日本で最も売れているスバル車が「フォレスター」だ。乗用車感覚で乗れるSUVであり、実用性の高さはピカイチである。フルモデルチェンジを受けた新型のなかでも、とりわけ人気の高いe-BOXER搭載車を公道で試乗した。
ぼくはフォレスターに好感を持っている。全長4.6メートルの適度なサイズに、容量500リッターを超える使い勝手のいい荷室を持ち、かつ室内は前後席ともに空間的な余裕がたっぷりある。みごとな機能主義的パッケージングに感心させられるのだ。
新型をテストして村上春樹を思った──スバル・フォレスターの魅力って?
5代目のスバル フォレスターがお披露目されたのは2018年3月のニューヨーク自動車ショーだった。業界用語でいうところのキープコンセプトのモデルチェンジで、ややもすると、従来型と新型の見分けがつきにくいほど。
おそらく、メーカーはフォレスターのデザインコンセプトを“完成形”と考えているのだろう。ほかにもメルセデス・ベンツGクラスや、アウディA7スポーツバックなど、同様のキープコンセプトのモデルチェンジの例が思いつく。どれも、クラスのなかでは圧倒的な人気を誇るモデルだ。
とはいえ、細かく観察すると、旧型とは異なるモデルであることに気がつく。新型は、リアクオーターパネルのキャラクターラインや、テールランプの造形など、外観上の特徴をいくつも持つ。ホイールベースも30mm延びて(見た目ではわかりにくいけれど)居住性も改善している。
「e-BOXER」の完成度は想像以上
e-BOXERとは、スバルがこだわる水平対向エンジン(これを別名ボクサーエンジンと呼ぶ)に電気モーターを組み合わせたハイブリッドシステムだ。エンジンの最大トルクは188Nmで、これに65Nmの電気モーターのトルクがくわわる。
実際に走らせると、その運転感覚はナチュラル。無理せず気持ちがいい、と表現したくなるフォレスターのありかたにぴったり合っていると思える。このシステムは電気モーターをエンジンと同軸に配し、加速時にトルクを上乗せすることを目的とする。
エンジン停止時からの発進では、電気モーターの力でスタータージェネレーターをまわし、スムーズに加速する。また、追い越しなど中間加速時におけるトルクの増強も特徴だ。基本的にはエンジンで走り、必要に応じてモーターがアシストするため、電動走行のみの場面は少ない。
かつて「スバル XV」でもハイブリッドシステムを採用したが、e-BOXERの特徴は、リチウムイオン電池を採用したことだ。「(ニッケル水素バッテリーと比較して)数値はほぼ同じでも体感的なパワーが違います」。スバルの開発担当者がそう教えてくれた。
運転感覚については、「街中で軽く加速するときなど背中をどんっと押されるようなトルク感につながっているはずです」と、スバルの開発者が語るように、たしかに力強さがしっかりある。
ステアリングホイールのスポーク上に設けられているドライブモードセレクター「SI-DRIVE」で「スポーツモード」を選択すると、このシステムの恩恵がよりはっきりと分かった。アクセルを強めに踏み込むと、積極的にモーターが回ってトルクが補強される。
エンジントルクを低回転域から高回転域までフラットにしようとすると、ターボチャージャーではツインスクロール化などオカネがかかる。電気モーターを使うe-BOXERはそこを上手にカバーしていると感心した。ものすごくパワフルではないが、気持ちいい。クオリティの高い走りを実感できる。
新型フォレスターは、シャシーのねじり剛性が上がっていることもうたう。また、走りのクオリティを上げるため、いたるところにファインチューニングを施したと開発者も言う。e-BOXERをあえて採用した事実といい、ドライバーを中心に作られているのがよくわかる。
先代もいいクルマだったが、新型は明らかにハンドリングが向上している。ステアリングへの反応はよくなり、かつ重心高の低いボクサーエンジンのメリットもあって、車体のロールは抑えられ、カーブでの挙動がすなおで気持ちいいのだ。街中でも高速でもワインディングロードでもソツなくこなしてしまう。
居住性も、シルクハットをかぶったまま運転できそうなぐらい余裕あるヘッドスペースは健在。このパッケージングには感心する。快適装備も豊富だ。たとえば、シートヒーターは前席だけでなく後席にも備わる。
フォレスターは、いってみればイマドキのスニーカーのようなクルマである。機能性とスタイルがバランスされていて、スタイリッシュであるいっぽうスポーツにも使える。
AWD(全輪駆動システム)を備え、かつ、ゆったりした気分で荷物をたっぷり積んで遠出できるという”基本性能”も高い。e-BOXERの「アドバンス」はリッター18.6キロ(JC08)の好燃費も実現。環境性能も含めて”いま”にぴったりなモデルである。
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