2026年から新しい規格のパワーユニット(PU)が使われることになっているF1。この新レギュレーションは多くのメーカーの興味を惹きつけるはずだったが、ルノーはこの新規格のPU開発を諦めることになると見られている。
しかし複数のチーム代表は、ルノーがF1のPU開発から退くことは、2026年のPUレギュレーションが誤っているからではないと考えている。
■2026年F1新PU規則は、“ハイブリッド元年”のような勢力図変化を起こさない?「ひとつの領域で大きな差別化は難しい」とレッドブル
2026年からのF1のPUは、現行のPUとエンジンの排気量や気筒数などは同じだ。しかし、現在のPUに含まれているMGU-H(熱エネルギー回生システム)は廃されることとなった。
このMGU-Hは、熱として”捨てていた”エネルギーを回収し、PUで再利用することで熱効率を引き上げることを狙ったものだったが、複雑かつ高価であるため、市販車への転用が難しく、PUメーカーとしては悩みの種となっていた。しかしMGU-Hが廃止されることで、PUの開発コストが大きく引き下げられることにつながるはずだ。
これに伴い、MGU-K(運動エネルギー回生システム)で扱うエネルギー量は大きくなる。この技術は、ハイブリッド車のみならず、電動車などの技術に転用することも可能。その大容量のエネルギーを扱うバッテリーも、他の産業なども転用可能な技術だ。
さらに、2026年からはガソリンの使用が禁止され、持続可能燃料のみを使うことも義務化される。
これらの要素により、次期F1は多くの自動車メーカーからの興味を惹きつけている。アウディがF1に初めて参戦することを決め、2021年限りでF1を撤退したホンダも(HRCを介してレッドブルへ現在もPU供給を続けてはいるが)、正式復帰することになっている。また、自社内でPUを開発することを選んだレッドブルは、フォードのサポートを受けることになり、さらにGM(キャデラック)も、2028年からのPUマニュファクチャラーに名を連ねる予定だ。
まさにメーカーがこぞって参戦する近未来のF1。しかしそんな中、ルノーはこの次世代PUの開発を諦めることを決めたようだ。ただ傘下のブランドであるアルピーヌとしてのF1参戦は、他メーカーのPUを使うことで継続する見込みだ。
アルピーヌF1のチーム代表であるブルーノ・ファミンは、次のようにベルギーGPの際に語っていた。
「ヴィリー-シャティヨンのスタッフに発表されたプロジェクトは、リソースを他の分野に再配分することだ。そのひとつがヴィリーで製造されているF1用PUの開発で、そのリソースとスキルをブランドの新技術の開発、ブランドの新製品の開発に充てるというものだ」
「このプロジェクトが承認されれば、アルピーヌF1が独自のPUを開発するのではなく、PUを他から購入するという結果になるだろう」
「様々なPUメーカーと話し合いを行なっている。ただ当面は何も行なわれない。これはプロジェクトなので、そのプロセスが完了するまで、いかなる決定も下すことができないんだ。いくつかのPUメーカーと話し合いを行なっているが、このプロセスが完了するまで、何の取り決めもできないんだ」
しかしルノーが新規格のPUを開発しない可能性があるということは、この新規格がメーカーにとって望ましいモノになっていないことを示しているのではないか? そんな懸念も生じる。しかし複数のチーム代表は、そういう懸念はないと考えている。
「メーカーを失うのは、いつでも悪いニュースだと思う。もちろん、チームとしてアルピーヌは残るがね。でも2026年の新規則の主な目標のひとつは、できるだけ多くメーカーを惹きつけることだったんだ」
RBのローレン・メキーズ代表はそう語った。
「アウディがプラス1、アルピーヌがマイナス1になるということだ。だから、良いニュースではないと思う。幸運なことに、F1に多くのメーカーが参入している時期ではある。だからF1は、この変化を受け入れることができると思うが、PUメーカーが減るのは良いことではない」
一方で2026年からアウディのワークスチームとなるザウバーのアレッサンドロ・アルンニ・ブラビ代表は、次のように語った。
「我々が理解すべきだと思うのは、今回のアルピーヌの動きが、新しいPUレギュレーションや、F1が2026年に向けて進んでいる方向性とは、関係のない決定だということだ」
そうアルンニ・ブラビ代表は言う。
「新たなPU規格は、新しいメーカーにとっては非常に魅力的だと思う。アウディはこのレギュレーションのおかげで、自動車業界全体がF1に参加することに関心を持っているという完璧な例となった。F1はテクノロジーの柱であり、将来のモビリティ技術ソリューションの、最高のテストベンチだからだ」
「このことはルノーの決定とは異なると思う」
「F1としては、このことを明確にする必要があると思う」
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