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【激辛評価は愛の証!?】 超辛口評論家が選ぶ「バツ」なクルマ 「マル」なクルマ

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【激辛評価は愛の証!?】 超辛口評論家が選ぶ「バツ」なクルマ 「マル」なクルマ

 各自動車メディアで辛口なクルマ評価を見せている自動車評論家の岩貞るみこ女史。

 しかし、そんな「辛口評価」のウラには確固たる信念も見え隠れします。

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 今回そんな岩貞氏に「辛口な評価になるワケ」と、今「ダメ!」&「イイ!」と感じているクルマについて語ってもらいました。

●岩貞 るみこ…自動車評論家、ノンフィクション作家。ホンダを退社後、自動車評論、またエッセイストとして活動。救急医療関連書なども出版している。オフィシャルサイトはこちら。

※本稿は2019年5月のものです
文:岩貞るみこ/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年6月26日号

■辛口になるには理由がある

 クルマは開発者の愛情が注ぎ込まれているし、今の時代、技術は素晴らしいし、ダメなクルマなんて一台もない。だから、全部「好き好き素晴らしい!」って原稿になっちゃう。

 でも、読者が文章を読んで、あー、楽しかったという読後感だけでいいなら別だけど、ユーザーは購入時の参考にもしますよね。なのに、褒めまくっているだけじゃ、役に立たないじゃないですか。

 ある時、掃除機を買いたくてネット上で調べたら、あらまあ、署名原稿は軒並み、セールスポイントを軸とした褒めちぎりの文章ばかり。ねえ、つまりその掃除機っていいの、悪いの? どっちなの!

 これはいかん。それ以降、いいものはきちんと褒めるけれど、ダメなものはダメと心を鬼にして(!)意思表示するようにしています。

 開発者に、ここなんとかしてねって意味も込めて。愛の鞭です。評価基準ですか? クルマが人生を豊かにすると信じている私の価値観です。いけないかしら?

■辛口な評価にならざるを得ない「×(バツ)」なクルマ ワースト5

 1台めは、クラウンです。走りはめっちゃいいんですよ。ドヘタな私が運転しても、とても素直に走るし、乗り心地もジェントル。

●「運転席周りの操作性がひどい!」 トヨタ クラウン

走りは快適性と操縦性を高い次元で両立しているが……


 男性のクラウン好きの間からは不評の声が漏れ聞こえてくる(気のせい?)デザインも、私、評価していましてよ。だってオヤジ臭がとれて色っぽいんだもの。

 だけどね。運転席周りのインテリアがね。ひどすぎです。悪の元凶は、2画面あるカーナビ。せっかくふたつあるくせに、同じ画面しか表示できないってどういうことよ?

 フロントウィンドウからの視線移動を短くするため? だったら、ひとつ目をその位置に置けばいいだけじゃん。

インパネセンターに2画面ナビを採用

 まさに無駄。ってか、ふたつになったために逆に使いにくいし。クラウンの購買層は、年齢高めだから、使いにくい操作系は致命的。運転に集中できなくて事故ったらどうするのよ。

 こんな中途半端なものを商品としてお客様に売り出す側の気が知れない。運転席周りは、だれがなにをどうするとこれでよしと言えるの? ってポイントがそこかしこにあるし。顔を洗って出直してこい! と、心から言いたいです。

 2台めは、クラリティです。もうね、このクルマ、論外だと思います。価格は約588万円。なのに、内装のちゃちさといったら。

●「588万円と思えないほど内装はチープ」 ホンダ クラリティ

クラリティPHEVは588万600円。クラウン2.5の上級グレード並みに高価

 588万円のクルマが買える人が、ふだん家でどういうものに囲まれて生活しているか少し調べたらわかるでしょうに。PHEVの技術はいいんでしょう。走りもスムーズです。

 充電するのに相変わらずコードが重くて面倒くさくて、私など絶対に充電しようって気にはならず、おそらくず~っとHV状態で走ってPHEVの性能の半分も謳歌できないとは思うけれど、それでもPHEVは次世代につながる技術だとは思います。

 でもね、我々が乗るのは技術じゃなくて、く・る・ま。一台のクルマとして選びたいわけです。

 なのに、500万円以上払って、どうして乗り込んだ時に毎回、貧乏臭さを突き付けられなければいけないのか。ホンダに足りないのは、だれにどこでどう乗ってほしいのかって想像力。少しでも働かせたら、こんなことにはならないでしょうよ。

 3台めは、リーフです。航続距離、伸びましたよね。乗り心地もモーターの加速もスムーズだし、静かだし、下半身が安定した走りも悪くありません。だけどやっぱり、航続距離には不安だらけです。

●「航続距離は伸びたけど中途半端!」 日産 リーフ

高性能版の「e+」は航続距離458kmを誇るが…

 今の時代、内燃機関(HV含む)の燃費はすこぶるよくなっていて、ワンタンクで楽に800kmくらい走ってくれちゃいます。

 なのに、電気自動車でどこかに行こうとした時の、どこまで走れる? という胃がめくれる感覚は、どうしても馴染めません。暖房を使う季節は電力使用量も増えるし、渋滞にはまったら脂汗が出まくりそうだし。

 だってリーフって大きいんだもの。もっとコンパクトならシティユースって気にもなるけれど、中途半端に大きいから、ちょっと遠出も……と甘い罠にはまっちゃう。さらにテレビCMもね。長距離走れますみたいな。過大広告ぎりぎりでしょう!

 4台めは、BMW3シリーズです。ああ、ごめんなさい。いいクルマです。特にボディ剛性とサスペンション。超絶いいです。ここ、きちんと褒めます。私が納得できないのは、その横幅です。1825mmってあなた。

●「先代は日本専用の全幅だったのに!」 BMW 3シリーズ

先代の全幅は日本専用に1800mmに抑えていたが、現行型では1825mmに拡大

 BMWは世界戦略車らしく、世界各国の意見を参考にしていて、特に日本は販売台数こそ多くないけれど、意見は貴重だといっていわゆる聞く耳を持ってくれている……はずだった。

 だから先代は、日本人が横幅が大きいのをいやがると知り、ドアハンドルを専用設計にして本国仕様よりも11mm狭めた1800mmで作ってくれていたはずなのに。

 なんで新型は一気に25mmアップなのよ。BMWって都会で売れているはず。ビジネスマンに仕事で向かった先の機械式駐車場で右往左往させている場合じゃないでしょ。

 心配なのは今後の展開。今回のこれを許してしまったら、今後もっとデブになっていくんじゃないの? 私としては国民全員に呼びかけて阻止したいところです。

 最後の5台めは、レンジローバー イヴォーク コンバーチブル。「コンバチ」というレアなクルマをわざわざ持ってきたのには訳があります。

●「冬のオープンドライブが寒すぎる!」 ランドローバー レンジローバー イヴォーク コンバーチブル

コンバーチブルは開口部が大きいためか、冬に屋根を開けて走ると足元の暖房が効きがあまりよくない

 憧れのオープンカー。しかも、ゴージャスなイヴォーク。それはもう夢の世界に近く、一度乗ったら脳内がお花畑になり私だって評価は★5つ……のはずだった。でも、あいにく、私が試乗したのは1月の酷寒の日だったんですよ。なにが起きたかというと。

 寒い。

 そりゃ、屋根が開いていたら寒かろうと思うなかれ。違います。オープンカーのいいところは、頭や顔は確かに外気にさらされてひんやりするけれど、腰から下は、エアコンをMAXにして温めた空気でぬくぬくで、そう、頭寒足熱の温泉ワールドが広がること。

 だけど、イヴォーク コンバチは違うんですよ。風呂の湯船となるボディが大きすぎて、屋根を開けたまま走ると、外気が車内に入り込み、温めた空気を根こそぎ吹き飛ばしてしまうんですよ。

 全然あったまらない! これで長距離とか、絶対に行きたくない。これはコンバチ界の大誤算といえるでしょう。

 新型イヴォークがお披露目されて、もう少ししたら日本にも導入されるけれど、寒いコンバチ状態は改善されないんだろうな。残念です。

■辛口な私でも褒めたくなる!「○(マル)」なクルマ ベスト5

 ○なクルマのトップは、ジムニーでしょう。やたら楽しい。野性味あふれるデザインだけでハートを撃ち抜かれるし、運転席によじ登るように座ったら、その高い視点からの風景に体温が上がります。

●「野性味あふれるデザインも振動の伝わる走りもいい!」 スズキ ジムニー

見た目もよく、走りも「○」なクルマナンバー1!

 走らせると、エンジン音が車内に入り込んでくるし、振動も体にそのまま伝わってくる。クルマを開発する時は、いかに音と振動を制御するかやっきになってお金をかけてあれこれやるけれど、それらをあざ笑うかのように音&振動が楽しさ倍増の効果を発揮しています。

 素っていいなあ。断捨離万歳。しみじみ。となるとこれはぜひ、マニュアルで乗りたいでしょう。過保護にクルマに“走らせて”もらうよりも、自分でギアを選んで速度とトルク感を切り替えていく醍醐味を満喫しないでなんとする。

 ぼーっと生きていた自分に冷水を浴びせ、人生を叩き直してくれます。拝みたいほどありがたいクルマです。

 お次は、カローラスポーツ。世界戦略車ゆえに世界各国で販売しなければならない宿命のため、各国のニーズもあれやこれやとあるでしょうに、それらを最大公約数的に組み合わせ、とにかく乗りやすく使いやすい。

●「乗りやすくて、MTがあるのも○!」 トヨタ カローラスポーツ

オーリスから名前を変えて昨年6月に登場。価格は210万6000円から

 日本人に使いやすいクルマは世界のどこでもOKなんだよ、うりゃ! と、世界中に言って回りたいくらいの完成度の高さです。

 1.2Lターボエンジンのコーナリングの気持ちよさといったらため息ものです。ハンドリングが素直で、たどるべき走行ラインをさりげなく導いてくれる感じ。

 そのとおりに軽くハンドルをあてていくと、気持ちよくコーナーをクリアできている爽快感。お姉さん、惚れてしまいます。一番の評価ポイントは、6MTをラインナップに入れたこと。やっぱりMT。基本のキ、って感じで、これは外せません。

 一方のHVは、ハンドリングの素直さはターボに負けるけれど、燃費がよくて長距離を走っても燃料のメモリがなかなか減らず、ロングドライブの概念が変わりそうです。

 次はデイズ。このところの軽自動車の進化は目を見張るものがあるけれど、いよいよ本気で境界線を越えてきちゃったと思います。

●「軽でも安全装備を充実させているのがいい!」 日産 デイズ

運転支援技術「プロパイロット」も軽初搭載して今年3月に一新

 だいたい、安全技術が高級車からっておかしくないですか? そりゃ、開発したての技術は高価だから価格の高いクルマからっていう企業論理はわかるけれど、本当に必要な人が使えるようにするのが企業の良心ってもんでしょう。

 とはいえ、このところの量産効果とユーザーの意識向上により、軽自動車でもフル装備のありがたさ。ついでに、私が大好きなドクターヘリを呼ぶ「D-Call Net」まで軽自動車初で入れてくれたのも評価高しです。

 インテリアの質感もがんばっているし、こういうクルマを見ているとこの際、日本を走るクルマはすべて軽自動車にしちゃえばと思うほど。日産のテレビCMは文句をつけたいものがあるけれど、デイズみたいなクルマづくりは、「ぶっちぎれ日産」とエールを送りたくなります。

 そして、CX-3。日本を走るクルマを全部、軽自動車にできないとなれば、走りやすいバランス感が一番だと思うのはこのクルマ。

●「トータルバランスでナンバー1!」 マツダ CX-3

昨年の改良で1.8Lディーゼルを搭載

  私の好きなSUVテイストでありながら、全高がほどよく抑えられ、立体駐車場を選ばないし、ガソリンスタンドで洗車する時も普通車カテゴリーでOKというありがたさです。嬉しい。

 デザインは、横のラインも後ろ姿もきれいだし、夜、ライトをつけた姿も色っぽい。インテリアもシックで落ち着くし、乗ってみるとコーナリングで頭が左右にふられにくいスムーズさも大好き。

 ラストの〇は、ボルボXC40。北欧デザインは女性の憧れ。ボルボのデザインは、このところ一気に色気が出てきて、誠実さと清々しさが交わりほんとに居心地がいい。

●「インテリアのデザインも魅力的!」 ボルボ XC40

手頃なサイズのボルボSUVで人気。価格は389万円~

 外観デザインもさることながらインテリアも独特。ユーザーは、中の景色を見ている時間のほうが長いんだから、幸せオーラが出ているインテリアは必須だと思います。

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