「インにつくのが早すぎる」「ブレーキはもっと奥でも間に合う」「アクセルをもっとしっかり開けなくちゃ」。
後ろを追いかけて走るだけで、自分の走りの改善点がわかって、みるみるうちに上達していくではありませんか! 前を走って走行ラインやブレーキングポイントを教えてくれているのは、なんと豪華なことか! 世界最高峰ロードレース MotoGPを目指し、19年シーズンからFIM CEV REPSOL Moto2 ヨーロピアンチャンピオンシップに参戦中の石塚健(いしづか たけし)選手。世界で活躍する現役バリバリのレーシングライダーです!!
ヤマハ「YZR750」 ロードレーサー2スト最大排気量のモンスターマシン
走っているのは1周2436mのテクニカルコース、袖ヶ浦フォレストレースウェイ(千葉県袖ケ浦市)で、乗っているバイクはボク(青木タカオ)がヤマハの最新モデル『YZF-R7』、石塚選手が『YZF-R3』。689ccと320ccですから、じつに倍以上の排気量を持つマシンにボクは乗っているわけですが、ライディングの技量は言うまでもなく雲泥の差。走りを教わるには“ちょうどいい”感じです。
ちょうどいい感じなのは、ひとつにまず石塚選手のおかげ。予めコースインする前に、「後ろを走ってライディングを学びたいので、ゆっくり前を流してください」とお願いしておきました。これが絶妙。正直なところ、ついて行くのが精一杯で、ボクが引き離されそうになると少し待っていてくれるという、自分が腕を上げるには最適なペース。石塚選手に感謝感激なのでした。
そしてもうひとつ“ちょうどいい”のは、ボクがいま乗っている『YZF-R7』。こうやってスポーツライディングを学ぶのにうってつけで、これがアンダー400ccクラスのエントリーモデルだと装備が不十分に感じ、本格的にサーキットを走り込むには少し不安があります。
「ならば、中古の600ccスーパースポーツを選べばいいのでは?」という意見もあるかと思いますが、見た目の“カッコよさ”はとても重要で、現行モデルでないとSSの場合は満たされにくい。『YZF-R7』は最新の『YZF-R1』や『YZF-R6』と共通の「R-DNA」デザイン。ひと目でスーパースポーツとわかるデザインが、自分の評価基準にある“カッコイイ”を満たし、しっかりと合格点なのです。
見た目だけで、そもそも自分のライディングスキルでは扱いきれていないのでは、カッコよくありません。“カッコイイ”ってことは、バイクを自在に操っているかどうかってことも含まれます。
そこでもっと上手くなりたいと考えますが、自分が持つ技量の限界ギリギリ、時には限界を越えていくこともあるのがサーキットでのスポーツ走行です。それは自らへの挑戦であり、上手いか下手かなどレベルは問いません。誰もが自分の限界へ挑戦していくとき、装備面が乏しいと不安でしかありませんし、そもそもチャレンジ精神など持てないでしょう。
その点、『YZF-R7』はインナーチューブ径41mmの倒立式フロントフォークにラジアルマウントキャリパーがセットされ、ラジアルマスターやアシスト&スリッパークラッチなど装備面も申し分なし。オプションでクイックシフターも追加でき、スポーツ走行する性能が担保されているのです。
そしてなによりも、フレンドリーで扱いやすいのが嬉しい。『MT-07』譲りのCP2エンジンは充分にパワフルで、270度クランクの並列2気筒はトラクション性能に優れ、アクセルを積極的に開けていけます。
もし、中古の600ccスーパースポーツを選んでも、ハードルはかなり高い。結果的に自分はサーキットに向いていない。ロードスポーツに乗るのは下手がだから、もう挑戦するのはやめようと、このカテゴリーから離れてしまう、成長することを諦めてしまうかもしれません。
石塚選手が加速すれば、ボクもためらうことなくアクセルを開けられ、直線部分で回しきれる楽しさが味わえます。低速からの加速感がしっかりあり、コーナーでは歯を食いしばるのではなく、車体を寝かすことを楽しみつつ、いかにアクセルを開けて立ち上がっていけるか、意識が研ぎ澄まされます。
同じコーナーでもさっき走ったときより、車体がより深く寝てヒザをする時間も長くなっていく。これがベストなのかどうかはさておき、コーナリングがもう楽しくて仕方ありません。直線でも周回する度に速度が上がって、ブレーキングもより奥になっていく。『YZF-R7』とともに、自分の成長がどんどん感じられるのです!
そもそも「YZF-Rシリーズ」はヤマハスーパースポーツの代名詞で、1998年に初代『YZF-R1』が誕生したときは「セカンダリーロード最速」をキャッチコピーに掲げ、それはいま考えるとかなり過激なもの。
当然ながら上級者向けで、時代の経過とともに「ハイパフォーマンスを楽しむにはサーキットにいきましょう」となり、開発コンセプトは公道最速からサーキット最速へと移り変わっていくのでした。
99年登場の『YZF-R6』と2本立てだったところに、2015年には『YZF-R3』『YZF-R25』というエントリーユーザー向けのモデルが追加されます。スポーツライディングの世界の間口を広げ、次世代のユーザーを引き込もうという狙いがありました。
公道にせよ、サーキットにせよ、“最速”を目指すというのですから、Rシリーズのターゲットはエキスパートライダーがメインでしたが、R3とR25の登場で「YZF-Rシリーズ」が大きく成長しようという時期だったことがいま振り返るとわかります。
そして『YZF-R7』が登場した今、Rシリーズ共通の役割はなにか? ヤマハ発動機の今村充利さん(プロジェクトリーダー)はこう教えてくれます。
「従来はサーキット最速を目指すスーパースポーツという位置づけでしたが、最高の“楽しさ”ですとか、“速くなりたい”といったライダーのシンプルな欲求に常に寄り添えるシリーズへ、いろいろな成長段階に合わせたオートバイでありたいと考えています」
スポーツライディングを追求しようと成長していく過程で、「YZF-Rシリーズ」はともにスキルアップしていける身近な存在となってくれるというわけです。つまり、R25やR3からスタートし、R7でさらに成長。そしてR6やR1へと段階的にステップアップしていけるシリーズ、ファミリーへと飛躍したのだとボクは解釈します。
『YZF-R7』をラインナップに加え、より強力となったRシリーズは、サーキットでのスポーツライディングの醍醐味を多くの人に教えてくれるに違いありません。
■ヤマハ『YZF-R7』価格:99万9900円(税込) 105万4900円(税込)WGP60thモデル発売日:2022年2月14日 2022年3月14日WGP60thモデル
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