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唯一無二の国産スーパーカー 伝説の名車初代NSXはいかにして生まれたか

掲載 更新 36
唯一無二の国産スーパーカー 伝説の名車初代NSXはいかにして生まれたか

 今となってはやや信じがたい話だが、かつて国産車にも採算を度外視して開発されたとしか思えないようなクルマがあった。本気でフェラーリを超える性能を目指して開発され、伝説の名ドライバー、アイルトン・セナが開発に携わった。

 その名も初代NSX。

失敗があるからこそ今がある! ホンダの失敗作は今激安か?

 現在は2代目となる現行型NSXが販売されているものの、独特なテイストと美しいデザインは今も多くのファンを魅了しており、中古車価格は高騰を続けている(極上品は3000万円を超える)。

 そんな初代NSXは、どのような経緯で生まれたのか。また、登場した瞬間から「名車だ」と言われていたのだろうか。当時を知る自動車ジャーナリストに、その状況を伺った。

文/片岡英明 写真/HONDA

【画像ギャラリー】 国産車唯一のスーパーカー初代NSX 秘蔵写真で振り返る美しい面影

■フェラーリやポルシェと戦えるスポーツカーを

 絶頂期を迎えていた1980年代の日本自動車界。そこにありそうでなかったジャンルのクルマが、高性能でルックスも流麗なミッドシップのスポーツカーであった。いわゆる「スーパーカー」と呼んでも差し支えないような、夢のあるクルマだ。

 1984年6月にトヨタがMR2を発表。日本初の量産ミッドシップカーだが、これはエンジンが1.6Lの直列4気筒DOHCだった。これでは名門のフェラーリやポルシェと同じ土俵には上がれない。

伝説の名車 初代NSX

 このMR2が発売された頃、ホンダもミッドシップカーの基礎研究を行なっている。当初はミドルクラスの2L前後の4気筒エンジンを積むスポーツカーを考えていた。だが、次第に構想はエスカレートし、熱を帯びてくる(この「次第にエスカレートしていった」という開発工程を説明するのは難しいのだが、当時のホンダの開発部隊を取材すると、まさにそうとしか言いようのない雰囲気だった)。

 ホンダはエンジンサプライヤーとしてF1に参戦していた。

初代NSXの走りを見よ!

 その当時、本田技術研究所の社長だった川本信彦さんは、第1次ホンダF1のプロジェクトに関わるなど、無類のモータースポーツ好きである。この川本さんの強力なバックアップもあり、フェラーリ328やポルシェ911とガチで勝負できるスーパースポーツの開発がスタートするのである。

 ホンダの最新テクノロジーを積極的に活用し、それまでにない新世代のスーパースポーツを生み出そうと意欲を燃やした。

■快適にドライブできるスーパースポーツ

 初代NSXのラージ・プロジェクト・リーダー(LPL)を務めたのは上原繁さんだった。クルマ好きの首脳陣によって企画されたこのスポーツカープロジェクトは、精鋭のエンジニアを集めて開発することになったのである。

初代NSX 透過図

 こだわりのひとつは、ボディ設計である。軽量化を徹底するために、世界で初めてオールアルミ製モノコックボディに挑戦した。アルミ材は軽量だが、剛性値は鋼板の3分の1だ。だからアルミの種類を厳選し、新しい工法を用いて組み上げた。モノコックの骨格からボディ外板までアルミ材としたことで、鉄よも155kgも軽く、車重は1350kgに収まった。

初代NSXシート

 人間優先のパッケージングも、それまでのスポーツカーにはなかったものだ。

 キャビンは視界が開け、長身の人でも最適なドライビングポジションを取ることができる。

電動パワーステアリング採用

 また、四季を通して快適なエアコンを装備し、パワーシートやパワーウインドーなども標準で付く。今では常識となった電動パワーステアリングもいち早く採用している。リアに設けられたトランクにはゴルフバッグが2個も入るなど、実用性能も一級だ。我慢せずに、快適にロングドライブを楽しめるスーパースポーツがNSXなのである。

■走行性能や快適性だけでなく安全性能も時代を先取り

 ドライバーの後ろに搭載するパワーユニットは3Lクラス最強のパフォーマンスを誇る90度V型6気筒DOHC・VTECだった。F1と同じターボも検討したが、切れ味鋭い自然吸気のDOHC・VTECにこだわって採用した。過給機に頼らず自主規制値いっぱいの280psの最高出力を絞り出し、最大トルクも30.0kgmを達成している。その気になれば8000回転オーバーまで軽やかに回った。トランスミッションは5速MTのほか、電子制御4速ATを設定している。

90度V型6気筒DOHC・VTEC

 サスペンションは前後ともインホイール型ダブルウィッシュボーンで、これもアルミ製の凝ったものだった。ブレーキは2ポット式のベンチレーテッドディスクだが、ABSに加え、時代に先駆けてトラクションコントロールも標準装備する。また、SRSエアバッグシステムをステアリングに内蔵した。快適装備だけでなく、安全装備に関してもNSXは時代を先取りしていたのである。

トラクションコントロール標準装備

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■日本絶頂期を駆け抜けたNSXの歴史

 NSXは年号が昭和から平成に変わった1989年2月のシカゴショーでベールを脱いだ。

 参考出品車は「NS-X」を名乗っていたが、翌90年9月に正式発売されたときは「NSX」に変えられている。

初代NSX ホワイトボディ

 栃木の専用工場で生産されるのは、1日25台が精いっぱいだった。5速MT車の販売価格は800万円、4速AT車は860万円のプライスタグを付けている。ちなみにメインマーケットの北米では新生アキュラチャネルのイメージリーダーとしてアキュラNSXを名乗った。

 シカゴショーで存在を知っていたし、バブルの絶頂期だったから、発売されると富裕層が争うように注文している。

 高価なスポーツカーだが、少量生産だったし、生産性も悪いから瞬く間にバックオーダーを抱えてしまった。納車まで1年待ちになったから、待ちきれずに逆輸入した左ハンドルのアキュラNSXに手を出した人も少なくない。また、新古車も出回ったが、これは新車以上の価格を付け、話題をまいている。が、バブルが弾けたこともあり、発売から2年ほどで納車争いは収まった。

初代NSX タイプR

 1992年11月、レーシングテクノロジーを結集し、ドライビングプレジャーを徹底的に追求したNSX「タイプR」を限定発売の形で販売している。

 標準仕様と比べ、車重は120kgも軽い。1995年春のマイナーチェンジではドライブ・バイ・ワイヤやシーケンシャル4速ATを導入し、ルーフ部分を脱着できるようにしたタイプTも送り出した。この時期は氷河期で、スポーツカーファンも大きく減少したので、限定車のタイプR以外は販売も落ち着いている。

初代NSX-R 標準仕様より車重は120kg軽い

 さらに1997年2月にタイプSを追加した。パワーユニットは3.2LのC32B型V型6気筒DOHC・VTECだ。5速MTはクロスした6速MTへと進化している。

 そして2001年に化粧直しを行い、ヘッドライトを固定式に変更した。これに続き02年5月には第2世代のNSXタイプRを投入する。

2代目現行型NSX

 生産を終えたのは2005年だ。デビューから15年以上も日本を代表するスーパースポーツの王者に君臨し、世界のスポーツカーのその後に多大な影響を与えたNSXは、中古車になっても熱狂的なファンに愛され続けている。

疾走する2代目NSX

■名車初代NSX人気は時を超え続ける

 初代NSXの人気は、いま新たに見直されている。

 フロントマスクが個性的な最終モデルは、新車で手に入るときは販売が低調だった。ヨーロッパのスーパースポーツが世代交代したこともあり、新車のときは今一歩の注目度だったのだ。が、今は中古車価格が高騰している。

初代NSXの評価は再び高まった

 前期型も底値のときは300万円を切っていたが、魅力が見直され、新車以上の中古車価格を付けるNSXも珍しくない。とくにタイプRは、驚くほどの高値で取引され、中古車が出るのを待ち構えているファンが数多く存在する。 2代目が登場したことにより、初代NSXの評価が再び高まったのだ。

■ホンダNSX主要諸元表 1990年9月13日発表時、5速MT

●全長4430×全幅1810×全高1170mm
●ホイールベース:2530mm
●車両重量:1350kg
●エンジン型式:C30A
●総排気量:2977cc
●最高出力:280ps/7300rpm
●最大トルク:30.0kgm/5400rpm
●サスペンション前/後:ダブルウィッシュボーン
●タイヤサイズ前/後:前205/50ZR15、後225/50ZR16
●販売計画(発売当時):年間2000台(国内)
●価格:800万3000円

初代NSX シルバー

【画像ギャラリー】 国産車唯一のスーパーカー初代NSX 秘蔵写真で振り返る美しい面影

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みんなのコメント

36件
  • 発表時は高価格が話題だったと思うが、現物見たら2千万でも安いと思える。
    それほどに他の車とは次元の違う造り込み。
    F1でも名を挙げていたころで、当時のホンダがいかに最高を目指していたのかがよくわかる車。
    日本の財産です。
  • 初代NSXのパワステは『AT車』のみです。MT車は『重ステ』だったと思いますが…。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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