11年ぶりにフルモデルチェンジしたラングラー(Wrangler)。これぞジープ(JEEP)といった、象徴的な存在で、1941年のウィリスMB以来77年間守り続けたコアバリューを継承する一方、走行性能、快適性、安全性など今、求められている要素をすべて大幅に向上させている。(Motor Magazine 2018年12月号より)
伝統を継承しつつ進化を続ける本格派
メルセデスC220dステーションワゴンは日本にジャストフィット!
日本市場でジープの販売はここ数年、絶好調が続いている。2010年に約1900台だった年間セールスは2017年、初めて1万台の大台を突破と、つまり8年で実に5.3倍にもなっている。
その要因のひとつはラインナップの増加に違いないが、実はアイコンであるラングラーの販売も伸びている。なんと日本でのジープの販売の4割を占めるというのだ。それには、漠然とした憧れを具現化させてくれる選択肢となった4ドア版のアンリミテッドの設定が大いに貢献しているのだろう。
11年ぶりに刷新された新型ラングラー、見た目はほとんど変わっていない……かと思いきや、実際はすべてが新しい。
たとえばフロントウインドウがやや寝かされ、ベルトラインも下げられているのだ。フロントタイヤが前方に移動し、ホイールベースも伸ばされている。これは8速ATを収めるためだという。ハードコアなユーザーはこれでも「丸くなった」、「乗用車みたい」と嘆くらしいが、一般的に見れば十分武骨で、十分「ジープ」である。
フェンダーやドア、ウインドシールドフレームやスイングゲートパネルなどにはアルミニウム素材が使われて軽量化。樹脂製のハードトップも軽くなり、ラッチの改良もあって取り外しがさらに簡便になった。
そして、今回も変わらず継承された8点のブッシュでボディに接続される独立したフレームには亜鉛メッキされた高張力鋼板が使われ、剛性を高めつつ軽量化を実現している。またスポーツバー、いわゆるロールケージには熱間成形スチールが用いられ、非常に高い強度を確保したと謳う。結局、車重は全部で70kgほど軽くなったという。
サスペンションは当然、前後リジッド。しかしながら四輪駆動システムは、ついにフルタイム化された。もちろんローレンジやデフロックは変わらず備わるのでご心配なく。そしてエンジンに、3.6L V6に加えて2L直4ターボが設定されたのもトピックだ。
軽く、確実に開き、ちゃんとストッパーも備わるようになったドアの向こうの室内も、デザインが刷新された。外観同様、機能一本槍だったのがやや装飾的になったのは賛否が分かれそうだが、インフォテインメントが充実し、居住性も向上している。ドライビングポジションにまだクセはあるが、とりあえず足の置き場は見つけられるようになった。
パワフルなエンジンは意のままに操れる感覚が強い
試乗はアンリミテッド サハラ ローンチエディションで、いきなりオフロードから始めることになった。舞台となった「さなげアドベンチャーフィールド」のコースは普通なら足を踏み入れるのも躊躇うようなハードなもので、しかも小雨のため滑りやすくなっていた。
しかし、ラングラーはデフロックすら必要とすることなく、凸凹した悪路に余裕で分け入って行ける。電子制御を使って効率よく上手に、というより路面を鷲掴みにして力強く地面を蹴る感じが、いかにもな感じで心地よい。
2L直4ターボエンジン仕様も試すことができたが、そちらも印象的だった。トルクはV6よりむしろ太いし、鼻先も軽く、意のままに操れる感じが強いのだ。これでユーザーからの要望が大きかったという燃費向上も実現しているならば、選ばない理由がない。
一般道での乗り味は、やはり車体の剛性感アップが印象的だ。最小回転半径も小さくなり、扱いやすさは格段に高まった……しかし、とは言え前後リジッドサスペンションということもあり依然としてユサユサと揺さぶられるような感じは残り、至極快適というわけではない。乗用車と変わらない乗り味の今どきのSUVとは、やはり違うということは付け加えておくべきだろう。本格オフローダーとしては、従来よりずいぶん洗練されたというところである。
すべてに変化ではなく、確実な進化を果たしたというのが、新型ジープ ラングラー。好調なセールスにさらに弾みがつくことは間違いない。(文:島下泰久)
ジープ ラングラー アンリミテッド サハラ ローンチエディション 主要諸元
●全長×全幅×全高=4870×1895×1840mm ●ホイールベース=3010mm ●車両重量=1980kg ●エンジン=V6DOHC ●排気量=3604cc ●最高出力=284ps/6400rpm ●最大トルク=347Nm/4100rpm●トランスミッション=8速AT ●駆動方式=4WD ●車両価格=530万円
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