■正直、次元が違う仕上がりのコンプリートカー
3年前に発売されたホンダ軽スポーツのS660をベースとして、国内最高峰レース「スーパーGT」でもお馴染みの「Modulo」(モデューロ)が仕上げたコンプリートカー、それが「S660 ModuloX」です。これは本当にスゴイ。断然楽しい。正直、この感激レベルはどんな高級スポーツカーよりも鮮烈だったかもしれません。
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ハンドリングがズバっとキマる。思ったようにラインをトレースする。鼻先がグイグイとコーナーの先に差し込まれて行く。まるで地を這うように、タイヤが路面を掴む。すべての挙動、そしてドライバーにもたらされるインフォメーションが、軽自動車という枠を越え、生粋の“ピュア・スポーツ”に昇華しているのです。
ちょっとコレは次元が違う。ベタ褒めで申し訳ないのですが、正直、褒めるしか出来ないくらいです。こんなに楽しいクルマなら、小鳥の餌入れほどしか用意されていない収納スペース(しかも取り外したキャンバストップ入れたら終了)だって、走りのためには仕方ないと思える…かもしれません。
そもそも、Modulo(モデューロ)は、ホンダの純正アクセサリーブランドです。1994年にアルミホイールブランドとして発足し、現在はS660以外にも沢山のモデルに適合するエアロパーツやその他アフターパーツを開発しています。
そのモデューロを擁しているのが、ホンダの連結子会社であるホンダアクセスという会社。この会社では、モデューロ以外にもギャザズという純正ナビゲーション&オーディオシステムなども手掛けているのですが、連結子会社ということで、ホンダ本体との関係が非常に密であり、在籍するエンジニアもまた、以前、本社側で開発に携わっていたような方も非常に多いのが特徴です。ですから、まさにモデューロは、ホンダ車を知り尽くした上で、ホンダ本体に出来ないことをやれる、いわば公式チューニング会社だといえます。
そのモデューロがコンプリートカーシリーズとして発売しているのが「ModuloX」シリーズ。現在ラインナップしているのは、ステップワゴン、フリード、そしてS660の3車種(かつてはなんと、N-BOXやN-ONEも存在していました)。
モデューロがこの「ModuloX」に求める性能は、車種やボディータイプを問わずに3つあります。
(1)意のままに操れる操縦性
(2)所有感を満たし、機能に繋がるデザイン
(3)視覚、触覚、乗り味にまで追求した上質感
実は、発売当時からS660にはたくさんのModuloパーツが用意されてきました。今回のS660 ModuloXにも、そんな既存のパーツが沢山使用されています。それでは、“単品”と“コンプリート”の差とはなんなのか。キーワードは“空力”でした。
■接地感のベンチマークは「NSX タイプS」
今回、S660 ModuloXには、新たなエアロパーツが導入されています。グリル一体型のフロントバンパーは、専用のLEDフォグランプまで備えてカッコイイ! さらに、リアには速度に応じて開閉する、可動式のアクティブスポイラー(従来品)に、S660 ModuloX専用でガーニーフラップが装着されました。
「え? エアロだけでそんなに空力が違うの?!」っていうくらいに効果抜群なんです。
試乗にはクローズド・コースをご用意いただき、特別にノーマルのS660と、S660 ModuloXに、前だけノーマルのバンパーを備えた特別仕様を用意いただいたのですが、この2台「こんなに曲がらないの?」と体感。そもそもこのS660というクルマ、ノーマルですら、発売されて3年という年月を経てなお、今乗ってもとても素晴らしいライトウエイト・スポーツカーなのです。
しかし、S660 ModuloXは、ノーマルの性能を5角形のペンタゴン・グラフで表すとしたら、体感的にさらに一回り大きな性能を出しています。
つまり、ノーマルでも充分に優れた、「走る・止まる・曲がる」の性能が、さらに引き上げられ、ただでさえ高い基礎体力を増強しているイメージです。具体的には、クローズド・コースの走行において、全コースをひとつ上のギア(=高い速度域)で走破出来たのですから。
そして、バンパーだけをノーマルに移管したものに関しては、鼻先がコーナーに入って行かないので、自分でステアリングを余計に切り足さねばならず、結果オーバーステア気味になって自分が疲れてしまう、の連続でした。
今回、S660 ModuloX開発責任者である松岡靖和氏にその秘密を聞いてみたところ、「この接地感のベンチマークは、かの『NSX タイプS』なんです。あの接地感を実現するために、徹底的に空力を磨きました」とのこと。
実はノーマルでは、ルーフの切れ目のあたり、エンジンフードの上、リアウインドウのあたりの形状が、乱流を生み、ややリアがリフトするのだそう。それを抑え、前後リフト値を均等に近づけるためにガーニーフラップを作ったのだとか。
さらに、このコーナリング性能を支えるのが、サスペンションです。元々S660発売当時からモデューロで用意されていたサスペンション自体が、まさにヨーロピアンなものでした。“カタ柔らかい”とでもいうのでしょうか、コシはあるのにガツガツしておらず、ロールを生かしてコーナーを攻め、細かな荒れは飲み込むという絶妙セッティング。
しかし、今回S660 ModuloXにはその持ち味を生かしながら、さらに減衰を5段階に調整できるという機能が加わり、これがまた秀逸なのです。
■ノーマルに比べかなり高価だが販売は上々
クローズド・コースでのスポーツ走行では一番カタいセッティングで走行したのですが、カタくしてもなおしなやかで、しかしふらつきはゼロ。一般道も走行しましたが、そのときは中間の3で走行。これもまったりしつつ、抑えるところは抑える、まるで敏腕営業マンみたいな落としどころです。
もちろん、「止まる」の要、ブレーキもドリルドタイプのディスクローターを使用し、全域でコントローラぶるな性能だけでなく見た目もカッコイイのです。
ノーマルのαタイプよりもプラス66万4200円と、なかなかに高価ですが、販売は上々だそうです。さらに言うなら、S660 ModuloX、コンプリートを買わずに一つ一つ別に買って装着したら、なんと総額+110万円。実はS660 ModuloXは超オトクな設定なので、一考の価値があります。
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