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ロールス・ロイスに60台限定の特別仕様車が誕生! 最高速度560km/h超を記録した「37リッターV12」搭載車に捧げるオマージュ

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ロールス・ロイスに60台限定の特別仕様車が誕生! 最高速度560km/h超を記録した「37リッターV12」搭載車に捧げるオマージュ

Rolls-Royce Landspeed Collection

ロールス・ロイス ランドスピード コレクション

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1930年代の英国人ヒーローに捧ぐ

ロールス・ロイスは2021年6月24日、2ドアクーペのレイス、及びコンバーチブルのドーンをベースにした「ランドスピード コレクション」を発表した。ロールス・ロイスの航空機用エンジンであるR型V12を搭載したマシンで陸上最速記録を打ち立てた英国エンジニアに賛辞を捧げた特別仕様車。レイスは35台、ドーンは25台の限定生産となっている。

「ランドスピード コレクション」は、1930年代後半に陸上最速記録へ挑んだ英国人ジョージ・アイストンに送るオマージュ的プロダクト。1897年生まれのジョージは幼少の頃からモータースポーツに魅了され、学生時代から自動車レースにのめり込んでいた(偽名を使って2輪のレースにも参加)。ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジでエンジニアリングの学位取得に向けて励んでいたが、第一次世界大戦が勃発。しかしアイストンはそこで優れた才能を発揮、大尉に昇進して武功章も与えられた。

“稲妻”が打ち立てた世界速度記録

1920~30年代はレーシングカーの開発に熱中。発明家としての天分も備えていたアイストンは、数多くの特許も取得した。とりわけ多かったのが、スーパーチャージャーに関するアイデアであった。1935年、アイストンは米ボンネビル・ソルトフラッツに挑んだ英国初のレーサー陣に参加。24時間と48時間の耐久速度記録を樹立した彼は、のちに乗り物分野で素晴らしい業績を残したイギリス人に贈られる「シーグレーブ・トロフィ」を与えられている。

そして、アイストンは1937年に再びソルトフラッツに帰ってくる。そこで彼は「サンダーボルト」と名付けたマシンで3つの陸上速度世界記録を更新したのである。8輪のタイヤと3つの車軸、そして7トン超の車体をもつサンダーボルトは、アルミニウム製ボディの上に大きな三角形の“ひれ”を装着。当時の報道で「behemoth(ベヒーモス=旧約聖書ヨブ記に登場する巨獣)」や「leviathan(リバイアサン=同記に登場する海の怪物)」といった異名を与えられた。

伝説の“37リッター”V12エンジンをふたつ搭載したサンダーボルト

心臓部にはロールス・ロイス製の航空機用エンジン、R型スーパーチャージャーV12(排気量は37リッター)を2基搭載。最高出力は2000psを軽く上回った。ちなみにR型V12の生産数はたったの19基といわれており、サンダーボルトが使ったのは、シュナイダートロフィーレースを制した水上機「スーパーマリン S6. B」が積んでいたユニットだ。

サンダーボルトのR型エンジンは、現在ヘンドンのイギリス空軍博物館とロンドンの科学博物館で保管されているが、サンダーボルトの車体自体は消失している。1940年のニュージーランド百周年記念展に出展された後で倉庫に眠っていたところ、ウールの詰まった袋2万7000個と一緒に火事で焼かれてしまったのである。1946年のことであった。

まっ白な地面に描いた黒い線

ソルトフラッツの記録挑戦について、アイストンはこう語っている。

「塩の地面では、十分に注意して進むルートを用意しなくてはなりませんでした。我々は1本かそれ以上の黒い線をコース全長いっぱいに書きつけました。これらのラインは、ドライバーのガイドとして働きます。なにしろ数フィートの操舵のズレであっても、破滅的な結果に繋がりかねないんです。ええとですね、もしも正確なラインから数フィート離れたとしましょう。そうしたらそのギャップはどんどん広がっていって、もう元に戻ることなんてできないはずですから」

まっ白な塩の地面に、アイストンのチームは黒々と線を引いた。そして、その線に沿って、サンダーボルトは350マイル超(約563km/h)の速度で駆け抜けていったのである。

ソルトフラッツの“亀裂”を再現

ジョージ・アイストンとサンダーボルトを記録へと導いた黒い線。その象徴的なモチーフは、「ランドスピード コレクション」のキャビンに活かされている。ステアリングホイールの12時位置に入れられたパーフォレーション(穴)加工は、「黒い線」へのオマージュであり、シートのセンターラインにも同様のデザインを採用している。

さらに、ダッシュボードやコンソールの蓋部分には、ソルトフラッツの地面と同じ亀裂を再現。まるで本物の地肌のようにリアルな表現が目を惹くが、それもそのはず、実際にボンネビルの地面をデジタル技術でトレースしたデータを使用しているという。

ドーンの「ランドスピード コレクション」は、左右リヤシートの間に山並みのシルエットを彫りこんだ加飾パネルも装備。かつてアイストンもきっと目にしていたはずの、ボンネビルの地平線の向こうにそびえるシルバーアイランド山地を表現したものだ。

鮮やかなイエローのアクセントがもつ重要な意味

ところで当初サンダーボルトの車体は未塗装の状態だったが、それが想定外の問題を引き起こした。最初の記録挑戦のとき、ソルトフラッツのまっ白な地面を背景にした磨かれたアルミボディは測定器に検知されず、正確な数字を得ることができなかったのだ。そこでアイストンの発案により、サンダーボルトには大きな黒い矢と、黄色の円が描かれることになった。

そしてその象徴的な鮮やかなイエローは、「ランドスピード コレクション」の内外装にアクセントとして使用されている。やはりイエローを印象的に使ったクロックはサンダーボルトの計器をイメージしたものであり、針の先にもやはりサンダーボルトのアイコンである黒い矢をデザインしている。もちろんそこには、アイストンが樹立した速度記録「357.497mph(約575.335km/h)」が誇らしげに刻まれている。

83年前のあの日の夜空を天井に

「ランドスピード コレクション」はアイストンが授与された3つの栄誉にも祝辞を捧げる。アイストンは第一次世界大戦時にミリタリークロス(武功章)を、1938年の記録達成後にはフランスのレジオン・ドヌール勲章を、そして1948年に大英帝国勲章(OBE)を与えられている。その祝辞として、ドアトリムにはオリジナルの勲章と同じシルク製のグログラン織りを装備。配色もそれぞれの勲章をイメージしたものとしている。

“勲章トリム”下のアームレストも運転席、助手席共に特別仕様となっている。たっぷりとパッドを詰めこんだ快適なアームレストは、風格漂うクラブチェアを思わせるボリューム。これはアイストンが自分の運転席へ好んで採用していた意匠で、そのユニークな佇まいをレース仲間も楽しんでいたという。

また、レイスの天井には1938年9月16日のソルトフラッツの夜空を再現。アイストンとサンダーボルトが記録を更新した記念すべき日の星座が、スターライト ヘッドライナーに描き出されている。ちなみにひとつひとつ緻密に配置された星の数は、じつに2117個にのぼるという。

ランドスピード コレクションはドーン25台、レイス35台の合計60台が作られるが、予定生産分はすべて完売している。

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