現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > あなたは「スピードへの情熱」があるか?クルマを操縦する楽しみや喜びの本質

ここから本文です

あなたは「スピードへの情熱」があるか?クルマを操縦する楽しみや喜びの本質

掲載 更新
あなたは「スピードへの情熱」があるか?クルマを操縦する楽しみや喜びの本質

過日。いつものように17時には下請奴隷原稿仕事を終えた自分は、日課である「5ちゃんねるの現行スバルXVスレッドを読み込む」という高尚な作業に没頭した。

その日のスレッドでは、どなたかがXVの「Sモード」に関する議論を提起しようとしていた。それを読んだ自分は「ふむふむ、なるほどぉ」などとひとりで間抜けた相槌をうっていたのだが、相槌をうちながら、ふと気がついた。「そういえばワシ、最近まったくSモード使ってないじゃん。ていうか、その存在自体を忘れてるじゃん!」と。

幸せとは何か?高級輸入車など要らん!と言っている私が考える幸せの定義

加齢は確実に「スピードへの情熱」を失わせる

賢明なるCL読者諸兄には今さら説明の必要もなかろうが、近年のスバル車には「SI-DRVE」なるからくりが付いている。XVの公式サイトから引用するなら、「気分やシーンに合わせて走行性能を使い分けられるSI-DRIVEを搭載。穏やかな出力特性によって燃費に配慮した運転ができるインテリジェントモード(I)と、リニアで気持ち良い加速を愉しめるスポーツモード(S)から選べます」というモノだ。

「Sにするとパワーアップする」というよりは「本来のパワー&トルクがフツーに発揮される」という感じで、「I」を選ぶと燃費重視のまったり系加速になる。デフォルトはまったり系の「I」だ。

で、自分は昨年末にXVが納車となった直後は「それぞれのモードで加速感はどう変わるのか?」みたいなことを、さまざまなシチュエーションでひたすら検証していた。そのほか、スバルユーザーの間で伝統的に行われている「アクセルペコペコ」なる術もしばしば行ってみた。

しかしあれから幾星霜……ってほどでもなく3カ月。気づいてみれば自分のXVは完全に「I(インテリジェントモード)」に入れっぱなしで、前述のとおり「S(スポーツモード)」は存在それ自体を忘れていたのである。

これが意味するところは、大きくわけて2つあるはずだ。

ひとつは自分の「加齢」である。

若い頃は「何人(なんぴと)たりともオラの前は走らせねぇ!」ぐらいの勢いで爆走もしていた自分だが、今や加齢によりそういったスピードへの情熱は完全に失せ、ついでに動体視力の低下と老眼も進んだため、まったくもって飛ばす気になれない。同乗者がいる場合はもちろん、自分ひとりであっても基本的には「あ、お先にどうぞ。僕ぁ僕でのんびり行きますんで」ぐらいのノリで運転している。

それゆえ「S」の存在が忘却の彼方へと吹っ飛んでしまったのだ。だって、のんびりと(というか普通ぐらいのペースで)走る分には「S」なんてうるさくて、燃費が悪くなるだけですから……なんて言ってる時点で確実に中高年世代バリバリ全開な自分であるわけだが。押忍。

「操縦を楽しむ」という行為と「速度」に直接の関係はない

そしてもうひとつが、ここCLで繰り返し言っていることではあるが、「時代のムード」の影響を色濃く受けているからであろう。

サーキットではない公道でぶっ飛ばす者は昔から阿呆に見えたものだが、ここ数年でその「阿呆に見える度」は著しく上がっているように思える。それが、今という時代だ。少なくとも日本では。

そして人は誰しも「なるたけ賢い、知能指数の高い人間だと思われたい」という欲があるため、現代の路上では大半の者が速度を抑制しつつ走っている。いまだに高速道路で右へ左へとダブルレーンチェンジをカマしながら爆走しているのは、ごく一部の●●●ユーザーと●●●●●●ユーザーぐらいのものであろう。

このこと……つまり自分の加齢問題と、日本国という国民国家自体の成熟というか老化が良いことなのか悪いことなのか、浅学非才な自分にはわからない。わからないが、とにかく目の前にある現実を受け入れながら生きていくほかないのが人の生である。

ということで自分は、自分と国家の老化をコンプリートリー受け止めつつ、法定速度とか、せいぜい法定速度+αぐらいのニュアンスで日々ゆるゆると走っている。

すると、若い頃には(阿呆なため)気づかなかったことに気づくようになった。

それは、「クルマを操縦することで生まれる感動というか喜びに、特段のスピードは必要ない」ということだ。そうではなく、操縦の感動とはただただ、自分の意図したほぼそのとおりの動きをクルマがしてくれたときに生まれる。高速域でそれが起こったときのほうがそりゃ楽しいのだろうが、低中速域でそれが起こっても十分楽しいのである。そのことに、阿呆な自分は今さら気づいたのだ。

「速度を下げる」という決定的な問題解決法

その意味で自分が今乗っている現行スバルXVというクルマが、ある種の人間(例えば筆者)からは「最高だぜ!」と絶賛され、またある種の人間からは「シャーシはいいんだけど、パワートレインはゴミだな」とボロクソに言われる現象もよく理解できる。

現行XVを絶賛している自分ではあるが、「XVはすべてにおいて素晴らしい!」とは決して思っていない。確かに、何らかの理由で急加速が必要となる際はCVTが若干かったるく感じられ、上り坂が続くようなシーンで「ターボが付いてりゃなぁ……」と思うこともある。

そしてXVのパワートレインを否定する者らは、なにも200km/hで右へ左へとぶっ飛ばせないからXVを否定しているわけはなく、そういったシーンにおいて、つまり急加速や上り坂などにおいて「自分の意のままに動かないこと」に対して、苛立っているのだ。それは、運転者の心のメカニズムとしてよくわかる。

わかるがしかし、決定的な解決方法もある。XVの、車格からするとやや非力な自然吸気エンジンと、最新の多段ステップATと比べてしまうとややタコなCVTにいっさいイラつかない、究極のメソッドである。

それは「速度を下げること」だ。そして同時に「急がないこと」である。

高速道路の直線では、メーター読みでせいぜい110とか120ぐらいを上限とする(それでも微妙に違法ですが、まぁ細かいことはいいじゃないですか)。急加速が必要となるシチュエーションは極力生まないよう心がける。上り坂では、渋滞を発生させないぐらいのペースを普通に維持するだけで良いと考える。

……たったそれだけのことで、現行スバルXVの(ある意味での)欠点はほぼすべて雲散霧消し、「意のままに動く素晴らしいシャーシ」という圧倒的な美点だけが浮かび上がるのだ。

これを、「老化が進んだ中高年ドライバーのしょぼい意見」と思うだろうか?

それを否定はしない。ある意味そのとおりだ。

しかし時代は明らかにこういった傾向を志向しており、そしてその後に、いつになるかは知らないが「自動運転」の世界がやってくるはずなのだ。

「だからその前に存分にぶっ飛ばしておきたい」という情念がもしもあるなら、それもいいだろう。しかし自分は、そのお仲間に入りたいとはまったく思わない。

[ライター/伊達軍曹]

関連タグ

こんな記事も読まれています

井戸田潤ウキウキ!最新シビック タイプR試乗も……予想不可能のトラブルに困惑!?
井戸田潤ウキウキ!最新シビック タイプR試乗も……予想不可能のトラブルに困惑!?
グーネット
マツダの儚きクーペ「エチュード」を知ってるか? たった3年で消えていった理由はなんだったのか?
マツダの儚きクーペ「エチュード」を知ってるか? たった3年で消えていった理由はなんだったのか?
ベストカーWeb
高さ約50m!上信越道にそびえる巨大岩撤去の“現場”を公開! NEXCO東日本
高さ約50m!上信越道にそびえる巨大岩撤去の“現場”を公開! NEXCO東日本
グーネット
アウディ「A1スポーツバック」シックで都会的なルックスの限定モデル登場!
アウディ「A1スポーツバック」シックで都会的なルックスの限定モデル登場!
グーネット
電気自動車を買って試す本音レポート リアルEVライフ[電費を計測する]の巻
電気自動車を買って試す本音レポート リアルEVライフ[電費を計測する]の巻
グーネット
レクサス「LM」6座仕様車を追加 3列目もラグジュアリーな空間に
レクサス「LM」6座仕様車を追加 3列目もラグジュアリーな空間に
グーネット
2車線の片側が突如右折レーンに! 富士見川越バイパスの終点はなんであんなに残酷なのか?
2車線の片側が突如右折レーンに! 富士見川越バイパスの終点はなんであんなに残酷なのか?
ベストカーWeb
なんちゃってセレブが「核融合科学研究所」へ大人の社会科見学!「核融合」は原子力発電の「核分裂」とは違うのよ~
なんちゃってセレブが「核融合科学研究所」へ大人の社会科見学!「核融合」は原子力発電の「核分裂」とは違うのよ~
Auto Messe Web
【24’ 5/7最新】レギュラーガソリン全国平均価格は174.7円 2週ぶり値下がり止まる
【24’ 5/7最新】レギュラーガソリン全国平均価格は174.7円 2週ぶり値下がり止まる
グーネット
鈴鹿で19台が参加しGT300専有テストがスタート。初日はmuta Racing GR86 GTが最速
鈴鹿で19台が参加しGT300専有テストがスタート。初日はmuta Racing GR86 GTが最速
AUTOSPORT web
【GT300開幕戦レビュー&シーズン展望】一歩抜きん出た印象のブリヂストン。最適解は交換か、無交換か
【GT300開幕戦レビュー&シーズン展望】一歩抜きん出た印象のブリヂストン。最適解は交換か、無交換か
AUTOSPORT web
アイルトン・セナのMP4/4がマクラーレン720S GT3で蘇る。ラグナ・セカに没後30年追悼リバリー登場/IMSA
アイルトン・セナのMP4/4がマクラーレン720S GT3で蘇る。ラグナ・セカに没後30年追悼リバリー登場/IMSA
AUTOSPORT web
好感度クラスNo.1! アウディA3 スポーツバックへ試乗 小改良 見違えるほど変わった車内
好感度クラスNo.1! アウディA3 スポーツバックへ試乗 小改良 見違えるほど変わった車内
AUTOCAR JAPAN
負傷のハプスブルク、WECスパでの復帰叶わず。グーノンがふたたびアルピーヌA424をドライブへ
負傷のハプスブルク、WECスパでの復帰叶わず。グーノンがふたたびアルピーヌA424をドライブへ
AUTOSPORT web
4児の父「杉浦太陽」、新車で買った「高級ミニバン」初公開! 「すごく乗りやすくて…」全貌を明かし「カッコイイ!」「好感持てる」の声集まる
4児の父「杉浦太陽」、新車で買った「高級ミニバン」初公開! 「すごく乗りやすくて…」全貌を明かし「カッコイイ!」「好感持てる」の声集まる
くるまのニュース
世界戦デビューの地でエルラシェールが復活。リンク&コーが週末完全制覇を達成/TCRワールドツアー第2戦
世界戦デビューの地でエルラシェールが復活。リンク&コーが週末完全制覇を達成/TCRワールドツアー第2戦
AUTOSPORT web
レッドブルF1代表、フェルスタッペンの契約にニューウェイに関する条項はないと明言
レッドブルF1代表、フェルスタッペンの契約にニューウェイに関する条項はないと明言
AUTOSPORT web
リスクはある? サイバーセキュリティ規制、非対応車は「脆弱」なのか 一部地域で販売継続
リスクはある? サイバーセキュリティ規制、非対応車は「脆弱」なのか 一部地域で販売継続
AUTOCAR JAPAN

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

220.0295.9万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

86.0289.5万円

中古車を検索
XVの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

220.0295.9万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

86.0289.5万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村