『ベストカー』本誌6月10日号の大特集「噂の深層」が好評を集めている。しかしその中で「信じる信じないはアナタ次第です!」などとも言ってられない、非常に気になる話題がある。N-BOXやセレナ&ノートe-POWERがなどが売れまくっているために、エコカー減税が打ち切られるのでは!? という噂だ。
新車購入を考えている人にとっては死活問題にもなりかねない話。だがこの噂、よく見てみると、税金や売り上げのために自動車ユーザーをないがしろにしてるんじゃないの!? と勘ぐりたくなるような、国や自動車業界の思惑までもが見えてくる。
文:渡辺陽一郎、ベストカー編集部
写真:shutterstock.com、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2018年6月10日号
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■エコカー減税の基準変更は「さらなるエコな車両販売促進のため」?
2018年度に入って新しいエコカー減税が施行され、4月1日に自動車取得税、5月1日には自動車重量税の減税率が変更された。全般的に減税率が前年度よりも下がり、増税された車種が多い。
経済産業省に減税率を下げた理由を尋ねると「今は新車として売られる自動車の約80%がエコカー減税車になった。さらに燃費のよい車両の販売を促進するため、減税率を見直した」という。その背景には減税率の大きなハイブリッド車をはじめ、N-BOXやセレナ&ノートe-POWERなどの販売台数が多く、エコカー減税の源資が逼迫している現状がある。
軽自動車のなかでも抜群の販売力を見せるN-BOX。販売台数は2位のスペーシアを大きく引き離し2万6259台(スペーシア1万8711台、2018年3月データ)。売れる理由は「よくできているから」!
そもそも今の自動車税制は根本的な問題を抱える。それはエコカー減税の対象になる自動車取得税と同重量税が、すでに課税する法的根拠を失っていることだ。
■エコカーが売れても売れなくても国が儲かる!?
自動車取得税、同重量税、ガソリン税(ガソリン1Lのうち53.8円は税金だ)などは、道路の建設や整備に使うための税金として、1950~1970年代に創設された。
ところがこの道路特定財源制度は2009年に廃止され、今では自動車取得税や同重量税は税金として成り立っていない。それなのに一般財源に変更して徴税が続いている。「自動車が走る道路を造るので、自動車ユーザーから税金をいただきます」といって徴税を始めながら、今ではほかの用途に使っているのだ。
それを丸め込むために開始したのがエコカー減税だ。自動車取得税と同重量税の徴税を続ける代わりに、エコカー減税を実施して、新車購入時の税金を減額する(免税車の一部は、初回車検時の自動車重量税も免税になる)。今は新車として売られる車両の80%が減税車で、ハイブリッドは大半が免税だから、自動車取得税と同重量税を存続させても自動車業界はさほど困らない。エコカー減税は、税金が欲しい国と、新車を売りたい業界が結託して作った都合のよいシステムだ。
犠牲になるのは自動車ユーザーで、エコカー減税車を買っても、その後は自動車重量税を徴収される。自動車業界は新車が売れればよいから、購入後の税金には無関心だ。
そして国と自動車業界は、さらに残酷な仕打ちもする。初年度登録から13年/18年を超えた車両の増税だ。小型/普通車の自動車重量税は、13年を超えると139%、18年を超えると154%に達する。自動車税も13年を超えた車両は115%になる。古い自動車を増税する理由も、エコカー減税と同じで環境&燃費性能の優れた車両の普及だが、ユーザーがどのような理由で13年、あるいは18年を超えた車両を使っているのか、国や自動車業界は考えたことがあるのだろうか。
増税に苦しんで新車を買えば業界が儲かり、増税を我慢すれば国が潤う。自動車は困っている人たちを助けるためのツールだが、税金ではまったく逆の作用をしている。
■噂の真相:
「出すのは渋り、取れるところからは取る」が財務省の方針。自動車ユーザーとして反対するところは反対し、受け入れるところは受け入れ、意思表示をすることが大切
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