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メルセデス・ベンツで見る車体のボディガード「サイドプロテクター」の役割と進化

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メルセデス・ベンツで見る車体のボディガード「サイドプロテクター」の役割と進化

50年で大きく変わった形状と役割

「この間、マイカーを駐車場に停めて、用事を済まして帰ってみると車体側面に凹んだ傷があってガッカリがしたよ。すでに隣のクルマはないし、困ったもんだ」。

究極の後席VIPのために…… 天皇御料車も存在したメルセデス・ベンツを代表する歴代超高級モデルたち

 このような経験をした人はいるはず。決して故意ではなくても、乗り降りの際にドア開けた時、隣の車両だけでなく、塀などに当ててしまったことで大切な愛車を傷つけたことがあるでしょう。今回は、そんな対策としてメルセデス・ベンツが施した「サイドプロテクター」の歴史と進化を紹介したいと思います。

 1968年、メルセデス・ベンツはボディの飾りだったモールを「ラバー付き」に変更し、ボディを凹みや傷から守ったのがサイドプロテクターの始まり。三角形の断面をしたラバー付きのプロテクターが従来の平らなクロームのモールにとって変わったのです。ボディのセンターと下端に取り付けられ、車体をグルリと囲うように装着。デザイン上でもボディのウエストラインを引き締めていました。

 メルセデス・ベンツのドアを開いて見ると、ドアが直接相手車両や障害物に当たる心配はなく、逆に隣の車両がドアを開いても三角形の断面をしたラバー付きサイドプロテクターに干渉することで凹みや傷からガード。さらに、走行中にボディ下部からの泥水がボディの上部に跳ね上がるのを防ぐばかりか、サイドウインドウが汚れるのを防止する役割を果たしていたのです。

ラバープロテクターの解剖

 いわば、ボディに傷がつかないのは開発スタッフがオーナードライバーだからこそ、このようなきめ細かい設計ができたのです。当時のお客様には「やはりメルセデス・ベンツは高級車、ボディガード付きだね」と感心されたことを思い出しました。

 さて、このサイドプロテクターも時代の流れと共に形状・材質も変化。つまり、ボディの空気抵抗を少なくするという課題のため、エアロダイナミックスなスタイルに、しかも環境問題にも対処していくことになっていくのです。

サイドプロテクターの変遷

 例えば、コンパクト・ミディアムクラスを例に挙げると下記のとおり。

・W114/115シリーズ(1968~1976年)

 1968年に、ニュージェネレーションとして登場。メルセデス・ベンツはこのシリーズに「コンパクト・メルセデス」という呼称を与えており、日本では”タテ目ベンツ”と呼ばれ親しまれました。この時のサイドプロテクターは、前述のように三角形の断面をしたラバー付きだったのです。

・W123シリーズ(1976~1985年)

 そして、1976年にコンパクト・メルセデスはフルモデルチェンジを実施。ミディアムクラスとなったW123シリーズは、ヘッドライトはタテ目から横位置に変更され、日本では”横目のベンツ”とも呼ばれました。「横並びの丸型4灯式」が4気筒モデル、「横長の角型式」が6気筒モデルだったため、当時は4気筒モデル車を角型ライトに換えるのが流行。そして、サイドプロテクターはW114と同じく、三角形断面のラバー付きが踏襲されました。

・W124シリーズ(1985~1995年)

 ヘッドライトが横目の角型2灯式となった初代EクラスのW124シリーズ。1990年2月のマイナーチェンジによってサイドプロテクターはポリウレタン製となり、ボディ側面下部をほとんど覆い保護する、いわゆる「サッコプレート」に変わったのです。サッコパネルの名の由来は、デザイナーのブルーノ・サッコにちなんで付けられたもの。

・W210シリーズ(1995~2002年)

 ヘッドライトは丸型4灯式を採用し、いわゆる「フォーアイズ・ヘッドライト」となった最初のモデルが2代目Eクラス。サイドプロテクターは、サッコプレートに代わってプラスチック製のクロームモール付きとなり、ドアからフロントフェンダーまで伸びる長方形の形状に変更されました。

・W211シリーズ(2002~2009年)

 2002年、3代目Eクラスへモデルチェンジを果たしたW211のヘッドライトは、先代と同じ丸型4灯式ですが、ややツリ目気味のフォーアイズに変更。サイドプロテクターは、同じくプラスチック製のクロームモール付きだったものの、ゆるやかな楕円形状へと変更されています。

・W212シリーズ(2009年~2016年)

 4代目Eクラスは、4灯ヘッドライトこそ踏襲されたものの「異形角型4灯式」で、全体的には鋭角なイメージ・ダイナミックスに変身。そして、サイドプロテクターもスマートな形状へと一新されました。空気抵抗を大幅に軽減するため、エアロダイナミックスなボディデザインとなり、環境問題に対処するためにサイドモールは、細いクローム形状へと変更されたのです。

・W213シリーズ(2016年~)

 現行型Eクラスのヘッドライトは「シャークアイズ」を採用。さらなる燃費(空力性能)を徹底追求していくためエアロダイナミクスなフォルムとなり、セダンとしては驚異的な空力性能を誇るCd値0.23を実現したのです。また、厳しい環境問題に対処するためサイドモールこそ廃止されましたが、サイドエプロン下部がボディラインより少しせり出した形状としたことで、サイドプロテクターとしての役割を果たしているのです。

 このように、一部の他メーカーでもサイドプロテクターが見直されており、安全なデザインのワンポイントとして採用されています。現代、そして今後のクルマには自動運転の他に、電気自動車(EV)をはじめとする電動化、シェアリング(共有)、コネクテッド(インターネットを介し外とつながる)という大革新・移動革命が起こっています。

 そこで、如何にクルマを安全に守り責任を取るのか、今後の自動車造りにおいて人間とクルマを安全に守ることはもちろんですが、キメ細かい安全なアイディアであるサイドプロテクターが、さらに重要視されることになるでしょう。

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みんなのコメント

2件
  • これ、国産車にもかつてはあったもの。
    いつの間にかなくなっている。コスト低減
    これがないと締まりがなくなる。
    例えばクラウンは高いディーラーオプション品に成り下がった。
  • フェリーに乗る時、マグネットで止める自作のプロテクターを側面に付けます。W212後期はプロテクターがないので。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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