「SUVといえば四駆」はもう古い!?
初代「パジェロ」に代表されるクロカンSUVが火付け役となり、1980年代後半から1990年代初めのブーム、初代「ハリアー」から始まった1990年代後半からの高級SUVの増加を経て、ここ5~6年は“第3次”ともいえる世界的なSUVブームが続いている。
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現在、日本で販売されているクロスオーバーやSUVのラインナップを見ると、4WD(四輪駆動)に加え2WD(二輪駆動)モデルが設定されるのは当たり前となっている。
加えて世界的にはVWやルノーなど多くのメーカーから、4WD車を設定しないSUVも登場してきている。
そこで、日本における人気SUVとクロスオーバーの4WD比率を調べてみたところ、意外な事実が分かってきた。なぜSUV=四駆ではなくなってきているのか? その背景に迫る。
文:永田恵一
写真:TOYOTA、編集部、SUZUKI
【画像ギャラリー】四駆が少数派のモデルも!? SUV販売ベスト15車&販売台数
現在のSUVのトレンド&人気車の傾向は?
2019年11月に発売され、2020年1月には1万220台、2月には9979台を販売し、登録車販売No.1に輝いたライズ
現在日本で買える日本車のSUVを見回してみると、ラダーフレーム構造のボディや副変速機を持つ本格的なクロカンSUVは、トヨタ ランドクルーザー/ランドクルーザープラド、スズキ ジムニー/ジムニーシエラくらいで、ほとんどが乗用車ベースだ。
これはSUVに主に求められた“悪路走破性”が、現在では「雪道と河原のような若干の悪路までに対応できれば多くの人は充分」と考えられているからである。
そのため、前述のクロカンSUV以外は乗用車をベースに最低地上高を上げる、横滑り防止装置を発展させて4WD性能を高めるという考えとなっている。
この方がコストメリットや軽量化による燃費悪化の抑制、舗装路でのハンドリングと乗り心地のバランスなど、ほとんどの人にとってメリットは大きい。
また、現在のSUVブーム下では、クロカンSUVや乗用車ベースの高級SUV、オーソドックスなSUVに加えて、ニーズの多様化によりホンダ ヴェゼルあたりから始まったコンパクトSUVも活況。
マツダ CX-3やトヨタ C-HRなど実用性よりも流麗なスタイルを持つスペシャリティなもの、ステーションワゴンのような乗用車にSUVの要素をミックスしたクロスオーバーなど、一口にSUVといってもSUVの中でもライトな方向のジャンルが大幅に増加している。
そのため「いい意味でクセの強いSUV」といえるC-HRが登場から3年ほど大人気となり、5ナンバーサイズSUVとなるダイハツ ロッキー/トヨタ ライズも2019年11月に登場。
特にライズは、2020年1月と2月は軽自動車を除く登録車の月間販売台数ランキング1位に躍り出るというヒット車となっている。
人気コンパクトSUV&クロスオーバーは2WDが圧倒!
2019年SUV販売No.1に輝いたヴェゼルも、販売の8割強を2WD車が占め、4WD車は2割未満の少数だ
こうした背景を考えると乗用車より幅広く使えるSUVは、日本でももう“ブーム”を通り越して、軽自動車、ミニバン、コンパクトカーに続く“柱となるジャンル”に定着していると言える。
その証拠に2月の登録車の月間販売台数ベスト50にはSUVが15台、2月の軽乗用車の販売台数ベスト15でも9位と12位にスズキ ハスラーとジムニーがランクインしているほどなのだ。
では、人気コンパクトSUVとクロスオーバーの駆動方式比率は実際にどうなっているのか? 各メーカー広報部に問い合わせた結果は以下のとおりだ。
・トヨタ ライズ/2WD=69%:4WD=31%(※2019年11~12月データ)
・トヨタ C-HRガソリン車/2WD=59%:4WD=41%
※C-HRハイブリッドは2WDのみ。C-HRはハイブリッドが70~80%を占めていると思われるので、C-HR全体で見た4WD比率は10%程度と想像できる。
・ホンダ ヴェゼル/2WD:4WD=85%:15%
・ホンダ フィットクロスター/2WD:4WD=80%:20%(※2019年12月下旬~2020年3月中旬のデータ)
・スズキ クロスビー/2WD:4WD=60%:40%
・新型スズキ ハスラー/2WD:4WD=70%:30%(2020年1~2月データ)
※()のないモデルは2019年の年間データ
このように、現在の軒並み2WDが主力となっている。
なぜSUV&クロスオーバーは非4WDが主力に?
ジムニーなどの本格派は、写真のような本格的な悪路で真価を発揮するが、多くのユーザーは、もっとカジュアルな使い方がメインであり、そうした背景が昨今のSUVトレンドにも結びつく
その理由を考えてみるといくつか浮かぶ。
【1】「悪路に強いから」という理由でSUVを買っているユーザーは意外に少ない
上位のようなユーザーがSUVを選ぶ具体的な理由としては……
・SUVやクロスオーバーの「スタイルや高い着座位置に代表される全体的な雰囲気が好き」という選び方
・「SUVは乗用車よりリアシートや荷室が広いことが多い」など実用性の高さ
こうした理由があげられる。乗用車に対し、走りがそれほど劣ることなく、乗用車プラス20万円程度で買えることが多いのだから、SUVとクロスオーバーが人気になるのもよくわかり、そういったユーザーなら4WDの必要性は薄い。
【2】2WDでも技術の進歩で雪道に相当対応できるようになってきた
コンパクトSUV&クロスオーバーの2WDは、ほぼすべてが前からクルマを引っ張るFF(=前輪駆動)ということもあり、もともと雪道に弱くはない。
さらに、近年はスタッドレスタイヤや横滑り防止装置の義務化といったクルマ周辺の雪道対応が著しく進歩していることもあり、「最低地上高が高いSUV&クロスオーバーなら2WDで問題ない」という考えも充分成り立つ。
先頭からC-HR、CX-3、ヴェゼル、エクストレイル。近年、2WD車の雪上性能が向上したことで、前3台のようなFF主体のSUVがトレンドとなっている
【3】4WDのデメリットも否めない
乗り心地に代表されるクルマ自体の仕上がりは、車種によって異なるケースもある。ただ、昔に比べれば改善されているにせよ、4WD化に伴う重量増と動力性能や燃費の悪化は否めない。
また、2WDと4WDの価格差も、今回調べたコンパクトクラスだとスズキ クロスビーと新型ハスラーは約13万~15万円と抑えられているが、それ以外は約20万~24万円となる。これはミドルSUVでも約20万~25万円と意外に変わらない。
そのため、中心価格帯が200万~250万円のコンパクトクラスと中心価格帯が300万円台となるミドルクラスでは差額に対する感じ方が変わってくることもあり、特にコンパクトクラスでは2WDが人気となることもよく分かる。
◆ ◆ ◆
現代はファッションに近い感覚でSUVを選ぶこともよくあるので「4WDは不要、2WDで充分」と考えるユーザーも多いということだろう。
また、アメリカで販売されるSUVは、日産 アルマーダ(かつてのサファリ)やシボレータホ、キャデラックエスカレードのようなピックアップトラックベースの本格的なものにも昔から2WDがある。日本もその流れに近くなっているともいえそうだ。
ただ、雪道などを走る際には、やはり4WDのメリットは絶大だ。
それだけに「冬場に雪道を走ることがそれなりにある」など迷っているなら、処分する際の査定で差額を回収できることもあり、きちんとしたスタッドレスタイヤを履くことを前提に4WDを選ぶのを勧めたい。
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