燃費といえば近年はJC08モード燃費を指していたが、2017年よりWLTC燃費が導入され、各メーカーの新車にはJC08と併記されるようになった。
国際的な燃費基準の採用により、市街地や高速など使用状況ごとの数値も表記されるようになり、数値そのものもJC08よりも悪化したものとなっている。
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かつては表記される燃費と実用燃費の乖離が指摘されることがしばしばあったが、WLTC燃費は実用燃費に近づいたのだろうか?
文/渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部(トビラ写真=kawa10@AdobeStock)
【画像ギャラリー】かつてはカタログ燃費と実用燃費は違って当たり前だった!! WLTC燃費表示は実用燃費に近付いたのか!?
■時代に応じて変わりゆく燃費の計測と表記
車のランニングコストとして筆頭に挙げられるのはガソリン代だ。燃費は車選びの大事な要素となる
燃費の計測と表記の方法は、時代に応じて変化している。もともとカタログなどに掲載される自動車の燃費数値は、時速60kmの定地走行燃費であった。
それが1970年代に入ると、10モード燃費を使うようになった。1970年代の中盤以降は厳しい排出ガス規制が実施され、排出ガスの測定を行う必要がある。
10モード走行は、排出ガス計測に使う走行モードで、アイドリング/加速/定速走行/減速を10回行う。この計測時に副産物として得られた燃費数値をカタログなどに掲載した。
この後に10モード燃費は、10・15モード燃費、JC08モード燃費と進化して、今はWLTCモード燃費が使われている。
JC08モード燃費は、10・15モード燃費よりも実際の走行に近い燃費計測を行うため、2011年から採用されている。そのためにJC08モード燃費は、10・15モード燃費に比べて燃費数値が10%前後悪化したが、依然として実際の走行とは隔たりがあった。
そこで2017年以降は、WLTCモード燃費を使っている。北米や欧州など、海外でも使用される燃費の計測方法だから、日本独自のJC08モード燃費と違って国際性も伴う。
WLTCモード燃費では、数値の表記も工夫されている。総合的なWLTCモードに加えて、信号待ちや渋滞などを想定した市街地モード、スムーズに走行できる郊外モード、速度の高い高速道路モードも個別に示される。
街中を中心に走るユーザーは市街地モード、逆に街中をほとんど走らない場合は郊外モードや高速道路モードをチェックすると、自分の使い方に合った燃費性能が分かる。
■燃費特性を知る上でも便利な3つの走行モード
フォレスターのe-BOXER(ハイブリッド)と1.8Lターボは計測モードによって燃費の優劣が逆転する
3つの走行モードは、その車種の燃費特性を知る上でも活用できる。
例えばフォレスターのe-BOXER(ハイブリッド)と1.8Lターボを比べると、WLTCモード燃費はe-BOXERが14.0km/L、1.8Lターボは13.6km/Lだ。e-BOXERが少し優れるが、郊外モードでは逆転する。e-BOXERは14.2km/L、ターボは14.3km/Lだから、e-BOXERの数値はターボよりも少し悪い。
ちなみにフォレスターのJC08モード燃費は、e-BOXERが18.6km/L、ターボは16.5km/Lだ。JC08モード燃費では、ハイブリッドのe-BOXERがターボよりも優れているという常識的な結果だが、WLTCモード燃費の郊外モードになると、e-BOXERの燃費がターボよりも悪化する意外な現実も見えてくる。
スイフトの場合、JC08モード燃費は、アイドリングストップを装着しないノーマルエンジンのRSが21.6km/L(CVT)、アイドリングストップを備えたマイルドハイブリッドのRSは25.2km/L(CVT)、ストロングハイブリッドのSZは28.6km/L(5速AGS)だ。
マイルドハイブリッドは、ノーマルエンジンに比べて燃費数値が17%向上する。ストロングハイブリッドは、マイルドハイブリッドに比べてさらに13%向上する。
ところがスイフトのWLTCモード燃費は、ノーマルエンジンが20km/L、マイルドハイブリッドは21km/L、ストロングハイブリッドは23km/Lだ。マイルドハイブリッドの燃費向上率は、ノーマルエンジンのわずか5%で、ストロングハイブリッドもマイルドハイブリッドの10%に留まる。
このようにWLTCモード燃費ではハイブリッドの燃費向上率が小さく、特にノーマルエンジンとマイルドハイブリッドの比較は、JC08モード燃費は17%なのにWLTCモード燃費では5%まで下がってしまう。
スイフトの場合JC08モード燃費とWLTCモード燃費は、特にハイブリッドにおいて大きく違いが出る
このように燃費数値に差が生じた理由は、スイフトのノーマルエンジンとマイルドハイブリッドで、市街地/郊外/高速道路モードの各数値を比べると良く分かる。
市街地モードは、ノーマルエンジンが14.8km/L、マイルドハイブリッドは17km/Lと差が大きい。
市街地モードでは、信号待ちなどを想定した停車時間も相応に確保され、マイルドハイブリッドに装着されるアイドリングストップなどの効果が発揮されるからだ。低速の走行比率も多く、モーター駆動が燃料消費量を軽減させる効果も生じる。
しかし郊外モードは、ノーマルエンジンが21km/L、マイルドハイブリッドは21.5km/Lだから0.5km/Lしか変わらない。燃費向上率も2%と小さい。郊外モードでは停車時間が大幅に減り、アイドリングストップの効果も薄れるからだ。
さらに高速道路モードは、ノーマルエンジンが22.7km/L、マイルドハイブリッドは23km/Lだから燃費向上率はわずか1%になる。加減速を抑えて一定速度で走る傾向も強まり、アイドリングストップ、減速時の充電、エンジン駆動の支援効果がすべて薄れる。
■JC08燃費はWLTC燃費の市街地モードに近い!?
C-HRの1.2Lターボを搭載するG-TとハイブリッドGを比較した時もスイフトと同様の傾向が見られる
この傾向はほかの車種にも当てはまる。例えばC-HRの1.2Lターボを搭載するG-TとハイブリッドGを比べると、WLTCモード燃費の総合的な数値は、ターボが14.9km/L、ハイブリッドは25.8km/Lだ。ハイブリッドの数値はターボに比べて73%向上する。
市街地モードは、ターボが11.1km/L、ハイブリッドは24.7km/Lだから、123%の大幅な向上だ。街中を走る時のハイブリッドの燃料代は、燃費数値上ではターボの半額以下で済む。
それが高速道路モードになると、ターボの数値が16.9km/Lに向上して、ハイブリッドは24.6km/Lだから若干下がる。ハイブリッドの燃費向上率も46%に留まる。
JC08モード燃費とWLTCモード燃費を両方表示している車種の数値を見ると、JC08モード燃費は、WLTCモード燃費の市街地モードに近い。JC08モード燃費は、前述の通り日本の測定パターンだから、走行速度も低めで停車時間も相応に長い。従ってJC08モード燃費は、WLTCモード燃費の市街地モードに近付いた。
WLTCモード燃費の平均速度は時速36.6kmで、市街地モードは18.9km、郊外モードは39.5km、高速道路モードは56.7kmだ。JC08モード燃費は時速24.4kmだから、平均速度もWLTCモード燃費の市街地モードに近い。
■自分の乗り方に合わせた車選びに有効活用できる
WLTCモード燃費はJC08モード燃費に比べてノーマルエンジン車には有利で、ハイブリッドは不利になりやすい。3つの走行モードを自分の使い方と照らし合わせ、データを有効活用しよう
以上のようにWLTCモード燃費は、JC08モード燃費に比べて走行速度が高めに設定される。停車時間も減るから、ノーマルエンジン車には有利で、ハイブリッドやアイドリングストップ装着車は不利になりやすい。
そのためにハイブリッド車のWLTCモード燃費は、JC08モード燃費に比べて、20%ほど低く示されることもある。
以前のエンジンのセッティングは、各メーカーともに、JC08モード燃費を重視することが多かった。JC08モードに近い走り方をすれば燃料消費量を節約できるが、実際の走行では悪化しやすい。
その点でWLTCモード燃費は、市街地/郊外/高速道路と幅広いルートを対象にしているので、エンジンの設定もバランスの良いものになってきた。
JC08モード燃費に比べると、WLTCモード燃費は実際の走行に近い数値を示すから、クルマ選びの参考になりやすい。特に3つの走行モードの内訳が分かるので、自分の使い方と照合しやすく、データを有効に活用できる。
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ハイブリッド車のWLTCモード燃費は、JC08モード燃費に比べて、20%ほど低く示されることもある。
以前のエンジンのセッティングは、各メーカーともに、JC08モード燃費を重視することが多かった。JC08モードに近い走り方をすれば燃料消費量を節約できるが、実際の走行では悪化しやすい。
その点でWLTCモード燃費は、市街地/郊外/高速道路と幅広いルートを対象にしているので、エンジンの設定もバランスの良いものになってきた。
JC08モード燃費に比べると、WLTCモード燃費は実際の走行に近い数値を示す