2020年度も軽販売No.1。N-BOXのバカ売れがホンダに招いた功と罪とは?
2017年以降、国内販売の1位はホンダ N-BOXの独走状態だ。今ではN-WGNも堅調に売れて、2020年度に国内で売られたホンダ車のうち、54%を軽自動車が占めた。
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過去を振り返ると、1990年頃のホンダの軽自動車比率は35%、乗用車に限れば14%程度だった。2000年頃でも、ホンダの乗用車における軽自動車比率は約35%だったから、N-BOXの登場で大幅に拡大した。
このように軽自動車の販売比率が増えると、ホンダにはさまざまな影響が生じる。そこを考えたい。
文/渡辺陽一郎 写真/HONDA、奥隅圭之
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■N-BOXの誕生で変わったホンダのブランドイメージ
中高年齢層にとってのホンダのイメージは同社が数多く手掛けてきたNSXなどに代表されるスポーツカーだった
まず2011年末にN-BOXが誕生して人気を高めたことで、ホンダのブランドイメージが変化した。
中高年齢層にとって、ホンダのイメージは、CR-X、S2000、NSXなどに代表されるスポーツカーだ。1990年代前半まで、クルマは若年層から見ても憧れの商品で、その象徴とされるスポーツカーをホンダは数多く手掛けた。
この世代よりも若い年齢層では、ホンダのブランドイメージは、ミニバンとSUVが中心になる。ミニバンでは初代オデッセイが1994年、初代ステップワゴンが1996年に発売されてヒット商品になり、ファミリーカーの代表とされた。
そして、1990年代の後半以降に生まれた人達にとっては、N-BOXを中心にした軽自動車とコンパクトカーのイメージだ。これを裏付けるのが、先に述べたホンダの国内販売状況になる。
2020年度に国内で売られたホンダ車の54%が軽自動車で、そこにフィットとフリードを加えると81%に達する。今のホンダのブランドイメージは「小さなクルマのメーカー」で、売れ筋車種も「軽自動車+フィット+フリード」に特化された。
その結果、ステップワゴン、オデッセイ、CR-V、シビックといった往年の人気車は、すべて「残りの29%」に片付けられてしまう。N-BOXが絶好調に売れた結果、ホンダのブランドイメージが小型・低価格の方向に移り、ミドルサイズ以上のホンダ車は売れなくなった。
■人気車の一極集中が招く国内販売への影響
2020年度の軽自動車販売数ナンバーワンはN-BOXだったが、全車を含めた国内販売総数ではホンダはトヨタ、スズキに次いで3位となった
このように限られた車種だけが売れ筋になると、ホンダの国内販売総数も伸び悩む。2011年以降は、日産の新型車が減ってホンダの国内販売順位はトヨタに次ぐ2位に高まったが、2020年(2020年度を含む)は、スズキが2位に繰り上がってホンダは3位に下がった。
さらに月別に見ると、2020年11月以降のホンダは、ダイハツにも抜かれて3位に下がることが増えた。売れ筋が特定の車種に偏ると、それが好調に売れている時は良いが、不調になればメーカー全体の販売実績が悪化する。
昨今のホンダは、半導体の不足によって減産を強いられ、販売の低迷も本来の人気を反映したものではないという見方が成り立つ。しかし、それにしても販売下落は大きく、N-BOXの好調がそのきっかけになった。
今の状況は、N-BOXの売り方にも影響を与えている。販売店では以前から「N-BOXはこれ以上売らなくて良いと指示されている」という話が聞かれた。
2021年の3月決算フェアでも、大半のホンダ車にはカーナビを含めたディーラーオプションのプレゼント、残価設定ローンの低金利などを実施したが、N-BOXは対象外であった。
販売店では「ステップワゴンやヴェゼルのお客様が、子育てを終えてN-BOXに乗り替えることも多い」という。N-BOXは価格の高いホンダ車の需要を吸収するから、いわば「売れ過ぎると困る」クルマでもある。そこで積極的な販売促進を控えるようになった。
■N-BOXのヒットで国内向けの商品開発にも影響大!?
日本仕様のモデルチェンジが遅れ、ライバル車と比べて古さが目立ったアコード
そして「軽自動車+フィット+フリード=国内で売られるホンダ車の81%」の状態が続くと、国内向けの商品開発にも影響を与える。今のところホンダの小型/普通車は豊富に用意されるが、シビックセダンは終わった。S660も生産終了が決まっている。
シャトルも気になる。フィットがフルモデルチェンジしたので、シャトルも刷新されてハイブリッド、安全装備、運転支援機能などを進化させそうだが、販売店では「メーカーからフルモデルチェンジの話は聞いていない」という。
アコードは日本仕様のフルモデルチェンジが遅れた。北米で新型になった後、約2年半を経過して、日本仕様を刷新させている。その間、日本では海外版に比べて安全装備や衝突安全性能が劣る旧型を売っていた。
アコードは複数の地域で売られるから、販売台数の多い順にフルモデルチェンジするのは仕方ないが、フルモデルチェンジの周期が約5年で、日本では2年半遅れるのは長すぎる。ホンダは日本のメーカーだから、遅くとも北米の1年後にはフルモデルチェンジすべきだった。
N-ONEはフルモデルチェンジを行ってエンジンやプラットフォームをN-BOXと同様に刷新したが、ボディパネルは先代型と共通だ。開発者は「N-ONEはN360をモチーフにデザインされ、ボディパネルを変える必要はなかったが、背景には開発コストを抑える目的もあった」という。
以上のようにN-BOXがヒットした後のホンダでは、ミドルサイズ以上の車種を中心にコスト低減が進み、車種が減ったりフルモデルチェンジの周期が長期化している。
また、シビックやCR-Vは、国内で一度消滅させた後に販売を再開したが、もともと海外向けの商品だから割高な価格と相まって販売は低調だ。買えるだけマシともいえるが、辛辣にいえば、車種だけ調達して水増ししている状態だ。
少なくとも、レジェンド、アコード、クラリティ、CR-Vは、機能から価格まで、日本向けの商品ではない。NSXは実質的に買えない状態で、販売会社のホームページからは削除されている。
■ブランドイメージ変化のしわ寄せはステップワゴンにも?
ホンダ=N-BOXをはじめとする小型車のメーカーというイメージで、商品力の優れたステップワゴンまでが売れ行きを下げている
このようにN-BOXの好調な売れ行きは、ホンダにさまざまな弊害をもたらした。特に歯痒いのは、ブランドイメージの低価格化により、商品力の優れた車種まで売れ行きを下げたことだ。
その筆頭がステップワゴンになる。低床設計で乗降性や走行安定性が優れ、3列目のシートは床下格納だから大容量の使いやすい荷室にアレンジできる。リアゲートには横開きのサブドアを装着して、狭い場所での開閉を可能にした。なおかつ乗員もボディの後部から乗り降りできる。
オデッセイも低床設計で走行安定性が優れ、3列目シートも床と座面の間隔を充分に確保した。そのために3列目の快適性は、足を前方へ投げ出すアルファード&ヴェルファイアを上まわる。オデッセイの多人数乗車の機能は、ミニバンの中でもグランエースに次いで特に優れている。
ステップワゴンとオデッセイには、かつてのVTECエンジンに匹敵する創意工夫が盛り込まれたが、宣伝するのも諦めているから売れ行きは低調だ。優れたe:HEV(ハイブリッド)も埋もれている。
直近のホンダが国内で行うべきは、新型ヴェゼルを入念な販売促進もおこなって売れ行きを伸ばすことだ。2013年に登場したオデッセイ、2015年のステップワゴンも、時間を置かずにフルモデルチェンジさせたい。
手堅く販売できる車種からテコ入れを図り、N-BOXを始めとする軽自動車の販売比率を35%以下に抑え、ホンダ全体の商品力を高めて欲しい。このままなりゆきに任せると、国内のホンダは、販売網も含めて取り返しのつかない状態に陥る。
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みんなのコメント
一向に年収が上がらない中で、じゃあホンダ車、他に何を買えばいいのかと。
N-BOX売らなくていいなんて言っていると、他のメーカーの軽自動車に客が流れていくだけですよ。