この記事をまとめると
■日本のEVやPHEVの特徴のひとつとして「蓄電池」としての役割がある
環境云々とか関係なくて「身を守るため」にEVやPHEVに乗るのはアリ! 自然災害の多い日本ならガチで検討すべき選択だった
■海外ではEVを「単なる移動手段」としか考えていない
■一部海外メーカーでは日本の事情を加味して給電機能を備えるモデルを拡充してきた
日本車の給電機能は世界でも進んでいる
電気自動車(EV)は、移動できる蓄電池としての機能を備える。車載の駆動用バッテリーは、軽自動車の日産サクラや三菱ekクロスEVで20kWhある。登録車のアリアでは、容量の大きいB9で91kWh、トヨタのbZ4Xは71.4kWhある。ちなみに、住宅向けの蓄電池はおよそ10kWhであり、軽自動車のEVでさえ、その2倍の容量をもつ。
蓄電池としての機能を活かし、万一の停電に際して、住宅に電気を供給すれば、スマートフォンの充電はもちろん、冷凍食品や生ものを保存する冷蔵庫を継続的に使用可能にする。
ことに、東日本大震災を経験した日本は、すでに日産リーフと三菱i-MiEVが市販されていたので、蓄電機能を活かせれば災害支援に役立てることができることを学んだ。そこで震災後、日産自動車は自宅への給電機能をニチコンと開発し、三菱自動車は車載バッテリーから家庭電化製品を動かすことのできる装置をそれぞれ開発して、市場導入した。
EVからの給電機能は、日本が発端であり、最先端にある。
三菱は、EVだけでなく、プラグインハイブリッド車(PHEV)からも給電できる機能を採り入れた。トヨタもプリウスPHEVで給電機能を用意したが、PHEVからの給電には賛否両論ある。
給電機能は、CHAdeMOの急速充電口から電気を取り出す。一方、PHEVは基本的に急速充電を必要としない。自宅で充電し、遠出の際はハイブリッドとしてエンジンを用いて低燃費走行を行えるからだ。ところが急速充電口を持つと、経路充電でEV利用者と重なることがあり、電気でしか走れないEV利用者に不便をもたらす。
輸入車ブランドも給電機能を装備し始めた
海外のEVやPHEVで、給電機能が必ずしも設定されないのは、EVを移動手段として単純に考えているからだ。また、急速充電口があればできるものではなく、クルマから電力を取り出すためのプログラムの書き込みが必要になる。それは原価を高めるので、取り組みが遅れている。
また、CHAdeMOは、充放電の接点のほかに、通信専用の接点を持つが、欧米で使うCCS(コンバインド・チャージング・システム)は通信専用の接点がなく、充電用接点で兼用する。したがって、充放電中にクルマと充電器や、家庭での電力量の変化を通信で確認することができない。CCSで給電できないわけではないが、何か不都合が生じる懸念が残る。ちなみに、テスラは、CHAdeMOと同様に、充放電中に通信できる機能を持つ。
そうしたなか、日本市場に導入されている韓国のヒョンデや中国のBYD、そしてメルセデス・ベンツは、日本市場の動向を学び、給電機能を備える。
給電機能は、現状、万一の災害対応と、太陽光発電を自宅に備える家庭向けという限定的な利用しか見込まれていないが、将来的には、地域で電力を融通しあうバーチャル・パワー・プラント(VPP)への拡大といった将来像が10年以上前から検討されている。人工知能(AI)を活用し、充放電管理を適切に行える電力網を構築すれば、地域や国全体での合理的電力の利用が前進し、省エネルギーがさらに進むと考えられている。
その前の段階でも、発電が不安定な再生可能エネルギーの電力安定にも、EVの蓄電機能を活かせる。それらはもはや、自動車メーカーだけの仕事ではなく、地域や国全体のエネルギー需給の管理とサービスの提供という事業になり、新たな産業の創出が欠かせない。そこに新たな雇用も生まれることになる。
EVの普及は、エネルギー問題の解決と、雇用の創出につなげることができ、21世紀の暮らしを快適にする期待がある。
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