■軽自動車でも200万円時代が到来!?
一昔前まで「お買い得だから」という理由で売れていた軽自動車ながら、今や「軽自動車でも200万円時代」と言われるほど、売れ筋の軽自動車は普通車のコンパクトカーより割高になっています。なぜ高くなってしまったのでしょうか?
最近の軽自動車が大きく見えるのはなぜ? 売れ筋ジャンルの変化が軽自動車の大型化を促進させた?
昨年ベストセラーとなったホンダ「N-BOX」の場合、1番安いグレードで131万5440円。しかし実際に購入されている多くのグレードは、電動スライドドアなどに代表される便利装備や、自動ブレーキやサイド&カーテンエアバッグといった安全装備が付くモデルで、車両価格は軽く200万円に迫ってしまいます。
1300ccエンジンを搭載し、燃費は同等で軽自動車よりも走行性能が優れている普通車(白ナンバー)のコンパクトカー、ホンダ「フィット」と比べてみると、高額なのがわかります。売れ筋の「フィット 13G・L Honda SENSING」は、自動ブレーキもサイドカーテンエアバッグもついて、165万円です。
とはいえ、軽自動車全体が高くなったわけでもないのです。そもそも軽自動車の価格自体は上昇しておらず、むしろ安くなっています。例をあげれば、平均初任給が19万3千円だった1993年(2017年は20万5千円)に販売されていたホンダ「トゥデイ」の最廉価グレード「Mi」(AT車)の新車価格は85万円。当時の軽自動車、エアコンこそ付いているものの、パワステやパワーウィンドウなどはオプションでした。
そう考えると、現在の軽自動車は当時より圧倒的に安いです。ダイハツ「ミラ・イース」のスペックを見ると、運転席+助手席エアバッグや横滑り防止装置が標準装備。AT(オートマチックトランスミッション)にしても一昔前の3速タイプからCVT(無段変速機)にグレードアップ。ボディサイズも当時より一回り大きくなり、燃費も2倍という大進化ぶりです。しかし、税抜きなら「ミラ・イース」の価格は78万円となっています。
このように車両の基本部分の価格は高くなっていないのです。ではなぜ購入時は高くなってしまうのでしょうか? 「売れ筋軽自動車>普通車」という車両価格の逆転現象について、ホンダの国内販売担当部門に聞いてみると理由は簡単ではないようです。
前出のホンダ関係者は、「お買い求めになるユーザーのリクエストに答えていくと、どうしても価格が高くなってしまいます」。
確かに「N-BOX」を見ると、そもそも通常のヒンジドアでなく、原価の高いスライド式。加えて海外ならVIPカーの装備である電動開閉機能をユーザーは求め、手動開閉式のドアはまったく人気がないようです。
シートも一昔前なら軽自動車はビニールでも良かったはずですが、今ではベーシックなグレードですら上質のモケットを採用。同じく様々な部分に鉄板が見えていたインテリアは、今やフルトリム化されています。
最近のユーザーは「軽自動車に最上級モデルの仕様を求める」というのです。これらの要望を加えていくと「N-BOX」の131万5440円というスターティングプライスになるのも納得できます。
興味深いことに最近の販売状況を見ていると、78万円で買える「ミラ・イース」より、快適や安全装備をフルにつけると200万円近い「N-BOX」の売れ行きの方が圧倒的に良い。当然ながら自動車メーカーもユーザーのニーズにあったゴージャスなクルマを作るため、結果的に軽自動車の価格はドンドン上がっていくということになるのです。
もちろん自動車税に代表される税金や、任意保険などのランニングコストの総計が普通車に比べ、年額で3~4万円安いということや、コンパクトで取り回しの良いボディサイズなど、日本では軽自動車が高くなっても売れる大きな理由はたくさんあります。
今後も軽自動車の価格はジワジワ上がり続けていくのでしょうか。軽自動車の価格を決めるのは、実は多くの要望を出すユーザーなのです。
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