活況を示すSUV市場。トヨタC-HRやホンダヴェゼルのヒット、RAV4やエクストレイルの好調を見ると、しっかり作り込んだSUVはセダンやミニバンよりも若い購入層に支持され、そのメーカーを代表するモデルに育っています。
そんななか、日本でも欧州でもスタイリッシュなコンパクトSUVのパイオニア的存在でありながら(だからこそ?)、9年間フルモデルチェンジせずに売られ続けている車種があります。ご存じ日産ジューク。
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「そろそろ発表」、「今年こそ新型登場」と言われ続けて数年、いよいよ欧州では日産公式サイトが事前情報を公開して、新型発表が秒読みとなっています。が、しかし、なぜか日本仕様はまったくのノーアナウンス。なぜでしょう。どうなっているのでしょうか。いったい日本のジュークはどうなるのか。日産ディーラー関係者に詳しく取材してみました。
文:遠藤徹
■現行型ジュークと新型ジューク写真ギャラリー
■欧州市場では9月3日に発表発売
日産の次期型ジュークは、欧州各国の公式サイトで事前発表情報が公開されており、この(2019年)9月3日に欧州で発表されることが確定的となっている。では日本国内バージョンはどうするのか。
2019年8月下旬現在、日本国内の日産ディーラーでは従来モデルが継続販売されており、購入者に対しても特に「近々次期型に切り替わる」というような説明はされていない。
欧州日産の公式サイトでは「THE NEXT GENERATION NISSAN JUKE」と題されたティザーサイトがオープンしている。「9/3」と日付が公開され、「JUKE」という文言もあることから、次期ジュークが欧州市場でこのタイミングに登場することは間違いない
首都圏にある日産店によると、
「通常の量販モデルだと、新型車発売前の約2ヶ月前に従来モデルの生産ストップ通達があるので、そこで販売店は知らされる。例えば7月16日に発表した新型スカイラインの生産が止まったのは5月だった。現行ジュークが現時点で継続しているのは10月下旬まではフルモデルチェンジの予定がないことを示している」
とコメントする。
欧州日産の事前公開サイトでは、(偽装されてはいるものの)新型ジュークの外観デザインも公開されている。Vモーショングリルと流麗なクーペSUV風のデザインがわかる
現行型ジュークの現時点での納期は、標準タイプが11月、本革仕様が12月となっている。
通常、新型車の発売約1ヶ月前にはメーカー主催の販売店向け商品説明会が実施されるが、ジュークの場合はその予定もまだ通達されていない。
トヨタはじめ他の国産メーカーのほとんどは、年度単位で半年前に大まかな新型車発売のスケジュールが販売店に通達され、3ヶ月前に商品説明会、1ヶ月前から先行予約の受付がスタートする。日産の場合はここ数年そのルールが不定期となっており、販売店の取り組み(見込み客への事前予約受付など)も難しい状態になっている。
現行型の日産ジュークが発売したのは2010年6月。登場時にはスタイリッシュなコンパクトSUVとして話題となり、その後多くのフォロワーを生み出した。しかしあれから9年、さすがに設計や安全装備などで古さが目立つようになった
■「来春発売」から「モデル廃止」まで
今現在、次期型ジュークの国内仕様については、さまざまな憶測情報が乱れ飛んでいる。
1:従来コンセプトを引き継ぎe-POWERユニットを搭載して来春(2020年)発売する。
2:ネーミングを変えて後継モデルを発売。
3:三菱自動車と共同開発し、三菱からOEM供給する。
4:モデル廃止とする。
などである。
具体的には(1)が最も有力で確実性がある。
現行モデルが発売になったのは2010年6月であったから、普通に考えれば2020年の5月~6月の世代交代となりそう。
全体的にはデザイン、つくりはキープコンセプトでパワーユニットは従来の1.5L NA&同ターボに加えて、ノート、セレナで人気の高いe-POWERを搭載する可能性が高い。
e-POWERは最近ノートやセレナ用でかなり改善されており、次期型ジュークではさらに走行性や燃費向上で進化しているに違いない。
(2)は、「ジューク」のネーミングだとこれまでの販売実績から売りにくいとの判断からのようだが、これはあまり説得力がない。ヨーロッパバージョンにならって、「ジューク」という名称を引き続き採用するだろう。
(3)は三菱自動車との共同開発説だが、こちらは三菱のRVRとの共用化から予想されている。日産デイズ/三菱eKワゴンですでに先行例がある(デイズ/eKワゴンは開発が日産、生産は三菱が担当)。
RVRの次期型はコンパクトクラスにスケールダウンする方向で開発を進めているので、これは可能性がある。プラットフォーム、パワーユニット、トランスミッションなど基本コンポーネントが共用化されるのは濃厚だが、ボディパネルなどデザインでどこまで共用化するかは判断が分かれるところだ。
デイズ/eKワゴンは(軽自動車なので当然だが)日本国内専用車であるため、開発は日産、製造は三菱、という住み分けが可能だった。新型ジュークは欧州販売に軸足を置いた世界戦略車のため、軽自動車のようにはいかないだろう。調整が難しそうだ。
(4)のモデル廃止は(2)のネーミング変更と相通ずる面がある。ネーミングを変更すれば「ジューク」の名称がなくなるのだから、モデル廃止と同じことになる。ただ現在の情報では同じ名称で国内も次期型に継続されることが有力になっている。
新型ジュークのデザインイメージを示すと言われる、2015年フランクフルトショーに登場した日産のコンセプトカー「グリップスコンセプト」。次期型もクーペSUV風のフォルムで登場すると予想される
■証言1「もしモーターショーで」首都圏日産店
「現段階では従来ジュークは生産販売が継続され、次期型へバトンタッチするとのメーカーからの通達はまったくない。予兆としてはグレードやボディカラー、オプションパーツの生産が限定されたりするが、それもまったくない状況にある。今年中のアクションはないだろう。主力市場はヨーロッパであるから、あちらで年内に発売し、第2マーケットの日本は来春あたりではないかと予想している。ただ10月下旬に東京モーターショーがある。新型ジュークにe-POWERを搭載して展示すれば、すごい数の問い合わせがくるんじゃないかと期待している」
■証言2「なぜぐずぐずしているのか」首都圏プリンス店
「今SUVブームで国内マーケットは引き続き拡大傾向にある。新型ジュークが発売になれば確実に売れるようになるのに、なぜぐずぐずしているのか、いら立っている日産販売店の声をよく耳にする。情報が遅いので極めて商売がしにくい状況にある。お客さんからの問い合わせにまともに答えられないのである。特に次期型ではe-POWER車の投入に期待している。発売になればノートのようにシリーズ全体の70%を占める人気車になり、量販戦略モデルになるのはほぼ間違いないだろう」
■まとめ
取材を終え、これまでつかんだ現時点までの次期ジュークに関する情報をまとめると、
・少なくとも日本仕様の発売は2020年4月以降の発売(つまり2019年度内はない)
・ただし2019年10月24日から開幕する東京モーターショーに、市販型に近いコンセプトカーが出品される可能性はある
・次期型はe-POWER仕様を中心に開発中(国内販売現場の強い要望を考えるとモデル整理は考えづらい)
・三菱RVRとプラットフォーム共用で開発中(フロントマスクはかなり差別化されるだろう)
上記のとおりとなる。
『ベストカー』が作成した新型ジュークの予想CG。現行型ジュークの雰囲気を踏襲して、安全装備を大幅に向上、e-POWER搭載モデルもラインアップする
ホンダヴェゼルが登場したのが2013年12月。ヴェゼルはそれから3年間(2014~2016年)連続でSUV部門の販売台数トップを飾り、2017~2018年は(2016年末に発売した)トヨタC-HRが販売トップを奪った。このカテゴリーの先駆者である日産ジュークは、この間なにも手を打っていない。
ノート、セレナで大成功した「e-POWER追加」という手法を新型ジュークにも適応すれば、販売トップ奪還の可能性は高いだろう。ただ欧州で先行発売される世界戦略車であり、三菱とのプラットフォーム共用のため、開発に時間がかかっているようだ。
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