最近どうもホンダのクルマたちへの風当たりが強いように思う。シビックにしてもクルマとしてはいいのになぜか批判も多い。
そのほとんどが「デカすぎる」と「高すぎる」というもの。日本市場に根差して「ちょうどいい」クルマを多く作ってきたホンダだけにファンの怒りも収まらないようだ。
CR-V、そして年内登場予定のインサイトなど、多くの車名復活があるホンダ。しかしかつてのコンセプトは薄れているのも事実。いつからホンダはこうなったのでしょうか!?
文:清水草一/写真:ベストカー編集部、ホンダ
■3シリーズより大きなシビック 「俺たちのホンダ」はどこに!?
日本の自動車ユーザー、とりわけクルマ好きの間で、ホンダに対する”反感”のようなものが高まっている。
かつては、「オレたちのホンダ」だったのに、今のホンダは、オレたちを捨ててしまったという感覚だ。
なにしろ最近のホンダ車には、デカすぎるし高すぎるものが多い。その象徴がシビックだ。
現行シビックは、ハッチバックでも全長4520mm、全幅1800mm。セダンにいたっては、全長4650mmもある! 実は、現行シビックセダンのサイズは、BMW3シリーズセダンよりも微妙に大きい。
現行3シリーズが登場した時は、「これはもう5シリーズだ」と言われたくらいデカくなっていたわけだが、シビックはそれよりさらに少し大きいのだからビックリする。
初代シビックが誕生したのは1972年。初代の4ドアセダンは、全長3695mm、全幅はたったの1505mmだった。
一方、初代BMW3シリーズの誕生は1975年。この時は4ドアはなく2ドアのみだったが、全長4355mm、全幅1610mm。車格はシビックよりはるかに上だった。
あれから40年余り。3シリーズも十分デカくなったが、シビックのデカくなりかたは、それよりはるかにすさまじい。なにしろ3リーズを抜いてしまったんだから! 日本のユーザーが「こんなのシビックじゃないよ!」と思うのは自然だろう。
価格も高くなった。サイズがこれだけデカいのだから仕方ないが、シビックの車両本体価格は、セダンが約265万円、ハッチバックが約280万円。
あの大衆の味方・シビックが約300万円!? と聞くと、中高年のクルマ好きは、「それはないだろう……」みたいなことを思ってしまう。
初代シビックの価格は、3ドアハッチバックの1200GLで約54万円だった(1972年)。現在の物価水準は当時の3倍弱になっているが、54万円を単純に3倍しても162万円。
シビックと言えば、それくらいの価格が適正という感覚ではないだろうか。今はそこにフィットがいるわけですが。
アコードに関しても、ほぼ似たような状況だ。かつて日本の超定番だったアコードは、今やアメリカの超定番となり、サイズは初代の全長4m強から、5m近い巨体になっている。価格も約400万円。
当然ながら国内販売は大不振で、今年の1~9月でわずか1459台しか売れていない。月平均約150台。マセラティと同じくらいなのだから、アコードの激レア化ぶりがわかろうというものだ。
ホンダ車がデカくなって高くなったという負のイメージの中心には、間違いなくこの2台がある。なにしろどちらも、国内で販売トップ10の常連だったモデルだ。
それがここまで肥大化した結果、多くの日本人の選択肢から外れたという事実が、実像以上に「ホンダは国内市場を見捨てた」というイメージにつながっている。
そこにレジェンドやクラリティ、新型インサイト、CR-Vが加わって、反ホンダ感情が盛り上がっている。
■ホンダはスバルやマツダよりも国内市場を考えている!?
いつからこんなことになったのか。シビックの変遷を見ると、2005年登場の8代目から3ナンバーサイズになっている。
アコードが全モデル3ナンバーになったのは2002年の7代目から。そのあたりが分水嶺と見ていいだろう。
背景にはいろいろな要因があるが、ひとつには、世界的なボディサイズの拡大傾向がある。アメリカ車はもともとデカかったが、それに対して日本車は、コンパクトで高品質・低価格・低燃費で売ってきた。
ところが北米市場で競合するドイツ車のサイズが、どんどんデカくなっていった。
たとえばBMW3シリーズだと、1998年登場の4代目から3ナンバーサイズになっている。衝突安全基準も年々厳しくなり、21世紀に入ると韓国車の脅威も加わって、多くの日本車が本格的に追随せざるを得なくなった。
これはなにも、ホンダに限った話ではない。トヨタも日産もマツダもスバルも同じ。欧米や中国市場では、VWゴルフに代表されるクラスですら全幅1800mm前後が当たり前になったのに、日本車だけが小さいままでいたら、デザイン面や安全面で取り残されてしまう。
全世界的なボディサイズの拡大と同時に進行したのが、日本国内市場での急速なセダン離れだ。
20世紀中はそれでもギリギリ、セダンやそこから派生するハッチバック&ワゴンはクルマの基本形と言えたが、21世紀に入ると、ミニバンや軽ワゴンなどの箱型車のシェアが急拡大。セダン系はまったく売れなくなった。
1980年代にはマークII三兄弟が月に2~3万台も売れていたのに、今やマークXは月に1000台も売れていない。市場が数十分の1になってしまった!
セダン離れは全世界的な傾向ではあるが、日本は特に極端。今や国内で売れるのは、軽が4割、ミニバン系が2割だ。
軽はもちろん国内専用だし、ミニバンの主流である5ナンバーモデルもほぼ国内専用。日本は、国内専用モデルが6割を占める一方、セダン系は1割を大きく割り込むという、超特殊市場になった。
こんな市場に合わせてセダン系を開発したって、最初から売れる見込みがない。ならば欧米や中国の需要に合わせてデカくしたほうがいい。経営者ならそう考えるのがアタリマエだ。決してホンダの罪ではない。
なのになぜ、反ホンダ感情が高まるのか?トヨタは日本を代表する企業として、日本市場を重視する義務を感じており、いまだに国内専用モデルを多数持っている。
これはトヨタの販売力があってこそできることで、他社はまねできない。一方、マツダやスバルは完全な輸出志向で、軽の開発からも撤退し、ほぼすべてがグローバルモデルになっている。
この2社のほうがホンダよりも国内市場を「捨てている」のだが、日本のクルマ好きから支持されている。
彼らは、小さいながらも独自の技を持って世界で頑張るアスリートのような存在。つまりイチローだ。イチローを応援しない日本人はまずいない。
その点、ホンダや日産はどっちつかずに感じるのだ。マツダやスバルより規模が大きい分、尖りの少ない一般向けモデルが主力で、それらはマニアには刺さらない。
NSXやGT-Rのような、世界に誇る技術を持ってはいるが、現行モデルはどちらも高価すぎて、日本のクルマ好きには手が届かない。それがまた、「オレたちを捨てた」という感情を昂らせるという循環がある。
さらには、ホンダも日産も、現在のデザインテイストは日本人好みとは言いがたい。どちらも主力は北米と中国市場。
彼らの好みに合わせれば合わせるほど、デザインはエグく大味になり、日本のクルマ好きは捨てられた感を強くする。
ホンダは、軽はすべて国内専用だし、ステップワゴンやフリード(一部アジアでは販売)、シャトルなどの国内向けモデルも開発している。
マツダやスバルよりも日本市場を大事にしているのだが、クルマ好きが注目するモデルがやたらデカくて高くなったことで、「ふざけんな!」という反発を生んでいる。
が、ホンダがこの路線を変更することはないだろう。なにしろ、グローバルでの業績は好調。2012年との比較だと、売上はなんと2倍に増えていて、増加率ならトヨタを大きく上回っているのだ。
「今のホンダ車はカッコ悪いしつまんない」「売れてるのは軽のN-BOXだけ」というイメージは、国内だけのものなのだ
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