう。やはり、これを購入するひとは慣れるまでの“覚悟”がいるだろうと実感するのは、習慣的な視線の移動が出てしまう場合だ。

 走行中はゆったりと流しているときには問題ないが、たとえばとっさに街中で車線変更する際にはどうしても従来のドアミラーの位置を見てしまいがちだ。

■慣れようがない弱点

夜間の降雨時、アウターミラーに映った映像は見えにくくなることがあったがそれは数秒の出来事

 では、慣れようがない“弱点”はないとかといえば、どうしても自分の目で確認したい場合、たとえば夜間に駐車位置からバックで出庫するような際に、「デジタルアウターモニター」の機能にすべて頼ることが心許なく思えることだ。

 もちろん、障害物や歩行者が近づいている場合には超音波ソナーによって警報音などが発せられるので心に留めておけばよいのだが、特に雨が降っているとモニターの映像を注視しなければならない。

 これまでにLSなどでリアカメラを使ったルームミラーの代替装備として、「デジタルアウターモニター」の機能を補完することになる「デジタルインナーモニター」の映像が走行中に雨が強く降ると見えづらくなることは経験していたが、夜間の雨中では自分の目で周囲を確認することができなくなってしまう。

 視界を遮るものがない映像で後方の安全確認がより快適に行えるとされ、電動式アウターミラー使用時でも後方視界を確保できる利点としている。

 ただし、現状では使用するのに“注意書き”がさまざまあって、走行前に必ずミラーの調整を行うことや走行中は「デジタルインナーモニター」の位置やディスプレイに表示される映像を調整しないこと。

 外部光による反射でディスプレイが見えにくい場合には、シェードを閉めるか鏡面ミラーモードに切替えること。体調・年齢などにより、ディスプレイに表示される映像に焦点が合うまで時間がかかる場合がある、などという、ことわりが必要なので、技術的には改善の余地があることがわかる。

 このデジタルインナーモニターの価格は10万8000円でレクサスLSやESのほか、クラウンやノア、ヴォクシーなどにも採用されている。


 「デジタルアウターモニター」は前述のように形状が工夫されているため基本的にモニターに映し出される映像が天候に左右されることはないが、「デジタルインナーモニター」では着雪や雨滴、汚れ等により映像が見づらくなる場合もあるとされ、その際には“鏡面ミラー”モードへの切り替えを推奨している。

 夜間など暗い場所では、周辺を明るく見せるために映像が自動的に調整されることにより、特有のちらつきが発生する場合があるというのは「デジタルアウターモニター」と同様だ。

■もう少し改善されるといいのだが……

 このように現状ではあまりにも“但し書き”だらけで、いざというときに頼りにならない場合があることも頭に置いておくべきだろうし、「デジタルアタウーモニター」と「デジタルインナーモニター」をセットオプションのように捉えるべきではなく、選ぶ際には“要確認”といえる。

 どうやら、ミラーの電子化には、まだ慣れが必要なうえに独特な“不自由さ”を感じる部分が存在する。

 ESのユーザーから得られるはずの情報を元に、トヨタが見え方(見せ方)にさらなる改善を施すまで、しばらくは様子見したほうがよいというのが現状での結論としたい。

2019年3月のジュネーブショーで発表された「ホンダeプロトタイプ」は「サイドカメラミラーシステム」を採用した。2019年秋に量産モデルが発表される予定

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