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BMW M4 CSLに見る<M>の本気を!日本限定25台の激レア車を公道で試してみた

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BMW M4 CSLに見る<M>の本気を!日本限定25台の激レア車を公道で試してみた

BMWのスポーツ性を突き詰めた存在として、多くの憧れを集める<M>モデル。少数生産の特別な限定仕様車では、注文を受付けてもらうことですら簡単ではないそうだ。今回、幸運にも日本への割り当て台数25台というM4 CSLを取材する機会に恵まれた。(Motor Magazine 2023年6月号より)

CSLとはコンペティション、スポーツ、ライトウエイトの頭文字
サーキットを駆け抜けるマシンの性能はそのまま、ナンバーを付けて一般道も走ることができるのが<M>モデルの素性だ。その中でも「CLS」の名前を冠したモデルは、さらにスポーツ度を高めるためコストを惜しまず軽量化が施され、かつてはレーシングマシンへと昇華されていた。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

今回紹介するのは、最新の(G82)M4 CSLだが、CSLの名前が与えられたMモデルには20年前に登場したE46のM3 CSLがある。量産車として初めてカーボンファイバー樹脂(CFRP)製のルーフを採用し、エアロパーツやエンジンルーム内、インテリアなどにもCFRP素材を多用し、徹底した軽量化とエンジンのパワーアップが図られていた。

さらに遡(さかのぼ)ると、1971年に2ドアクーペ(E9)の3.0CSLが登場、こちらが「CSL」というモデルの元祖となる。このE9は実に美しいクーペで、その後に登場する初代6シリーズの前身になったモデルだ。

20年前のM3 CSL発表時には「クーペ、スポーツ、ライト(軽量)の頭文字を取ってCSLと名付けた」と聞いていたが、今回のM4 CSLの広報資料によると「コンペティション、スポーツ、ライトウエイトの頭文字より名付けられている」と解説されている。

M4 CSLの日本正規導入モデルはわずか25台、ボディカラーは「フローズンブルックリングレイメタリック」の1色だけだ。マット調のカラーで、どこか空軍の戦闘機をイメージさせる。フロントでは両サイド下に付いたスプリッターやキドニー両脇の空気取り入れ口、ボンネット上のペイントされていない部分など、ところどころでCFRPの地肌を見せることで軽量化されたモデルであることをアピールしている。

ボンネット、ルーフ、トランクリッドというボディ上部のパーツが専用のCFRP製に置き換わって重心位置が下がり、加減速だけなくコーナリングなどハンドリング性能に大きく寄与する軽量化が施されている。

キドニーやトランクリッド、フロントフェンダーに付くCSLのバッジは小さいが、その周囲の赤いアクセントカラーが通常のMモデルでないことを強調してくる。

車内は、ほぼレース仕様といえるCFRP製の骨格を持つMカーボンフルバケットシートが目立つ。ドアを開けるとヘッドレスト下のCSLマークが赤く光る。センターコンソールもCFRP製になり、質感の高いスポーティな雰囲気を出している。軽量化のために省かれた後席スペースは主としてヘルメット置き場で、座れるのは前席のみゆえ、乗車定員は2名。

エキゾースト系も軽量化が施されていて、リアサイレンサーはチタニウムでできている。このようにして、M4 CSLは標準のM4クーペに対しての軽量化が達成されており前軸重880kg、後軸重750kgで車重は1630kgだ。前後の重量配分は54対46になり、重心位置は少しだけフロント寄りになっている。

車速が高くない領域では軽い荷重のリアをアクセルペダルによりコントロールし(縦のグリップを使うことで横のグリップを弱めて)曲がりやすくすることができ、ハイスピード領域ではダックテールのトランクリッド形状によりリアに大きなダウンフォースを与えて安定性を高め、トータル性能としてハンドリング性能と走行安定性のバランスをとっているように見える。

本領を発揮させるために順を追って正しく整える
今回、M4 CSLを取材させてもらうにあたり、オーナー氏には「2000kmの慣らし運転が済んでエンジンオイル交換後にお借りしたい」とわがままを言った。 

新車時のエンジンオイルは慣らし運転用で、粘度が低くサラサラ系の仕様なので高回転まで回るが、それゆえトラブルを起こす可能性もあるからだ。通常のBMW車は、初回エンジンオイル交換の基準が15000km走行時なのでオイルの質の心配は要らない。

だがMモデルはサーキット走行対応のエンジンなので、最初はていねいに慣らし運転をした方がいい。 とは言え、2000kmまでの慣らし運転時でもエンジン回転数のリミットは5500rpmなので、通常走行での不自由はない。

エンジンオイル交換後のM4 CSLを借り、オドメーターが2900kmを超えるところまで走った。この時はオーナー氏に頼まれて高速慣らし、つまりエンジンを高回転型にするための手順を踏んでマニュアルモードで走行した。

具体的にはインパネ右下のエンジンオイル温度計が80度C以上を指していることを確認してから、3速以上ではエンジン回転数が3000rpm以下にならないように走る。1速で発進してすぐに2速へ。4000rpm以上に上昇したらシフトアップして3速、というように次のギアへ繋ぐと3000rpm以上をキープできる。

車速が下がっても3000rpm以下にならないよう左手パドルでシフトダウンしていく。ただし2速では低い車速でエンジン温度が上昇するのを嫌うため3000rpm以下も許容される。シフトアップ時はたまに6700rpmから始まるイエローゾーンのそばまで引っ張ってみる。アクセルペダルは徐々に踏み込むていねいな操作だ。

こうして距離を重ねていくと高回転まで回りやすくなっていき、エンジン自らが回りたいと要求してくる感じになる。この状態までくると、エンジンの回転音やエキゾーストノートが綺麗なサウンドへと整ってくる。2250rpmと4500rpmのところで共鳴してやや大きな音になるが、逆にそれを感じられれば、タコメーターを見なくてもおおよそのエンジン回転数がわかるようになる。

4500rpmを超えてから6500rpmまでの直列6気筒エンジンならではの「芯が出た回転」を感じる音と、高回転での滑らかなバイブレーションが気持ち良い。取材に同行したX4 Mコンペティションも、この回転上昇時のサウンドと芯が出て振動が小さくなっていく様子は同じだ。ただM4 CSLの方がドライバーの近くにエンジンがある感じだ。音の大きさと、レスポンスの良さも手伝ってドライバーとの一体感がより強く生まれている印象だ。

タイヤの能力を把握して堪能できる奥深き走り味
X4 Mはもちろん4WDだから、アクセルペダルを踏み込んだ際も安定感を保ったまま加速していくが、M4 CSLはリア駆動なのでそのパワーを持て余す。条件が揃えば0→100km/h加速を3.7秒で駆け抜けることができるが、ホイールスピンをいかに抑えるかが課題となる。

タイヤは前275/ZR19 100YXL、後285/30ZR20 99YXLのミシュラン製パイロットスポーツカップ2R★を履く。適度に温まった状態だと強烈なドライグリップを発揮するが、ゴムが冷えている時のグリップ力はスタッドレスタイヤより心細いから、右足のペダルワークには気を付けなくてはならない。

M4 CSLはあくまでも軽量化を目指したコーナリングマシンだ。M4コンペティション(4WD)に対して160kgも軽いのだから、単なる直線の加速力を競うのではなく、コーナリングも含めた総合的な速さを追求したのだと思う。ニュルブルクリンク北コース(ノルドシュライフェ)ではBMWの市販車最速タイム7分20秒207をマークしている。

ワインディングロードでの走りはドライ路面ではタイヤのグリップ力に助けられ、ほとんどがオンザレールの状態で走れるのは他のM4と同じだ。それでも少し攻めて行こうとした際のターンイン時やハンドルを切り足したときの反応はリニアで、他のM4とは格が違う。ボンネットを開けたときに見える強靭な補強ブレースも効いているのだろう。

最高出力が向上したのに最大トルクを発生するトルクバンドは標準モデルより広がり、日常運転もまったく苦にならない。乗り心地は車速が高いほど快適になる。オドメーターの距離が伸びてくるに連れて当たりの角が取れ、サスペンションストロークも出てきて、いい感じになっていった。サーキットだけでなく、一般道でも飽きないマシンである。(文:こもだきよし/写真:永元秀和)
◇撮影協力:シャトー・メルシャン椀子ワイナリー◇

BMW M4 CLS主要諸元
●全長×全幅×全高:4805×1920×1385mm
●ホイールベース:2856mm
●車両重量:1630kg
●エンジン:直6DOHCツインターボ
●総排気量:2992cc
●最高出力:405kW(550ps)/6250rpm
●最大トルク:650Nm/2750-5950rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・59L
●WLTPモード燃費:9.9-10.1km/L
●タイヤサイズ:前275/35R19、後285/30R20
●車両価格(税込):2196万円

BMW X4 Mコンペティション主要諸元
●全長×全幅×全高:4760×1925×1620mm
●ホイールベース:2865mm
●車両重量:2020kg
●エンジン:直6DOHCツインターボ
●総排気量:2992cc
●最高出力:375kW(510ps)/6250rpm
●最大トルク:650Nm/2750-5950rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・65L
●WLTCモード燃費:9.1km/L
●タイヤサイズ:前255/40R21、後265/40R21
●車両価格(税込):1366万円

ハイパフォーマンスワゴン登場。日本初デビューのM3ツーリング
2023 年 1 月 20 日発表の「M3 コンペティション M x Driveツーリング」はいま新たな注目を集める存在だ。M モデルの主力を担うM3 & M4 シリーズのニューフェイスであり、多用途性に富む使い勝手も大いなる魅力だ。高性能 3 眼カメラ&レーダーなどによるハンズオフ機能付き渋滞運転支援機能も標準装備する。右ハンドルの 8 速 AT 仕様のみで車両価格はセダンの 12 万円高となる1398.0 万円。パワートレーンなどの仕様はセダン版と共通だ。

[ アルバム : BMW M4 CSLに見る<M>の本気度 はオリジナルサイトでご覧ください ]

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