■コンパクトなFRが数多く存在していた頃のスポーツモデルを振り返る
30年ほど前から、世界的に数が減少してしまったのが比較的コンパクトなサイズのFR車です。現在、日本車ではマツダ「ロードスター」と、トヨタはまだ正式にはアナウンスしていませんが、新型のデビューが控えているトヨタ「86」/スバル「BRZ」があり、一定の人気を保っています。
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海外ではBMW「Z4」「M3/M4」やメルセデス・ベンツ「Cクラス」「SLC」などが存在しますが、高額なモデルなため、だれもが手軽に入手できるクルマではありません。
一方で、1980年代から1990年代にかけて、日本市場では数多くのコンパクトFR車が存在。
FR車の魅力というと、駆動輪と切り離された前輪がもたらす優れたハンドリングや、アクセル操作でクルマの姿勢や向きをコントロールする楽しさが挙げられ、走りを重視した若い世代のユーザーを中心に絶大な人気を誇っていました。
そこで、若者たちを夢中にさせた往年のFRスポーツ車を、5車種ピックアップして紹介します。
●日産4代目「シルビア」
日産「シルビア」は、1965年にスペシャリティカーとして誕生しました。初代はあまりにも高額だったことから普及しませんでしたが、2代目以降は価格を抑えたスポーティなFR車として人気となります。
そして、1983年には4代目のS12型が登場。この世代からドアミラーが標準となり、先代の角型4灯ヘッドライトに対して、スポーツカーとしては定番のリトラクタブルライトを採用した、ウェッジシェイプのボディに一新されました。
ボディタイプはクーペとハッチバックが設定され、販売チャネルの異なる兄弟車の「ガゼール」も引き続いてラインナップ。
エンジンラインナップは多く、高性能グレードには2リッター4気筒DOHCの「FJ20E型」に加え、ターボを装着した「FJ20ET型」を搭載し、最高出力は190馬力(グロス、以下同様)を誇りました。
また、足まわりも進化し、フロントにストラット式、リアにセミトレーリングアーム式を採用するシリーズ初の4輪独立懸架となっています。
次世代の5代目S13型シルビアが大ヒットしたのと比べ、S12型はヒット作にはなりませんでしたが、硬派な印象が残ったシリーズ最後のモデルとして、いまも語り継がれる存在です。
●いすゞ「ジェミニ ZZ」
現在、国内ではトラックに特化したメーカーとなっているいすゞですが、2002年までは乗用車を生産しており、「117クーペ」や「ピアッツァ」など、数々の名車を世に送り出してきました。
いすゞは1971年にGMと提携し、1974年には当時、同じくGM傘下だったオペルが生産していた小型車「カデット」をベースにした、オーソドックスなスタイルのFRセダン/クーペの初代「ジェミニ」を発売。
同時期のトヨタ「カローラ」や日産「サニー」よりもワンランク上の車格で、いすゞの主力車種となります。
そして、1979年には最高出力130馬力を発揮する1.8リッター直列4気筒DOHCエンジンを搭載した「ZZ(ダブルズィー)」シリーズを追加ラインナップ。
さらに1981年には、強化サスペンションやLSDを標準装備した「ZZ/R」を発売し、「ベレットGTR」の再来と評されます。
外観は派手な演出は施されていませんが、リアバンパーの下から覗く斜めにカットされたデュアルマフラーが、スポーティさを強調し、エキゾーストノートも低音が響く迫力あるサウンドを奏でました。
1985年にFF化された2代目ジェミニが登場しましたが、初代もしばらくは併売され、1987年に生産を終了。その後1990年代には、SUVを除くいすゞの乗用車はすべてFF車となりました。
●三菱「ランサーEX GSRターボ」
1973年に誕生した三菱初代「ランサー」は、大衆車というポジションながらスポーティなグレードも設定され、国内外のラリーで活躍しました。
ところが、1979年に発売された2代目の「ランサーEX」シリーズは、排出ガス規制強化によるパワーダウンや、100kg以上増えた車重の影響が色濃く、初代ほどのスポーティさは影を潜め、まさに牙が抜かれた状況でした。
そこで1981年に、最高出力135馬力を発揮する1.8リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載した「ランサーEX 1800GSRターボ」を追加ラインナップ。
当時、ターボ化は各メーカーに波及し、ライバル車も次々にパワーアップを図っており、ランサーEXターボも1983年のマイナーチェンジでインタークーラーが装着され、最高出力は160馬力まで向上しました。
外観ではインタークーラーを覗かせるスポイラー形状のフロントバンパーに、逆文字「TURBO」のデカール、小ぶりなリアスポイラーを装着することで、直線基調のボディをスポーティに演出。
足まわりも専用にチューニングされ、コントローラブルなハンドリングによって、硬派なスポーツセダンとしての人気を確立します。
その後、1987年にランサーEXシリーズは生産を終了。高性能セダンの系譜は「ギャランVR-4」、そして「ランサーエボリューション」へと継承されました。
■現役時代よりも引退してから大人気となった伝説のFR車とは
●トヨタ4代目「カローラレビン/スプリンタートレノ」
1966年に誕生したトヨタ初代「カローラ」は、庶民でも手が出せる大衆車として、マイカーの普及に大きく貢献した偉大なクルマです。
マイカーの普及が本格化すると、さらに高性能さに対するニーズが高くなり、1972年には2代目カローラ/スプリンターに、1.6リッター直列4気筒DOHCエンジンを搭載する「TE27型カローラレビン/スプリンタートレノ(以下、レビン/トレノ)」が発売され、たちまちスポーツドライビング好きな若者を中心に、大人気となりました。
その後もレビン/トレノは代を重ね、1983年にスタンダードなカローラ/スプリンターがFF化されるなか、FRのままとされたAE86型レビン/トレノがデビューします。
ボディタイプはクーペとハッチバックが設定され、外観は先代のTE71型が直線基調のデザインだったのに対し、全体的に丸みを帯びたモダンなフォルムに一新。
また、レビンは固定式ヘッドライト、トレノはリトラクタブルヘッドライトを採用したことで、イメージが大きく分けられました。
搭載されたエンジンは、1.6リッター直列4気筒DOHC16バルブエンジン「4A-GEU型」と、1.5リッター直列4気筒SOHCを搭載した廉価版のAE85型もラインナップ。
4A-GEU型は最高出力130馬力を発揮し、現在の水準では決してパワフルではありませんが、高回転域までスムーズに吹け上がるフィーリングと、900kg台の軽量な車体と相まって、スポーツドライビングが楽しめました。
AE86型レビン/トレノは発売と同時に若者から支持を得ますが、ホンダ「シビックSi」などライバルの台頭で、人気は控えめのまま1987年に生産を終了
しかし、次世代のAE92型がFFだったことによって再評価され、その後、コミック「頭文字(イニシャル)D」の影響から、人気が急上昇したのは記憶に新しいところです。
●マツダ2代目「サバンナRX-7」
1967年にマツダは、世界初の量産ロータリーエンジンを搭載したスポーツカーの「コスモスポーツ」を発売。その後はロータリーエンジンのフルラインナップ化を進め、さまざまな機種にロータリーエンジンを搭載しました。
一方で、コンパクトでパワフル、ハイパワーなロータリーエンジンは、スポーティカーにふさわしいエンジンという考え方へとシフトしていき、1978年に初代「サバンナRX-7」が登場すると、徐々にロータリーエンジン搭載車は絞り込まれていきます。
そして、1985年には2代目サバンナRX-7が登場。初代から大きく進化したシャシに、185馬力を発揮する1.3リッター2ローターターボエンジンを搭載しました。
外観はリトラクタブルヘッドライトを継承しつつ、均整のとれたスポーツカーとしての美しいフォルムへと、大きく進化させています。
また、日本車では初となる対向4ピストン・アルミブレーキキャリパーの採用や、フロントのホイールハブまでアルミ化するなど、ピュアスポーツカーとして足まわりに一切の妥協はしていません。
1989年のマイナーチェンジでは、ロータリーエンジンの要ともいえるシール類の改良などでスロットルレスポンスを大幅に向上させ、最高出力は205馬力まで向上。
2シーターで専用のサスペンションが与えられた限定車「∞(アンフィニ)」や、シリーズで唯一のオープンカー「カブリオレ」もラインナップされました。
サバンナRX-7は、ロータリーエンジンならではの、スロットルペダルを踏み込んでいればどこまでも回転上昇しそうな加速感と、リア・マルチリンクサスペンションによる優れた旋回性能によって、いまも多くのファンを魅了してやみません。
※ ※ ※
2019年の末にトヨタ「マークX」が生産を終え、2020年の秋にはレクサス「GS」が消滅し、FR車がさらに減少してしまいました。
また、BMWも2019年の夏に新型「1シリーズ」を発売しましたが、FF化されたことが大いに話題となったほどです。
しかし、FRの魅力が失われてしまったわけではなく、マツダは近い将来にFRのスポーツセダンの発売を予定しており、まだまだFRの灯は消えません。
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