■どんなクルマ?
敢えて「P100D」ではなく「100D」
クルマの購入者に、なぜEVを買わないか尋ねると、バッテリーの残量の心配が一番の理由になることは多い。
運転中のバッテリー切れは、クルマを運転する者にとって悪夢である。
現在イギリスには4400のチャージングステーションがあるけれど、ガソリンスタンドの数がその倍以上存在することも、精神的な安心感を与えるのだろう。
EVのインフラを整えるには、まだまだ多くの仕事が残されているということである。
となれば、あなたに必要なのは、何百キロも充電なしに走破できるEVであろう。
テスラは、この点に関して、モデルSのP100Dが航続走行距離632kmを誇ることで応えている。
しかし、£131,800(1,846万円)は法外に高価であり、これは、ポルシェ・パナメーラ・ターボやメルセデス-AMG S63クーペを視野に入れる価格帯である。
P100Dは、0-100km/hを驚愕の2.4秒で駆け抜けるが、スピード(や価格)を諦めても、航続走行距離を伸ばしたいと思うひともいるはずだ。
そんな向きには、100Dを紹介したい。
航続走行距離632kmは、購入することができるEVのなかでも最長であり、£90,000(1,262万円)の価格は、P100Dよりもかなりお得である。
■どんな感じ?
知的なスリル
メーカーが標榜する632kmの航続走行距離は、現実的でないが、515kmの航続走行距離なら余裕でこなすことができるだろう。もし、右足をしっかりと躾けた走りができるのであれば。
515kmは十分な距離である。ロンドンからバーミンガムへ行って帰ってくるだけの余裕があるし、サンダーランドまでなら充電をすることもなく走破できる。
しかも、テスラの賢いインフォテインメントシステムのお陰で、ナビにより目的地まで近くにあるチャージングステーションを確認することができる。
数字の上では、P100Dの0-100km/h加速よりも2.0秒も遅いというのに、100Dはそれでも速く感じる。
ラウンドアバウトやコーナーの出口でアクセルを踏み込めば、瞬間に立ち上がる加速はスリリングである。そして、追い越しに苦労することは」皆無だ。
ただ、気になるところもある。
積極性と質感を期待
BMWやメルセデス・ベンツのようなスポーツサルーンから感じられる、運転への積極的な関与は乏しい。しかし、モデルSを運転していて不安定を感じることはない。ライバル達よりもゴツゴツとした乗り心地ではあるが。
インテリアは見慣れた風景である。より多くの光を車内に取り入れる、新しいパノラミックルーフ以外に目新しい点はない。
いっぽうで、慣れるのに少し時間を有するが、美しくデザインされ、豊富な機能を提供するテスラの誇る17.0インチのインフォテインメントは健在だ。
しかし、残念だったのは、明るさを調整しても、夜間使用時に眩し過ぎることだ。インテリアの質感も同クラスのライバルと比べて若干劣る。
■「買い」か?
いいところ、わるいところ、どちらを取るか
今思い切ってEVを選ぶことにおいて、一番の障壁が航続走行距離であれば、このモデルSは、発売中のいかなるEVよりも多くの距離を走ることができるのだから、バッテリーの残量を気にする頻度は減るだろう。
アクセルを思うままに踏んだとしても、失われる距離はたいしたことはない。満タンを要するのなら、テスラのスーパーチャージャーネットワークや、小規模なデスティネーションチャージャー、そして自宅に備え付けられたチャージングポイントがカバーする。
しかし、それでも、£90,000(1,262万円)である。
モデルSには、この価格帯のクルマが持つべきラグジュアリー感に欠ける。特別な気分にさせてくれることは疑うまでもないのだが、競合となる同クラスのライバルが持ち合わせているラグジュアリーな質感に劣るのだ。
テスラ・モデルS 100D
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