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軽自動車に使えない?「95馬力のバイク用660cc・3気筒エンジン」その特性から実現度を考えてみた

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軽自動車に使えない?「95馬力のバイク用660cc・3気筒エンジン」その特性から実現度を考えてみた

660ccの3気筒エンジンを搭載するトライアンフ「デイトナ660」

イギリスのバイクメーカー・トライアンフから新型車「デイトナ660」が発表された際、クルマ好きの中でも話題となったことをご存知でしょうか。

【画像6点】660ccの大型バイク「デイトナ660」と、定番軽自動車「N-BOX」「アルト」を比較

デイトナ660のエンジンは、近年のトライアンフが力を入れている3気筒で排気量は660cc。まさに日本独自の四輪規格である軽自動車を思わせるエンジンで、それでいて95馬力の最高出力を誇ります。

軽自動車ではターボエンジンでも64馬力(自主規制ですが)、自然吸気では50馬力前後が多いことを考えると、トライアンフの3気筒エンジンは驚異的なスペックだと言えます。クルマ好きが「このエンジンを軽自動車に載せたらどんな凄いスポーツモデルになるんだろう」と沸き立ったのも納得ではないでしょうか。

ほかにも660cc前後の排気量を持つバイク用エンジンは数多くありますし、いずれも軽自動車用エンジンより高いパフォーマンスを誇っています。では、バイク用エンジンを軽自動車に載せると、どれほどの高性能を示してくれるのでしょうか。

当記事では660ccちょうどのデイトナ660を例としつつ、軽自動車代表としてホンダ N-BOXスズキ アルトのエンジンスペックを比べてみましょう。

バイク用エンジンは「トルクが細い、圧縮比が高すぎる」説は関係ない?

■デイトナ660:660cc 3気筒 DOHC4バルブ
最高出力95ps/1万1250rpm 最大トルク69Nm/8250rpm ボア×ストローク74.04×51.1mm 圧縮比12.05

■N-BOX(NA):658cc 3気筒 DOHC4バルブ
最高出力58ps/7300rpm 最大トルク65Nm/4800rpm ボア×ストローク60.0×77.6mm 圧縮比12.0

N-BOXカスタム(ターボ):658cc 3気筒 DOHC4バルブ
最高出力64ps/6000rpm 最大トルク104Nm/2600rpm ボア×ストローク60.0×77.6mm 圧縮比9.8

■アルト(NA):658cc 3気筒 DOHC4バルブ
最高出力46ps/6500rpm 最大トルク55Nm/4000rpm ボア×ストローク64.0×68.2mm 圧縮比11.5

昔から「バイク用エンジンはトルクが細いから車重のある四輪には向かない」という声もありますが、最大トルクを見比べるとそんなことはないのがわかります。

デイトナ660のトルクはNA(自然吸気)の軽自動車エンジンとしてはトップクラスの性能を誇るi-VTEC採用のN-BOX用エンジンを凌駕しています。数値上では軽自動車に載せても、十分な性能を持っているように思えます。こうしたエンジンが登場すれば、性能的にはターボ不要論さえ出てきそうです。

また「バイク用エンジンは圧縮比が高いから……」というイメージもあるかもしれませんが、上記の比較を見てもわかるように、どれも圧縮比は12前後となっています。その点については気にせずともよさそうです。

問題となるのは高回転型であることと燃費

しかしながら、結論からいえば「バイク用エンジンは量産・軽自動車には合わない」となります。

同じ660ccの3気筒エンジンであっても、最高出力・最大トルクの発生回転がまったく異なっていることがその理由です。現代の軽自動車において静粛性や低振動というのは重要な要素であり、そのためにはエンジンはできるだけ低い回転数で使いたい……となると、最大トルクを8250rpmで発生するというエンジン特性は軽自動車のニーズには合っていないといえるのです。

とはいえ、デイトナ660のエンジンは最大トルクの約80%を3125rpmから発生するというフレキシビリティに富んだ性能を持っているのも特徴です。単純計算で55Nm前後のトルクを3000~4000rpmの範囲で発生できるのであれば軽自動車に使えそうです。さらにカムプロフィールを変更するなどして、低回転寄りのセッティングにすれば軽自動車のニーズにもマッチしそうに思えてきます。

ただし、燃費性能の面ではバイク用エンジンをそのまま使うのは悪手と言えます。ポイントは「ボア×ストローク」にあります。
ボア×ストロークから見えるエンジン特性としては、「ショートストロークは高回転・高出力型」「ロングストロークはトルク型」などと言われることが多いですが、燃費志向が進む近年のクルマにおいては燃焼室を小さくした「スモールボア」であるほうが重視されている傾向にあります。

たしかにボアが大きいと、バルブサイズも大きくできるので吸排気能力は上がりますが、燃焼室が大きいというのは、熱損失やノッキングといったネガにもつながります。燃費(熱効率)を追い求めるのであればスモールボアのエンジンを低回転で使うことが、現時点でのクルマ用エンジンでは理想的──というのがトレンドです。

デイトナ660に限らず、バイク用エンジンというのはビッグボア・ショートストロークとなっていることが大半です。そのため、ほとんどのバイク用エンジンは、たとえセッティングを変えたとしてもクルマに使うのは向いていないと言えるのです。

バイク用エンジンを載せた意外なクルマ

ただし、バイク用エンジンをクルマに搭載した例はあります。それはBMW i3レンジエクステンダーです。レンジエクステンダーというのは発電用エンジンを積んだEV電気自動車)のことですが、そのエンジンとして同社のビッグスクーターC650用の2気筒エンジンが採用されたことがあります。

もし、バイク用エンジンも燃費(熱効率)を追求してスモールボア・ロングストロークがトレンドとなれば、二輪と四輪でエンジン基本設計を共有する……そんな未来があるかもしれませんね。

レポート●山本晋也 写真●トライアンフ/ホンダ/スズキ/BMW 編集●上野茂岐

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みんなのコメント

24件
  • かつお
    そんなのカタログスペックみてもすぐわかるが、トルクカーブ見たら一目瞭然だろう。
    こんな高回転エンジンどこで使うの?町中のストップ&ゴーには向いてない。
    サーキット用の車なら面白いかもね。
  • mas********
    普通に軽の街乗りで8500まで回すってしんどいネ!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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