クルマがフルモデルチェンジすると、多くの人は外観のデザインが大きく変わることを期待する。しかし当の自動車会社はそう思っていないことが多い。「キープコンセプトだよね、特に売れ線のクルマはさ……」と。
今回は、そんな“キープコンセプト”という名の、変わったのか変わってないのかわかりにくい現行車たちを一挙紹介していく!
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※本稿は2019年9月のものです
文:清水草一/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年10月10日号
■変わったんだけどわかりにくい マツダ CX-5
CX-5は、キープコンセプトのなかではちゃんと変わったほうですよ。これはまさに正常進化のお手本。新型と先代を見比べたら、完全に車格が違うくらいに感じるからね。
新型のほうがだんぜん高級そうに、値段が高そうに見える。あるいはガイシャに見える。これは間違いなくデザインの勝利! これについては称賛しかありまちぇん。
上が「旧」、下が「新」(以下すべて同じ並び)。新型は、新時代の「魂動デザイン」を採用し、ヘッドライトがシャープになった
これなら先代と新型を見分けられない女子もいないんじゃないか。いや、いるだろうけど、全員ってことはないだろう。だってCX-5は、国産車からガイシャに生まれ変わったんだから! しかもキープコンセプトで! 素晴らしいことですよ! すべての質感が上がってるしバランスもよくなっている! 文句ないです。
■売れっ子は化粧直しも命がけ ホンダ N-BOX
N-BOXに関しては、マジでもっと「変えないで」欲しかった!。デザイン的には先代のノーマルモデルが機能美の極致で、いじりようがなかったのだ……。
箱型ながら、フロントフェンダーの張り出しが大地をしっかり踏ん張って、自動車の原点回帰の素晴らしいデザインだった。
フロントグリル周りや、リアのクォーターウィンドウ後端の形状が上下で丸く変更されているなど、細かい部分が違っている……
それを思うと新型のデザインは、まさに「微妙な改悪」だ。フロントフェンダーの張り出し感は一気にショボくなったし、リアコンビランプなんかカスタム系のマイルドヤンキー風味がそのままついちゃってて、箱型ボディのあそこだけトグロ巻いちゃってる。バランス崩しただけじゃんか!
■ボディが黒かったら判別不能のスバル レガシィ
まだ新型の実物は見てないけど、写真を見ても現行との区別がメチャ難しい。バンパー下のブラックアウト部の形状で見分けるしかない気がする。
「どこが変わったのか?」と、たぶん身内からも言われたであろう姿。寸法関係も大きくは変わっていない
レガシィも現行モデルはデザインの完成度が高く、いじるのが難しいのはわかるが、ボディカラーが黒だったら、いよいよ目を凝らさないとイカン!
■進歩させたはずが残念な結果に スバル フォレスター
レガシィは、見分けがつかないながらに新型のほうが洗練されているが、フォレスターは逆に微妙に洗練度が落ちているんじゃないか。
具体的には、まず前後オーバーハングが微妙に重く感じられる。リアコンビランプは明らかに「先代と見分けるためにムリヤリ異形にした」ように感じられる。ヘッドライトのコの字と対をなしているんでしょうけど、リアはボディ色が食い込んでるのでそうは感じられない!
旧型をベースにブラッシュアップしたはずが、チグハグ感が出てきてしまった
全体的に見てフォレスターは、先代から若干デザインレベルが落ちているように思うのですよ。
フォレスターの場合、先代のデザインがそんなによかったわけでもないので、これは少し残念。そんなに悪いわけでもないけど、やっぱりデザインは進歩してほしい! 新型フォレスターにはそれがまったくない!
■進化はしているけどそっくり ダイハツ タント
タントは、初代から続く「動く託児所」テイストのデザインを頑固に守っている。どーしてそんなもんを守るんだ! と私は思うのですが、ダイハツ開発陣にすれば「これがタントです!」ってことなんでしょうね。そこがまず残念。クルマは託児所や老人ホームであっちゃいけない!
機能としてはそれでもいいのですが、なにはともあれデザインではもうちょっと走りを感じさせないと! なにしろクルマなので!
タントカスタムのフロントフェイスがそっくり。旧型はメッキ処理されたグリルや、フロント開口部のデザインが違うが、パッと見そっくり
ただ、その託児所テイストのなかでは、確実に洗練度は増している。よりシンプルに、以前より甘みを抑えた感じで、方向性としてはイイです。
特にカスタム系は、メッキギラギラからブラックアウトの迫力への転換がうまくいっている。キープコンセプトながらに、確実に前進している点を評価したい!
■先代が完成形だった気がするBMW 3シリーズ
なにせ3シリーズは、先代のデザインがひとつの完成形で、とってもバランスがよかった。ところが新型は、見分けがあまりつかないながらに微妙にバランスが崩れ、ディテールの質感も落ちている。
折れ曲がってボンネットまで拡大されたキドニーグリルは新世代BMWの象徴。だが、遠目から見たら区別はつかないだろう……
3シリーズくらいの名車になると、目新しさはあまり必要ないが、これじゃモデルチェンジがかえってマイナスだべ!
■これはマイチェンレベルの差ですが、実は…… ランドローバー レンジローバー イヴォーク
もともとイヴォークは、猛烈に美しいクルマだった。そして、ウルトラ超絶キープコンセプトの新型イヴォークもまたウルトラ美しい。どっちもウルトラ美しい。どっちが美しいかと言ったら、5ドア同士で比べたら、ほんのちょっと新型のほうが美しいかもしれない。
ほんの少しだけ丸みを帯び、ほんの少しだけサイドウィンドウのリア型の絞り込みが増して、ほんの少しだけ温かみや豊かさみたいなものが増したように感じられるので……。
プラットフォームは新設計でまったくの別物ながら、その差を見分けることは難しい
しかしそれにしても、本当に本当に見分けるのが難しい。これほどキープコンセプトなモデルチェンジは、自動車史上初めてではなかろうか。一般ピープルが見分け不可能なのはもちろん、マニアもお手上げ。あまりにもハードルが高すぎる。ハイブロウ過ぎます!
■細かすぎて素人にはわからないポルシェ911
思えば911も、996型の涙目で失敗するまでは、けっこうしっかり見分けがついたよね。
で、997型は丸型ライトに戻して落ち着いたいいデザインになったけど、その後991型、そして992型と、極端に見分けが困難に! いくら世界遺産級の名車でも、ちょっと困っちゃうっス!
992型では前型で四駆系モデルに与えられていたワイドボディが標準化された
■4も6も7も8も全部見分けが超難しい アウディ A7
アウディのセダン系は4も6も7も8も全部見分けが超難しい。デザインレベルが高いのは確かだが、もはや見分ける意欲を失ってしまいました。
ヘッドライトと幅広いシングルフレームグリルのデザインが多少違う
■これがミニらしさといえばミニらしさ
ミニはミニなので変えちゃいけないわけなので、変わり映えがしないことに文句はないのですが、先代のデザインのほうが完成度が高かったと思いまちゅ。やることなくなっちゃったんでちゅね。次はどうするの?
個性的な丸形ヘッドランプがミニの伝統。誰が見てもミニだとわかるので、ねらいどおりなのかもしれない
■6代目から変わってない? VWゴルフ
8世代目ゴルフのプロトタイプ写真も公開されたが、7代目と変わらず平べったすぎる! ゴルフをこんなに平べったく幅を広くしてどーすんだ! と私は思う。そのことが問題ではなかろうか。初代への原点回帰を望む!
今回の新旧比較は、6代目と7代目。8代目も、若干ヘッドライトの意匠が変わるが、キープコンセプトだ
■そのデザインは名門の資産だ! アストンマーチン DB9&DB11
アストンマーティンは超名門。デザインそのものが資産だ。これは資産運用なのだ! でも最近モデル数がそこそこ増えている。過去のモデルも含めて見分けが難しいので、どれがどれだか本当にわかりません。
歴代DBシリーズのイメージを受け継いだDB11。ひと目見てDBとわかることを重視
■語る言葉も見つからない フェラーリ 488&F8
もちろんですね、308と328もほとんどソックリでマイナーチェンジレベルだったけど、あの頃はフェラーリへの憧れが普遍的だったから。今は富裕層だけのものなので、見分けようという意欲そのものが湧きません。貧乏ですいません。
F8は、過去のV8モデルに対する敬意を示し、過去のモデルのデザインモチーフをボディ各所に取り込んでいる
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