これまでスクーデリア・アルファタウリと呼ばれていたレッドブル傘下のイタリアンチームは、2024年シーズンのF1に「ビザ・キャッシュアップRB」として参戦することになった。正式名称が発表されて以来このチーム名称が大きな反響を呼んでいるが、この新名称の裏にある戦略は、F1では目新しいモノではない。
この記事のタイトルを読んで「そのまま読めばいいじゃないか」と思う読者もいるだろう。それはその通りなのだが、そこにロジックがあるのだ。
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アルファタウリからビザ・キャッシュアップRBへの名称変更は、チームのSNSでの“勇み足”によって正式発表前から既に周知のことだったが、タイトルスポンサーを務めるビザとキャッシュアップを全面に押し出した正式名称が公のモノとなってからは賛否両論が寄せられている。
名称に対する美的感覚や価値観については、人それぞれの意見があるだろうし、あまり重要なことではない。実際、誰がどう思おうと、この名称に慣れてしまえば話題として取り上げられることもなくなるだろう。
ただ、ビザ・キャッシュアップRBのようなチーム名称に対する否定的な意見の中には、スポーツが変容し、ビジネスやマーケティング的な利害が露骨に表れているというモノもある。しかし、F1は変わったのだろうか?
チーム名にスポンサーを入れること、あるいは単にチーム名/メーカー名を正式名称にしないことは今に始まったことではない。1968年の「ゴールドリーフ・チーム・ロータス」に始まり、1974年の「マルボロ・チーム・テキサコ(マクラーレン)」や1983年の「フィラ・スポーツ(ブラバム)」、2018年までの「アストンマーティン・レッドブル・レーシング」など例に事欠かない。
F1エントリーリストにはこうしたマーケティング戦略が満載だ。その変遷を見てみると、2020年代のF1では特に変化が起きているように見えるが、その根本は変わっていない。
基本的にアイデンティティの重要性は不変であり、上記にあるチーム名がその好例と言える。これらのスポンサーがどれほど重要だったとしても、今日残っているのは歴史的なコンストラクターの名前だけなのだ。
レッドブルの優れた戦略
レッドブルが打ち出したセカンドチームの名称は実に賢明だ。チームは長らく噂されてきた“レーシングブルズ”と名乗ることもできたはずだが、単なる“RB”としたことで、メディアではスポンサー名も入れて言及せざるを得ない、スポンサーとしては喜ばしい状況を作り出すことができたのだ。
このチームをアルファタウリと呼び続けることも、かつてのトロロッソ(あるいはミナルディ)と呼ぶことは正しくない。そしてレーシングブルズと呼ぶのは、F1チームではなくその背後にいる会社を指すこととなる。これはザウバーがステークF1(2023年までのアルファロメオ)の背後にいる会社であり、2015年にマルシャF1の後ろにマノーがいたのと同じだ。
ただRBと呼ぶのはあまりに薄っぺらで、なによりレッドブル・レーシングと混同してしまう危険性がある。という訳で、ビザ・キャッシュアップRBと呼ぶことが、事実を捻じ曲げること無く、混乱を招く可能性が最も低い呼び方だと思われる(そう呼ばざるを得ないのかもしれないが……)。
結局のところ、シーズンが開幕していない現段階から、今後どのような名称が広く定着するのかを考えるのは難しい。おそらく一般のファンに定着するのは、スポンサー名を全て含む名称を呼ぶことに対抗してレーシングブルズと呼ぶか、RBと呼ぶかのどちらかだ。中には頭文字を取って「VCARB(ヴィカーブと発音)」と呼ぶことを提唱する人々もいるが、これは実況解説者泣かせの選択だろう。
チームの最高経営責任者(CEO)を務めるピーター・バイエルが2023年末に「ジェネリック」なアイデンティティになると語った時、彼はこれを暗示していたのだ。
トロロッソ、アルファタウリ、そしてRB:白紙だからこそできるマーケティング戦略
そうすると、ビザ・キャッシュアップRBというチーム名称が何も意味を成さないことが見えてくる。名称からアイデンティティをここまで消すことができるのなら、このチームにとってアイデンティティの有無は問題ではないということだ。
実際、イタリア・ファエンツァに本拠地を置くこのチームは、レッドブルのセカンドチームになって以来、独自のアイデンティティを持ったことがない。トロロッソは単にレッドブルのイタリア語訳であり、アルファタウリも単なるレッドブルのアパレルブランドの名前だ。RBやレーシングブルズはレッドブルを連想させるモノにすぎない。
またトロロッソとアルファタウリの時代には、イタリア語で馬小屋やチームを指すスクーデリアが名称に入れられていた。今回の名称はイタリアへの関連性がないが、それがあったからといって、このチームにアイデンティティが生まれるという訳でもない。それはファクトリーのアイデンティティであり、チームそのものではない。
レッドブルは傘下の2チームで完璧な“駆け引き”を演じていると言える。まずレッドブル・レーシングはF1界のリーダー的存在であり、ブランドのアイデンティティを体現している。一方でセカンドチームは真っ白なキャンバスであり、そのままマーケティング活動に利用できるのだ。
もちろんその他のチームでは、メルセデスAMGペトロナスはメルセデス、アストンマーティン・アラムコはアストンマーティン、BWTアルピーヌはアルピーヌといった具合に、自分たちが何者であるかが明確に示されている。
シャシー製作でダラーラと提携を結び、フェラーリから最大限パーツを購入する、おそらく“コンストラクター”からは最もかけ離れたモデルケースであるハースでさえ、アイデンティティを捨てることはできない。
そしてプライベーターであるウイリアムズは、このリストの中で最も本質的なケースだろう。本家の手を離れた今、将来を予測することはできないとしても、その名前は依然として大きな歴史と意味を持っている。
では、ザウバーはどうだろうか? ペーター・ザウバーが起こしたコンストラクターとしてメルセデスと共に1989年のル・マンを制するなど成功を収め、独自のアイデンティティを築いた。
しかしメルセデスの尖兵としてF1に出場して以降、時にBMWに買収されたりアルファロメオにネーミングライツを売却したりと、ザウバーという名前が表に出てこない時期も長い。アルファロメオが2023年末で離れても、ザウバーは2024年と2025年にステークというスポンサー名でF1に参戦。2026年からはザウバーを買収するアウディのワークスチームとしてグリッドに並ぶこととなる。
このようにザウバーは、F1チームを運営しながらも“裏方”に徹するスタイルのコンストラクターだ。聖書にもある通り、太陽の下に新しいモノは何ひとつない。かつて起こったことは、これからも起こりうるのだ。ある意味、レーシングブルズもこのスタイルを踏襲していると言える。
F1への関心が高まり、スポンサー活動が活発化し、チームも最大限その波に乗ろうと動いている。誰もがF1での露出を利用したいと考えており、チームはパートナー企業をアピールする最良の方法を模索している。言及せざるを得ないタイトルスポンサー枠の誕生は、スポーツとしての成功の代償でもある。
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