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乗り替えるクルマが見つからない! 孤高の名車「S2000」の魅力と後継車が出ない理由

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乗り替えるクルマが見つからない! 孤高の名車「S2000」の魅力と後継車が出ない理由

 10年間のモデルライフを通じて内外装や走りの質感が進化した

「走る楽しさ」と「操る喜び」を具現化しつつ、環境への配慮と高い衝突安全性を兼ね備える「新世代リアルオープンスポーツ」をコンセプトとして開発された、ホンダのS2000。

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 1999年4月にデビューし2009年に生産を終了して以降、その後継車は熱烈なファンの間でつねに発売が期待され、自動車メディアでも幾度となく待望論が展開されているが、残念ながらいまだ実現には至っていない。

 ここでは、S2000を2台乗り継ぎ約12年間所有し続けている筆者が、S2000ならではの魅力と進化の過程を振り返りつつ、後継車が現れない理由を考えてみたい。

 S2000といえば、クーペボディと同等以上のボディ剛性を実現したハイXボーンフレーム構造、9000rpmを許容し最高出力250馬力を実現したF20C型2.0リッター直列4気筒DOHC VTECエンジン、シフトストローク36mmのクロス&ローレシオ6速MT、分離加圧式ダンパーを用いた前後ダブルウィッシュボーン式サスペンションなど、専用開発された走りのメカニズムの数々と、それらがもたらした「タイプR」を凌ぐ運動性能に、注目しないわけにはいかないだろう。

 しかしながら筆者は、他の2シーターオープンカーと比較しても際立つオープン走行時の爽快感と実用性の高さ、そして10年間のモデルライフを通じて着実に進化した内外装と走りの質感も、S2000ならではの大きな魅力であると強調したい。

 まずオープン走行時の爽快感に関しては、絶対的な運動性能よりも優先順位が高かったのではないかと思える設計が、そこかしこに見受けられる。

 そのもっとも端的な箇所はAピラーだろう。最高速度が250km/hに達するスポーツカーとしては極端に傾斜角が少なく、空気抵抗の面で不利に働くのは想像に難くない。だがそのおかげで、ウィンドウフレーム上端が乗員の眼前に迫ってこないため圧迫感が少なく、また斜め前方の死角も低減されている。

 そのうえ、デジタルメーターの採用によりダッシュボードが低く抑えられ、ショルダールームも広く取られているため、前後左右上下とも室内空間に余裕があり視界も広い。さらに、コクピット後方からの風の巻き込み低減に配慮したロールバーガーニッシュ形状やウィンドディフレクターのおかげで、高速域でも快適にオープンエアモータリングが楽しめるのは、見逃せないポイントだ。

 実用性については「スポーツカーやオープンカーに求めるのはナンセンス」と筆者自身思わなくもないが、実際にファーストカーとして所有すると、それが決して無視できない要素としてつねに付きまとってくる。

 とりわけトランクの容量は買い物や旅行、仕事に使えるか否かの分かれ道になりやすいが、その点においてゴルフバッグ1個の積載を可能にしたS2000は合格ライン。幅だけではなく深さもあるため、2人分の食料品とペット用品(具体的には1カ月分の猫缶とトイレの砂)、あるいは撮影機材一式を積み込むことが可能だ。

 そして内外装と走りの質感だが、率直なところデビュー当初は、338万円という価格に対し決して高いとは言えないものだった。

 だが2001年9月の一部改良で、外装色が13色、内装色が5種類に拡大され、幌も黒と青から選択可能なうえリヤウインドウがビニールから熱線入りガラスに変更された。同時にサスペンションのセッティングも変更されたことで、ラグジュアリーオープンカーとしての性格も帯びるようになってくる。

 これが端的に表現されたのが2002年10月に発売された、専用のボディカラーにゴールドピンストライプ、キルティング加工入りタン本革内装などが与えられた特別仕様車「ジオーレ」だろう。

 その後2003年10月のフェイスリフトでは内外装のデザインが一新。17インチタイヤの採用とともにボディ・シャシーも強化されたことで内外装と走りの質感が劇的にアップし、ここでS2000はひとつの完成形に至った。

 生産環境や環境面、コストなどを考えると新型の開発は難しそうだ

 2005年11月にはエンジンを2.2リッターのF22C型に変更する大規模なマイナーチェンジが行われたが、ボディ・シャシーのセッティングは従来のものを踏襲。だがシート形状をはじめ内外装の細部が見直され、さらなる質感アップが図られている。

 2007年10月には、専用の大型スポイラーとサスペンションが装着され、S2000のスポーツカーとしての側面が強調されたモデル「タイプS」が追加。また全車にVSA(横滑り防止装置)とサテライトスピーカーが標準装備された。

 こうしてほぼ非の打ち所のない万能性を備えるに至ったS2000だが、2009年6月末、多くのファンに惜しまれながらも生産終了。2020年6月にはホンダアクセスから「20年目のマイナーモデルチェンジ」をコンセプトにした純正アクセサリーが発売されたものの、S2000自身は世代交代を受けることなく、生産終了から12年もの時が過ぎた。

 では、新世代のS2000の誕生を阻む要因は、一体どこにあるのだろうか?

 一つは生産拠点の問題だろう。S2000の生産においては、少量生産のスーパースポーツカーであるNSXのために作られた栃木製作所高根沢工場(2004年5月より鈴鹿製作所TDラインに移転)を活用することが可能だった。

 だが、2022年3月にはS660の生産が終了する予定となっており、現行型NSXの生産工場「パフォーマンス・マニュファクチュアリング・センター」はアメリカ・オハイオ州にあるものの、NSXともどもその先行きは不透明。つまり現時点で、S2000のような専用部品と手作り工程の多い少量生産車に適した工場が、存続の危機に瀕しているのだ。

 2020年度の四輪事業の営業利益率が1.6%と低水準にあり、工場の閉鎖やF1からの撤退、車種数の整理など大規模なコスト削減策を相次いで決定している昨今では、なおのこと維持が困難なことだろう。

 また、S2000が持つ魅力の大きな柱であるエンジンも、環境規制が当時より遥かに厳しくなり、電動化への社会的要請が全世界的に強まっている現在では、F20Cのような専用設計の超高回転高馬力型NAを望むのは難しい。現実的にはシビック・タイプRに搭載されているK20C型2.0リッター直4直噴ターボエンジンを縦置きに対応させたうえ、さらなる性能アップを図るのが妥当な線と思われる。

 それでもコストを度外視さえすれば、新たなS2000を発売することは不可能ではないだろうが、当然ながら販売価格は大幅に上昇する。安全基準も22年前より大幅に強化され、価格上昇の大きな要因となっていることを考慮すると、その販売価格は600万円超、ともすれば初代NSXデビュー当時の価格(約800万円)に近くなるのではないか。これでは購入ユーザーがごく一部の富裕層に限られてしまう。

 だからこそ、S2000ユーザーには次に乗り換えるべきクルマが存在しない。筆者もその一人であり、恐らく生涯乗り続けることになるだろうが、S2000を上まわる魅力を備えた新たなFRオープンスポーツカーがホンダから生まれることを願わずにはいられない。……たとえそれが無理難題だとしても。

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みんなのコメント

40件
  • >ウィンドウフレーム上端が乗員の眼前に迫ってこないため圧迫感が少なく

    ここなんだよね。ロードスターに開放感がないのは。
  • その内中古のかなり走行したのなら安くいつか買えるかなと思ってたらあれよあれよと言う間に高値に。
    まあでも自分が新車で買ったホンダももう30年目になるけど現役。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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