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“小ベンツ”の登場はメルセデスをどう変えたのか?

掲載 更新 22
“小ベンツ”の登場はメルセデスをどう変えたのか?

1982年に登場した5ナンバー・サイズのメルセデス・ベンツ「190E」は、日本でも大ヒットした。バブル期、“小ベンツ”と揶揄された190Eの登場に伴うメルセデスの変化とは? 小川フミオが考える。

斬新なコンセプト

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メルセデス・ベンツの日本におけるベストセラー、Cクラスのオリジンはこれ。1982年に「190E」が発表されたのは、この時期最大のニュースだったと思う。メルセデス・ベンツじしんにとっても、ここが大きなターニングポイントだった。

全長4420mm、ホイールベース2665mmというボディは、いまの「マツダ3セダン」より、ひとまわりかふたまわりコンパクト。その小さなサイズに、メルセデス・ベンツらしい高品質感を盛り込んだコンセプトは斬新だった。

日本では当時の輸入代理店「ヤナセ」によって1984年に発売され、500万円を超える高価格だったにもかかわらず、バブル経済期へ向かう好景気の波にのって、大ヒットした。ちなみに北米にも同時期に輸入が始まり、メルセデス・ベンツ史上最大のヒットを記録している。

このときついたニックネームが“小ベンツ”。Sクラスが“大ベン”で、190が“小ベン”などと、笑っちゃう愛称もあった。190Eを作るきっかけのひとつと言われるBMW「3シリーズ」とともに、当時の日本では、女子大生が“彼氏に乗っていてほしいクルマ”の筆頭格になるなど、流行現象にまでなった。

190Eは(と3シリーズは)、しかし、チャラチャラしたクルマではない。122psという最高出力に対して車重が1100kgもあり、エンジンをぶん回さないと速く走れなかったものの、リアサスペンションにマルチリンクを使うなど凝った機構で、ハンドリングは上等だった。

“つねにエンジンよりシャシーが速い”というメルセデス・ベンツの製品づくりのモットーを地でいくクルマだった。いまも、190Eが忘れられない、というひとがいるぐらい。それもよくわかる。

190Eはやや非力、という市場の声に応えて、車種が追加されていった。1985年に2.6リッター6気筒搭載の「190E2.6」、86年に2.3リッター4気筒の「190E2.3」を追加投入、というぐあいだ。どちらもけっこうパワフルで、私は個人的に、鼻先が軽めの後者がとくに好きだった。

高性能モデルの登場がメルセデスを変えた

1983年にメルセデス・ベンツは、「190E2.3-16」を発表した。英国のコスワースに開発を依頼した2.3リッター4気筒DOHCエンジンを搭載するもので、これには驚かされた。そして、これにより、久々のモータースポーツへの復活の狼煙を上げたのである。

すぐにグループAツーリングカー選手権に参戦、(旧)ドイツツーリングカー選手権(DTM)では、1988年に発表した「190E2.5-16エボリューション1」に続き90年に送り出された「同エボリューション2」が活躍し、1991年と1992年に選手権を獲得した。

1990年代、メルセデス・ベンツは、ミヒャエル・シューマッハーをはじめ、フリッツ・クロイツポイントナー、カール・ベントリンガーを“メルセデス・ジュニア”と呼んでバックアップし、彼らは世界スポーツカー選手権などで活躍した。

1991年はメルセデス・ベンツの耐久マシン、C11を彼ら3人が操縦してル・マン24時間レースで5位に入賞したこともあった。メルセデス・ベンツはその後F1でも大きく躍進し、現在の活躍ぶりにいたったことは読者のかたもご存知のとおりだ。

「173kW(235ps)の190E2.5-16エボリューション2の活躍ぶりは、ベイビーベンツ(とよばれた190)の世間の概念をひっくり返した」と、メルセデス・ベンツはのちに自社の歴史を振り返ったプレスリリースで記している。

高性能車は売れるというテーゼについても、AMGラインの充実ぶりをみれば、よくわかる。BMWのMモデルとはちがって、多少の経験がないとやや怖い思いをする、ということのないのがメルセデスAMG。高い安全マージンに守られて高性能を楽しめるとあって、人気が衰えない。メルセデスAMGも190(190E2.5-16)の遺産といってもいいのでは? と、私は思う。

今見ても古くない

当時、メルセデス・ベンツのヘッド・オブ・デザインを務めていたイタリア人ブルーノ・サッコ氏の目利きぶりは、躍動的なプロポーションと、張りのある面づくりがもたらすクオリティ感にあらわれている。1982年発表なのに、2021年のいまも充分に魅力的だ。

内装のつくりも、じつにメルセデス・ベンツ的。1988年9月のマイナーチェンジまでは、シートの作りひとつをとっても、Sクラスに匹敵するような凝ったものだった。ドアを閉めるときの音も、遠くから聞いていたとしても、すぐ、メルセデス・ベンツとわかるものだった。

当時の合成樹脂を使ったダッシュボードは耐久性が高く、いい状態のクルマに出合える可能性もある。

ただし、いま乗るには、エアコンとパワーウィンドウは泣きどころだ(世界的に)。そこが要注意点だ。

文・小川フミオ

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みんなのコメント

22件
  • 190Eの登場でメルセデスがどう変わったか?一番は幅広い顧客を獲得できたことでしょうね。
    日本導入当初は500万を超える価格だったようだが、平成初期には400万を切る価格のグレードまで用意され、バブル景気も相まって高級ブランドだったメルセデスベンツの普及に一役買ったのは間違いないだろう。
  • > 今見ても古くない

    そんなこたぁない。
    いま見ると、十分ショボく、古い。 笑
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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