ダイハツのディーラーはビデオ通話を使ったオンライン商談を、年内に全国の店舗で対応ができるように進めている。
また昨年からはコロナ禍で感染拡大を防ぐために、人との接触を減らせる新車販売でのオンライン商談は注目されているが、このオンライン商談は実際にどのように行われているのか? そして今後はほかのディーラーにも広がっていくのか?
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新車販売事情に詳しいモータージャーナリスト・小林敦志氏が解説する。
文/小林敦志
写真/AdobeStock(Angelov@ AdobeStock)、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】やがては日本でも主流に?? オンライン商談の“今”をギャラリーでチェック!
■コロナ禍でオンライン商談が注目されているが……
2020年春、日本国内での新型コロナウイルス感染拡大の第1波が起こり、4月から5月にかけて、全国的に緊急事態宣言が発出された。
そして外出自粛が要請され“ステイホーム”が提唱された頃に、新車販売業界では、“オンライン商談”や、“リモート商談”(以下オンライン商談)などといわれるものが注目された。
ダイハツ販売店は全国の店舗でオンライン商談ができるように進められている
販売店のセールマンがビデオ会議アプリなどを活用したパソコンやスマホを通じて、新車が欲しいというお客さんを接客できる商談方法である。
日本では、その導入が注目された時期や導入の背景から、新型コロナウイルス感染予防対策のひとつとしてオンライン商談があるように見られがちであるが、“自動車先進国”アメリカでは新型コロナウイルス感染拡大前から積極的な活用が行われていた。
■デリバリーまでサポート! アメリカのオンライン新車販売
日本とはレベルの違う勢いでオンラインショッピングの普及が進んだアメリカでは、当然ながらオンラインでの新車購入というものが新車販売でも展開されたのである。
アメリカのオンライン商談は、まず欲しいクルマを扱うディーラーのウェブサイトを開いてしばらくすると、オンライン専任のセールスマンがチャットで「何かご質問はありますか?」というような形でアプローチしてきて、そのまま商談が可能となっている。
そして契約の締結はおろか、購入したクルマのデリバリーサービスもあるので、ディーラーへは一切出かけることなく、新車を購入することが可能となっている。
アメリカではオンライン専任のセールスマンが対応する(写真:AdobeStock snvv)
■思うようには進まない!? 日本のオンライン商談のいま
それでは日本のオンライン商談はどうか? 現場のセールスマンに話を聞くと、どうもアメリカほど便利な販促ツールというわけでもないらしい。
「日本とアメリカとの違いは、アメリカではアクセスしたそのタイミングで商談がスタートできます。一方の日本では、氏名、電話番号、メールアドレスなどを入力し、さらにオンライン商談希望日時を専用フォームで入力し、申し込みをしなければなりません」とは事情通。
さらに次のように話を続けた。
「新車販売では“クルマが欲しい”とお客思った瞬間、“鉄は熱いうちに打て”とばかり、ある意味勢いに任せてセールスマンは売り込みますが、日本のオンライン商談では、商談開始までにワンクッションできるので“鉄は冷めても打て”になる。そのため、商談はお互い思うようには進まないケースが多そうです」。
現場のセールスマンに聞いても、「何台も乗り継いでいただいている、気心の知れたお客様ならばオンライン商談でも、値引き交渉までスムーズにできます。しかし一度もお会いしたことない、オンライン商談が初対面となるお客様への積極的な値引き提示はなかなかできませんし、様子見となるのでその場で契約意思の確認までは進まないですね」と話す。
高級外車ディーラーのように以前からなじみの顧客がメインの販売店はオンライン商談はしやすいが
また、日本での新車購入時には、最終的に書面での注文書への署名及び捺印、印鑑証明など、購入車の新規登録に必要な紙ベースの書類を用意する必要がある。
それらの書類は郵送で送ってもらう手段もあるが、一般的にはショールームに持ってきてもらうか、お客さんの自宅などに取りに行くか、どちらにしても、一度はお互いが実際に会わなければならないことになる。
それに、下取り車があれば当然、下取り査定を行わなければならないので、おそらくオンラインで、軽く条件を詰めて、後日ショールームで下取り査定を行ったあとに、契約へ向けての最終的な購入条件を詰めていくことになるだろう。
アメリカとは異なり、すべてがオンライン上で済むというわけではないのである(アメリカでは乗っていたクルマの処分は個人間売買が多い)。
■「微妙な空気が掴めない」オンライン商談のデメリットと24時間で対応できるアメリカ
「お客様が新車の購入を決断される時は、『それでは買います』といった正式な意思表示などないことが多いですね。微妙な空気をセールスマンが読んで『決まったな』と思った瞬間に、一気に注文書作成に進みます。オンラインでは、とにかく肌感覚とか空気(雰囲気)の共有ができないのが厳しいようですね」とは事情通。
またアメリカでは新車のクリアランスセールなどを行う。
そのコマーシャルにはセール期間の告知があり、例えばその期間は「10月1日のミッドナイトまで」としている。つまり、オンライン商談の窓口は24時間開いているということなのだ。
しかも、現在は有人で対応しているが、数年先にはこれまで行っていた時の大量なビッグデータを使って、AIがオンライン商談の窓口を担うのではないかともいわれている。
しかし日本では、一部専任者を置いているようだが、現場のセールスマンが関わるケースが目立っている。しかも商談受付時間はディーラーの営業時間内となっている。
セールもあり、アメリカのオンライン窓口は24時間開いている(写真:AdobeStock Rawpixel.com)
■すべてがオンラインで行えないとメリットは薄い
また、アメリカではオンラインで新車を買おうとする人は、地元開催のモーターショーへ出かけ、展示車を見て、お気に入りがあれば会場内で試乗を受け付けているので、そこでチェックして、購入本命車を決めることができるのだ(いまはコロナ禍なのでショー開催は中止が多いようだ)。
そのため、過去には週末にディーラー街へ行くと、商談はもちろん、試乗のために多数のお客さんが訪れていて賑わっていたのだが、いまはシーンと静まり返っている。
つまり、できる部分だけオンライン化しても、そのほかが1980年代と変わらないアナログ的な手続きなどを引きずっていれば、オンライン商談はアメリカのように目に見えて“便利なツール”にはなかなかなりえないのである。
オンラインですべてが行えるような環境整備なしでのオンライン商談の導入はメリットが薄いことは間違いないだろう。
余談だが、アメリカでは、各地元のディーラーの協力を仰ぎ、原価ギリギリまでの値引き条件で見積りを比較でき、納得したディーラーのウェブサイトへそのままアクセスして契約できる、“見積り比較サイト”も展開されている。
ちなみに、日本で新車購入時の新車新規登録申請などの手続きはOSS(ワンストップサービス)と呼ばれるオンライン化されたもので行うのだが、登録手続き完了までの時間は、以前の紙を使った申請手続きよりも余計にかかるようになったとのことである。日本のデジタル化とは所詮その程度だとの声もある。
■新車購入者が世代交代すればオンライン化が進むかも
ただ、「オンライン商談で申請するお客様は、いままではなかなか接触できなかったタイプの方であったり、とても多忙でショールームに足を運ぶことができないといった方も多いので、新規開拓という意味では有効ですね」と話すセールスマンもいた。
日本の場合は、新車購入者は若干高齢化が目立っている。ただし、自動車ユーザーの世代交代が進めば、当然ながら売るほうの世代交代も進むことになる。
やがて“スマホなしでは生活できない”層が新車購入者のメインになれば、オンライン商談を今以上に魅力あるシステムにして、使いこなすようになるのではなかろうか。
日本の新車販売市場はいまや、最盛期のバブル経済時代の半分ぐらいまでに規模が縮小している。少子高齢化も進むので、セールスマンのなり手もどんどん減っていくだろう。
新型コロナウイルスの感染拡大が収束したあとは、“市場縮小と少子高齢化対策”として、オンライン商談が世の中のデジタル化も進み、ブラッシュアップされ、新車購入の定番として広まっていくかもしれない。
業界団体のガイドラインもあり、いまはディーラーショールームの新型コロナウイルスの感染予防対策もしっかりしたものとなっている。
残念ながら現状の限定的ともいえるオンライン商談による新車購入のデジタル化では、いまのところはディーラーへ出かけたほうが物事は早く進むといえるだろう。
ディーラーは感染予防対策は万全。現状はディーラーへ行ったほうが早い
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みんなのコメント
試乗と本契約は店舗で
が一番よいのでは?
店舗には一時間もいなかったと思う
あとは自宅に納車されるのを待つだけ