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【ヒットの法則300】ケイマンは間違いなくポルシェであり、価格は手頃だが決して「チープな911」ではない

2007年、Motor Magazine誌は特集「ポルシェの民主化」の中で興味深い考察を行っている。911とは異なるスポーツモデルとして当時大きな注目を集めていたケイマンを「購入する」観点から検証、ケイマンとケイマンSの違い、911との違い、MTとATの利点、オプション装備の魅力などに触れながら試乗テストを行っている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年4月号より)

ケイマンか、それともケイマンSか
「いつかはポルシェ」と想い続けている僕にとって、ケイマンはやはり、何とも気になるクルマだ。その最大の理由を誤解を恐れずに告白するなら「車両価格が安いから」である。

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もっとも、もしケイマン購入家族会議のようなものが我が家で開かれて、そんなことを口走ろうものなら「630万円からのクルマを安いと捉える感覚自体がおかしい」と即座に糾弾されるに違いない。市井の人々の普通の感覚では2人乗りのスポーツカーにそれだけの出費は考えも及ばないこと。これはもう、僕が家族にそれとなく打診して経験的に得た実感である。

しかし、ポルシェのクルマとしての価値を知る人にとっては、ケイマンに付けられたプライスタグは、かなりのバーゲンだと思う。

「本当に欲しいのは911じゃなかったのか?」という自問は確かにある。けれど、ベースモデルのカレラでも1000万円の大台を超え、僕の感覚の中ではもはや「不動産の価格帯」に入ってしまった911への道のりはあまりに遠い。しかしケイマンなら、いくらか現実味を帯びて来る。もちろん「清水の舞台から飛び降りる級」の買い物になるのは間違いないのだけど。

値段を考えるなら、さらに手頃なボクスターがあることもわかっている。現在はケイマン/ボクスターともに同じエンジンを搭載するわけだし、さらにはボクスターにはオープンエアを楽しめるという特質まで備わるのだから、これも大いに魅力的な存在だ。だがステアリングを切り込んだ時や、アクセルを踏み込んだ時のレスポンスにわずかな緩さがある。僕がポルシェに求めるのは、どこまでもソリッドなドライビングに耽られる走り味。その点で、ボクスターはやや魅力に欠ける。少なくともケイマンを知ってしまった今ではこれが正直な感想だ。

では、価格のことはひとまず置いておいて、ケイマンと911を較べるとどうなのか。この点に関しては「それぞれに違った魅力がある」というのが僕の結論だ。

これまでにも様々な場面で両者を味わってきたが、例えばサーキットのような限界付近の走りに触れられる場面では、911の容易には頂を見せないハンドリングに大いに魅了され、同時にチャレンジ精神を掻き立てられる。

一方ワインディングロードでは、ケイマンのミッドシップレイアウトによるZ軸まわりの慣性モーメントの低さに舌を巻く。軽快なノーズの動きと、それに遅れずに追従するリアタイヤ。狙ったラインをピタリとトレースできるその心地良さは、ポルシェ各車の中でも際立っているといえるだろう。

テールヘビーなリアエンジンの特質上、ペースが上がるにつれやや緊張感の高まる911。その奥深さこそがこのクルマの大きな魅力なのだが、ワインディングでそれを見極めようとするのは蛮行となる可能性もある。

その点、ケイマンは持てる能力を十分に引き出せたという満足感に浸れるのだ。さらに言うなら、ケイマンは高速でもフラットな安定した姿勢を維持し、速度が上がるに連れややフロントが落ち着かなくなるRRの911カレラより好印象なのである。

「よりイージーでありながらもファン」。ケイマンの走りを911と較べるなら、そう表現することもできる。しかし、だからといって底の浅さなど感じさせないのもこのクルマの嬉しいところで、右足がスロットルと直結しているような高レスポンスを楽しませるフラット6や、ペダル、ステアリング、そしてシートを通して得られるソリッドな感覚も、911と比べて何ら遜色はない。

911に代わるクルマとして、より現実的な選択肢となったケイマンを自らに納得させる贔屓目なのではないか? その2005年の登場時から、僕はこのクルマに触れる度にそのことを自問自答してきた。しかしこれだけ考えても結論は変わらない。ケイマンは紛うことなくポルシェであると同時に、911とは違った楽しさを持つスポーツカーだ。だからこそ633万円からという価格がとても安く感じられる。

ところで、その633万円で買えるケイマンは5速MTのいわゆる「素」のモデルである。もちろんそれでも必要な装備は一通り揃っているし、僕の場合、純粋に走りを楽しみたいのでMTは大歓迎。42万円高のティプトロニックSには、さほど興味はない。だからこれでも十分にハッピーなのだが、走りにこだわってポルシェを選ぶのだから、モデル間の性能差はどうしたって気になってくる。素のケイマンとケイマンSの違いだ。

ケイマンSの6速MTは783万円。150万円の価格差に目眩を覚えつつも、2687ccのケイマンに対しSは3387ccと700ccもキャパシティが大きく、パワーも+50psなのだから納得は行く。問題はその差額を払ってSを選ぶか、はたまた素ケイマンで納得できるか、その二者択一だ。

エンジンによるパワーフィールの違いが大きい
正直なところパワー差は少なくない。それ単体を乗る限り体感的な速さはケイマンも十分で、スポーツカーと呼ぶに相応しい身体能力を備えている。しかしその一方で、Sにはある弾かれるようなパンチが薄いのも事実。軽量/コンパクトなボディに大排気量エンジンを押し込み、痛快な加速を味わうのもポルシェの大きな魅力のひとつだが、その点では245psのケイマンはやや迫力不足と言えるだろう。

今回は5速MTに軽めのオプションを追加した、走りに関しては限りなく素の状態に近い車両と、6速MTと4輪独立の電子制御可変減衰力ダンパー「PASM」がセットになったスポーツパッケージ装着車で、ショートシフター、19インチ「カレラ」ホイール、スポーツクロノパッケージなどでオプション込みの価格が777万円となった2台のケイマンを試した。

パワーは同じだから違いは主にフィーリングとなるが、5速MTはややストロークが大きいものの、各ギアがしっかりゲートに収まる感じで良好なシフトフィールだ。ショートシフターを装備した方は、確かにストロークは短いが次のギアに入れた時の収まり感が浅く、また、まだ馴染んでいないせいなのか、いくぶん渋さも感じられた。

肝心のギア比も、5速の方がワイドレシオなのは確かだが、頻繁に使う1~3速までは6速MTと大差ない。むしろギア選択の迷いが少なく大らかに走れて好印象を持ったほどだ。あえて6速MTをチョイスする必要性は、あまり感じなかったのである。

ただ、PASMは悩ましいポイントだ。ケイマンの標準タイヤはフロント205/55、リア225/50の17インチ。今回も素に近い方がそのスタンダードタイヤを履いていたが、これはエアボリュームに余裕があるせいか平和な乗り心地で、あまりPASMの必要性は感じられない。

しかし、その浮き輪のごときボリューム感のあるタイヤの見た目は何とも重々しく、ポルシェの高性能イメージには似合わない。ケイマンのようなスポーツモデルでは、もう少しお洒落をしたいと思うのが人情というものだろう。もちろん、シャシ側にそれを許容するだけの十分なポテンシャルが備わっているわけだし。

19インチ「カレラ」ホイールを履くもう1台のケイマンを見ると、さすがにこちらは魅力的。PASM付きは車高も10mm下がるからなおさらだ。ただし、このサイズとなるとさすがに突き上げが明確に感じられるようになる。

911ほど癇に障るものではないが、ケイマンでも18や19インチタイヤを選ぶのなら、低速域での乗り心地とより高い運動性能の両立を狙う意味でPASMはぜひ欲しい装備だ。

もうひとつ、触れておきたいのがスポーツクロノパッケージだ。ラップタイム計測などができるアクセサリー的な側面も大きい装備だが、これをチョイスすると、インパネのボタンでアクセルレスポンスがより鋭くなるスポーツモードを選択することなどが可能となる。パワーがリーズナブルなケイマンの場合、その差はさほど大きくは感じられないが、ケイマンSの方では備わっていれば面白い機構だろう。

さて、そのケイマンSだが、こちらは6速MTにフロント235/40、リア265/40の18インチタイヤが標準仕様。試乗した2台は、走りに関しては「素のS」とも言える車両と、PCCB、19インチスポーツデザインホイール&タイヤ、PASMなど、ほぼフルオプションの2車を試した。ちなみに後者の価格は1096万5000円と大台を超えてしまっている。

ケイマンには911とは異なる魅力があると述べたことと矛盾するかも知れないが、正直なところ、ケイマンSにこれだけの投資は僕は必要ないと思う。1000万円の予算が取れるなら、素直に911を選ぶだろう。高額オプションの最たるものはセラミックコンポジットブレーキのPCCBで、その驚くべきストッピングパワーとタフネスぶりは知っているが、それも911にこそ相応しい装備だ。

そこまで凝らなくとも、ケイマンSの実力は十分に味わえる。295ps、34.7kgmの実力を備えるエンジンは4000rpmを超えた当たりからシュワーンと弾ける感じで極めて痛快。このパンチは、ケイマンにはない。ストッピングパワーも通常の前後4ピストン式モノブロックキャリパー/クロスドリルドベンチレーテッドディスクで十分。ちなみにこの辺の基本仕様は、サイズが異なるものの、ケイマンもケイマンSも変わらない。

6速MTはケイマンの5速MTTより繊細なタッチだがサクサクと軽快に決まるし、持てるパワーをより緻密に味わえるという点でレシオも適切。それに、大排気量のため低速トルクも太く、アイドリングレベルでクラッチをミートするといった使い方にも難なく対応する。速い上にズボラ運転を決め込むにもケイマンSは有利というわけだ。

こうした魅力は素の状態に近いケイマンSで十分に楽しめた。今回の試乗車は足まわりにトラブルを抱えているようで、旋回中の安定感にやや不満を感じることもあったが、それはこの個体だけの問題。他の3台は軽快かつコントローラブルなフットワークを変わらず楽しませてくれた。つまり、ケイマンとケイマンSの間には、パワーフィール以外に決定的な差がないのだ。

手元に引き寄せるための最適解を見つ出す
そこで、僕の中にまたひとつ、大きな葛藤が生じてしまうのだ。確かにケイマンSのパワーフィールは魅力で、予算に余裕があるなら絶対のお勧めだが、150万円という少なくない価格差も考慮するなら、素のケイマンも十分に有りの選択肢ではないかと。

乗り込むほどに、ケイマンはベースモデルの滋味を感じさせる。それは大人しいクルマという意味ではなくて、手頃なパワーと、それに圧倒的に勝る高いシャシ性能がもたらす独得の「良いもの感」とでも表現すればいいだろうか。150万円安いことで、それが手元に来る日を早めてくれるのなら、僕はたぶんそれを受け入れるだろう。Sのパンチは忘れたこととして封印すればいい。そしてそれは、そんなに難しいことではないはずだ。

ただ、17インチタイヤは、旋回などアクションを起こそうとした時の感触がややネバッとしていて僕がポルシェに求めるソリッド感を薄めているから、これだけは18インチ以上に換えたい。そして6速MTは要らないから27万円のPASMのみをチョイス。これでほぼ満足の行く仕様となる。車両価格的には700万円をちょっと越えるというあたりに落ち着くはずだ。

ここで再び、僕はウ~ムと考え込む。非現実的とは言えないが、家族の承認を得るには大変な根回しが必要だろう。でも、男と生まれたからには、もう一度くらいそんな「キヨブタ」をやってみるのも悪くない。

ただし短期間では無理だ。まことに私的な話で恐縮だが、僕のポルシェプロジェクトが動き出すのは多分、子育てが一段落する6年後以降、それくらいのロングタームで考えている。

幸いなことに、ポルシェの現在のモデル展開は極めて安定しているし、現在の良好な経営状態を考えれば、ラインアップが増えて悩みが増すことはあっても、ケイマンが消えてなくなることは考えにくい。その日が来るまで、ともかく清水の舞台に上れるだけの体力を着けておかなければ。(文:石川芳雄/Motor Magazine 2007年4月号より)



ポルシェ ケイマン 主要諸元
●全長×全幅×全高:4340×1800×1305mm
●ホイールベース:2415mm
●車両重量:1360kg
●エンジン:対6DOHC
●排気量:2687cc
●最高出力:245ps/6500rpm
●最大トルク:273Nm/4600~6000rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:MR
●最高速:258km/h
●0-100km/h加速:6.1秒
●車両価格:633万円(2007年)

ポルシェ ケイマンS 主要諸元
●全長×全幅×全高:4340×1800×1305mm
●ホイールベース:2415mm
●車両重量:1380kg
●エンジン:対6DOHC
●排気量:3387cc
●最高出力:295ps/6250rpm
●最大トルク:340Nm/4400~6000rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:MR
●最高速:275km/h
●0-100km/h加速:5.4秒
●車両価格:783万円(2007年)

[ アルバム : ポルシェ ケイマン はオリジナルサイトでご覧ください ]

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