あのクルマが欲しい。でも予算を抑え、格下のこちらで充分満足できる。その理由、その強い思いを自動車評論家2人に語ってもらう。決して「やせ我慢」を推奨する企画では……ない。
【画像ギャラリー】上を見たらキリがない「これで充分ですCAR」はこれだ!!
旧基準と顔ぶれ激変で実燃費に近づいた!? 最新WLTCモード燃費 ベスト10
※「欲しい」と「でもこれで充分」という2つのクルマの代表的グレードの価格差を、写真下で紹介しています。
※ベストカー2021年2月26日号より転載
【日本車編】文/竹岡 圭
あのクルマが欲しい。「でも、車格下のこちらもイケる」。その理由を竹岡氏がズバズバ語る。
■ルーミー/トールが欲しい。でも、N-BOXで充分だね。その理由は…
コンパクトカーのなかで、ルーミー/トールに求められるものは、まず広さですよね。それも縦方向の広さ。その点、ルーミーの全高1735mmに対し、N─BOXはFFで1790mm、4WDで1850mm。圧倒的に高いわけです。大は小を兼ねるという言葉がありますが、もう1550mm超えた時点で立体駐車場には入らないわけですから、こうなると高けりゃ高いほうがいい! ってなモンです。
さらにルーミー/トールを選ぶ方は、座席アレンジでフラットな荷室を作り、自転車を積みたい! なんてニーズもあるはず。言うまでもなくN-BOXは“そのフラットなスペース“を作り出せる特技があるのです。
また、カタログスペック的な最低地上高は、ルーミー/トールの130mmに対し、N-BOXは145mm。この15mmは物を持ち上げることよりも、凸凹をクリアすることができる性能が15mm高いと考えたほうがよほど価値が高いですよね。15mm分は腕を鍛えるということで。……以上、室内の作りだけでもN-BOXで充分CAR。
ルーミー「カスタムG」:191万4000円(写真上)、N-BOX「G・EXホンダセンシング」:164万2300円(同下)→価格差は27万1700円。
●これで充分査定値「80」
広さ&フラット。軽でも室内は格上に勝るのです!
■レクサスNXが欲しい。でも、XVで充分だね。その理由は…
レクサスNXにはハイブリッドとターボの2種類のパワートレーンがあります。そしてこのクルマを選ぶ方は「重さとパワーを考えると、ターボがいいんだよね」という方も多いらしいんです。そう、NXにはスポーティな走り味を求める方が多いということになりますね。
同じ方向を向くSUVならXVという選択肢もあります! XVのエンジンは言うまでもなく水平対向エンジンなんですよ。水平対向のメリットは、エンジン高を低く、搭載位置を低くできることにあります。つまり重心が下がる。クルマを走らせるうえでは、重心が低いほうが圧倒的に有利なのは言わずもがななので、ここにまず成り立ちからしての、XVのアドバンテージがあるわけです。
さらに、走りを楽しみに遠出するとお金もかかりますよね。XVは全車レギュラーガソリン仕様なんです。NXのターボはプレミアムガソリン仕様。カタログ燃費の数値的には微妙な差がありますが、これはレギュラーvsプレミアムの価格差で充分取り戻せるレベルだと思いますよ。
NX「300Fスポーツ」:521万8000円(写真上)、XV「2.0e-Sアイサイト」:287万1000円(同下)→価格差は234万7000円。
●これで充分査定値「70」
スポーティさもあるSUV。ならばアドバンテージのあるXVを。
■ステップワゴンが欲しい。でも、フリードで充分だね。その理由は…
ステップワゴンの「わくわくゲート」が使われているところ、実際見たことありますか? いや私もね、これが出てきた時は「さすが! ないものを作るホンダらしい発想!」と感動したんです。でも、実際街中で使われているところ、テンで見ないんですよねぇ。
というのも、1BOX型ミニバンの場合、リアドアは跳ね上げて開口部を大きく使うとか、雨や日差しを遮る屋根に使うとか、そんな場合が多いと思うんですよ。
わくわくゲートの場合は、ドアの代わりのような乗り降りや小さめ荷物の積載を想定しているのですが、例えば結局3列目シートにしっかり人が座っちゃってると、ドアとして使うには背もたれを気合で乗り越えるか、人が右側に寄って左側のシートを畳んで……、なんていうことになっちゃうわけです。
そして荷物の場合、このドアから積めるサイズだと、横のスライドドアで用は足りちゃうことが多かったりして……。そうなると、ドアを開けるスペースも、もっと少なくてすんじゃいますからね。
つまり、スペース容量は違うけれど使い勝手的にはフリードでも困ることはさほどないのが現状でございます。ラゲッジとリアドアの話だけでも、ほら、フリードで充分でしょ!
ステップワゴン「スパーダホンダセンシング」:292万500円(写真上)、フリード「Gホンダセンシング」:216万400円(同下)→価格差は76万100円。
●これで充分査定値「85」
「わくわくゲート」の優位性なし。フリードが「ちょうどいい!」
■ランドクルーザープラドが欲しい。でも、エクリプスクロスで充分だね。その理由は…
ランクルって世界に誇るブランド力がありますよね。憧れのクルマです。でも、エクリプスクロスには、世界に誇れる性能があるんです。
それが顕著なのがPHEVモデル。世界広しといえど、急速充電器が使えるPHEVのSUVって、コレと兄弟車のアウトランダーPHEVのたったの2台だけなんですよね。
そして、回生ブレーキの強さをコースティングモードも入れた6段階で任意に、しかも走行中にパドルシフトを使って行えるというのも、また、ガソリン満タンにしておけば、家庭用の最低限使う電力を1週間賄えてしまうという給電力を持っているのもこの2台だけ……という頼もしさ。
さらに、4WD性能がスゴイんです。S-AWCというランサーエボリューションXで磨きあげた曲げるための4WDを搭載し、SUVとは思えないくらいグイグイ峠を攻められちゃう。クルマの重量配分の関係で、“攻められる度”はアウトランダーよりもエクリプスクロスのほうが上だったりして、とにかくスゴイんですよ。
もちろんこのクルマ、あのパリ・ダカで初優勝した日本車パジェロを作ってきた三菱が作ってますから、生き残るための4WD性能もお任せあれ。街も山もドンとこいです!
ランドクルーザープラド「TX Lパッケージ」:429万8000円(写真上)、エクリプスクロスPHEV「M」:384万8900円(同下)→価格差は44万9100円。
●これで充分査定値「80」
PHEVモデルなら走りも制御も給電も充分以上かも!?
【輸入車&日本車編】文/松田秀士
完成度の高い輸入車、いいな~。が、同じ方向性ならこの日本車で!と松田氏が吠える。
■アルピーヌA110が欲しい。でも、GRヤリスで充分だね。その理由は…
アルピーヌA110が欲しい! わかりますその気持ち。ポルシェケイマンSに比べたらめちゃ安いし、インテリアも質感が高くて、ハンドリングは自由自在のコントロール性。エンジンパワーもあるし、そのレスポンスとエキゾーストノートが、たまらなくそそるよね。
しかーし、A110が安いといっても800マン円ちょっと上回る価格。ミドシップ専用プラットフォームだし安くはない。ならば、GRヤリスでいいんじゃないの? GRヤリスはレースカーと同じようなプロセスで作り上げているし、しかも4WD。
あのフェンダーのグラマラス感はA110の比じゃないし、威圧感ならGRヤリスは負けてない。すれ違いできない道で出会ったら、おまえ下がれよ! ってクルマが勝手に言ってます。
しかも、RZグレードでも400万円切る。こっちでしょ!
A110「ピュアブルーアルピーヌM」:826万円(写真上)、GRヤリス「RZ」:396万円(同下)→価格差は430万円。
●これで充分査定値「83」
威圧感なら負けていない。しかも、価格は半値だ!
■ベンツGLBが欲しい。でも、RAV4で充分だね。その理由は…
プレミアムブランドのメルセデスまでもがSUVに力を入れる時代。特にCクラス以上のモデルはかなり魅力的。ま、価格的にはお高いが。ディーゼルモデルもラインナップされているし、3列7人乗りも。それにあの“クルマじゃんけん”(渋滞での割込み時など)しても負けそうにないルックス、魅力的だよね。
ただ7人乗りだけど、2列目以降のシートや足元は狭いね。それに比べてRAV4は2列モデルだけど、クルマそのもののクオリティは高いよ。プラットフォームは上級車種のハリアーにも使われるくらいだからね。
それにPHVモデルまであって、ニーズに合わせて車種選択できることも魅力的。特に2・0Lターボのアドベンチャーは独自の4WDシステムを採用し、雪道やオフロードも走りたい君には魅力的。そりゃメルセデスでしょ! って言ってた時代は遠い昔……かな?
GLB「200d」:512万円(写真上)、RAV4「アドベンチャー」:331万円(同下)→価格差は181万円。
●これで充分査定値「90」
上級車種のプラットフォームを使い、車種選択の幅も広~い!
■ボルボV60が欲しい。でも、レヴォーグで充分だね。その理由は…
ボルボ、もはやプレミアムブランドだね。なかでもV60、いいクルマ。ボルボラインナップでボクのイチオシのクルマですよ。でもね、日本車に目を向ければV60に匹敵するクルマがあるんです。昨年度COTYのイヤー・カーに輝いたレヴォーグですよ。
「V60のように高価でない」と言おうとボルボのサイトを覗いてみると499万円からとなってる。意外に低価格じゃんと思ったが、オプション付けるとどんと上昇する。そこがプレミアムブランドのプレミアムたるゆえんだけど。
さて、それに匹敵するレヴォーグのSTI Sport EXグレード。電子制御の可変減衰力ダンパーが装備され、下半身鍛えてきた! って感じで頼もしい硬さに。コンフォートにすると締まっているけど乗り心地よし。この可変ダンパーはV60にはありません。なのでコンフォートでの乗り味はV60よりソフトで、まさにコンフォタブル(快適)。
そして何よりも注目なのがアイサイトX。高速道路での渋滞では60km/h以下でハンズフリー(両手放し)が可能。実際に体験し、ビックリ。ノロノロ走行のなか、前車との車間距離も割り込まれないレベルだし、前走車への追従加速も問題なし。正直デザインはV60には劣るけど……、充分です!
ボルボV60 「B5 Rデザイン」:624万円(写真上)、レヴォーグ「STI Sport EX」:409万2000円(同下)→価格差は214万8000円。
●これで充分査定値「78」
ほどよい硬さで乗り心地よし。V60を相手にできる日本車です。
■BMW Z4が欲しい。でも、ロードスターで充分だね。その理由は…
Z4、イイですねー! 日本で発売されるプレミアムスポーツ輸入モデルの一台といえ、最安モデルが580万円です。おお、意外と安い。これに対してロードスターはそれの半額以下ほど。それを比較するの無理があるけどなぁ……と思いつつ、実はZ4、母国ドイツに行けばファブリックシートで6MTなんて廉価版モデルもあるそうで、これなら「ロードスターで充分CAR」と即答したい。
ちなみに、580万円のZ4 sドライブ20iの標準グレードはレザーシートじゃないし、ACCは付きません。素のクルーズコントロールです。ロードスターも最安Sモデルには、クルーズコントロールすら付いてませんけどね……。
松田秀士的に深読みすると、やはり“とどのつまり”はメカニズムですわ。ロードスターってこの小さなボディでめちゃ凝っているんです。
リヤサスはマルチリンクでZ4も同じ。しかし、フロントサスはロードスターがF1マシンと同じWウィッシュボーンに対して、Z4はストラットを採用。あのしなやかな足のこなしは、こんなスペックにこだわるからなんですね。
いろいろ述べたけど、結論としては「ファン・ツーに走るならロードスターで充分」、ボクはこれを強く感じます。
BMW Z4「sドライブ20iスポーツ」:630万円(写真上)、ロードスター「Sレザーパッケージ」:316万9100円(同下)→価格差は313万900円。
●これで充分査定値「82」
プレミアムスポーツの上をいく、走りのメカニズムの凝り具合。
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「これで充分ですCAR」は1月26日発売『ベストカー』(2021年2月26日号)の掲載記事です。
2021年2月26日号では、ほかにも気になる記事が盛りだくさん。スクープ「次期型WRX S4今年の秋、登場!」をはじめ、集中BIG特集「平成の名車31年間の物語」や、脱ガソリン車時代を読み解く「冷静に考えよう クルマの電動化」、豪雪によるクルマの立ち往生に対する事前対策と対処法をまとめた「備えあれば憂いなし!冬の豪雪立ち往生 事前準備&対応法」、新型コロナの影響で中止となった東京オートサロンのオンライン「バーチャルオートサロン」で紹介されたクルマを特集した「コロナ禍でも楽しませてくれまっせ!百花繚乱~バーチャル東京オートサロン出展車」、人気連載「テリー伊藤のお笑い自動車研究所」など幅広い世代が楽しめる読み物を掲載しています。
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みんなのコメント
こういう発想でクルマ選びをするのは
実につまんないし、それらに乗ってる人だって
そんな理由で乗ってる訳ではないからな。