ひと昔前のクルマは、ATであってもシフト選択は機械式で行っていた。やがてシフト操作も機械式から電気式へ。機械式からスイッチ式に乗り替える場合、移行にあたっての問題点はないのか?
※本稿は2023年1月のものです
文/国沢光宏、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2023年2月10日号
新型プリウスのシフトが流行の予感!! 混在するシフトは一体どれがイイ!?
■機械式から電気式へ……形も自由になったシフト制御
昔は機械式だったシフトセレクタは今では電気式に。形もレバーである必要はなくなり、設置場所も自由。操作ミスによる万が一の暴走にも制御方法を知っていれば対処できる
ひと昔前はAT(オートマチックトランスミッション)であっても、ギアをセレクトするのはリンクなど使った機械式だった。セレクトレバーを動かした時の手応えも、正しくリンク先にあるセレクト機能を切り替える時のもの。
やがてアクセルをはじめさまざまな機構を電動や油圧で間接的に制御するようになると「セレクトbyワイヤー」になりレバーは単純なスイッチに。当然ながらどこにセレクトレバーを置いてもいいし、形状だって自由自在。その先頭に立ったのがプリウスだった。
ハイブリッドの場合、モーターにも変速機にもパーキングブレーキにも、機械的な操作系は付いていない。最初から電動スイッチだ。こうなると設計側からすれば完全なるフリーハンド。そんなバックボーンから出てきたのが、プリウスで大きな論議となったセレクトシステムだ。
従来の機械式セレクトレバーは一番奥に『P』レンジ。その手前が『R』で『N』を経て『D』というレイアウト。駐車したらレバーを前側に動かす。
プリウスの場合、それまでのパターンと違うため、ミス操作を招いて暴走すると喧伝されたのだった。
さて。私は危険とされるプリウスの初代から3代目まで購入して毎日のように乗ったが、最初からシフト操作で危険だと思ったことは一度もない。
そもそもハイブリッド車だと走り出す時と停止時にしかシフト操作しない。システムを起動させ、止まったらPレンジの繰り返し。Pレンジの位置は自然で私のように数多くのクルマに乗り換えても操作ミスなし。
■万が一の暴走時にも制御方法を用意
プッシュ式シフト採用モデルは電動ブレーキスイッチを引っ張り続けることでアクセルオフとブレーキ制御を同時に行う。運転者はもちろん、助手席に座る同乗者も知っておきたい
最近トヨタも改めてそういった認識を深くしたらしく、一時期は既存のATと同じようなシフトパターンも取り入れたものの、ここにきてプリウスタイプが復活している。ハイブリッドや電気自動車もプリウスパターンの短いセレクトレバーを採用していくんじゃなかろうか。
むしろ課題は助手席に座っている際、運転者が暴走してもニュートラルに戻しにくいこと。Nの場所を数秒間維持すればいいのだけれど、認知度が低くオーナーすらわかっていない。
また、ホンダから始まったプッシュボタン式のシフトも増えてきた。初出しはレジェンドだったと記憶しているが、最近は全モデル採用という流れ。日産まで採用を始めるなど興味深い。
最初は戸惑うものの、慣れれば普通に使えます。加えてプッシュ式シフト採用のモデルは暴走したら「電動ブレーキスイッチを引っ張り続ける」ことでアクセルオフとブレーキ制御を同時に行う。駆動系にダメージを与えることはないので安全な場所で試しておくといい。
最近私が危惧しているのはMX-30から始まったマツダのセレクトレイアウト。DレンジからPレンジに入れるのに、一度レバーを上まで動かし、そこから横に持っていかないとならない。
これまた私が知る限り、ATのセレクターでPレンジに入れるため完全に異なる操作パターンをしなければならないクルマなどない(ジクザク式はあります)。せっかくの「シフトbyワイヤー」なのだからPレンジ一発にすればよかったと思う。
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