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なぜトヨタは新型「クラウン」を激変させたのか? 「トヨタにとってのクラウンとは」 16代続く日本代表車、ついに世界へ

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なぜトヨタは新型「クラウン」を激変させたのか? 「トヨタにとってのクラウンとは」 16代続く日本代表車、ついに世界へ

■「FRの4ドアセダン」から脱却、トヨタにとっての「クラウン」とは

 2022年7月15日、トヨタ「クラウン」がフルモデルチェンジを行いました。新型クラウンは、これまでのイメージを大きく変えるスタイルで登場し、多くのユーザーからは早くも賛否両論の声が挙がっています。
 
 新型クラウンでは、クロスオーバーをはじめ、4つのボディタイプで世界40か国へと展開されることが明らかになりました。
 
 大きくイメージを変えましが、トヨタにとっての「クラウン」とはいったいどのような存在なのでしょうか。

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 1955年に初代が登場して以来、16代目となる新型まで一貫して同じ名称を用いているクラウンは、まさにトヨタの歴史そのものであり、日本の自動車産業の歴史といっても過言ではありません。

 もちろん、クラウンはその長い歴史のなかで、時代に合わせて姿を変えてきたことは事実です。

 しかし、ハードウェアとしてのクラウンは、これまで「FRの4ドアセダン」というスタイルを中心としてきました。

 その結果、多くのユーザーが「クラウン=FRの4ドアセダン」というイメージを強くし、それが転じて「FRの4ドアセダンでなければ、クラウンではない」という声も聞かれるようになります。

 しかし、今回発表された新型クラウンは4つのボディタイプが存在し、そのなかにはFRベースと思われるセダンの姿も見られましたが、まず最初に発売されるのは、FFベースのクロスオーバーとなり、その後1年半の間に「スポーツ」「セダン」「エステート」も登場予定です。

 クロスオーバーのデザインや機能の良し悪しは別として、少なくともハードウェアの構造としては過去のクラウンとは大きく異なります。

 であるならば、あえて「クラウン」の名を冠することはせずに、まったく新しい新型車として売り出すという選択肢もあったかもしれません。

 けれども、実際には「クラウン」として登場しました。しかも、新世代のクラウンファミリーの代表格として、セダンに先駆けて発売されています。

 このことから、トヨタとしては「FRの4ドアセダン」は、必ずしもクラウンの定義とは考えていないようです。

 実際、新型クラウンの開発に際して、ミッドサイズビークルカンパニー・プレジデントの中島裕樹氏が現行クラウンのマイナーチェンジを提案したところ、豊田章男社長がそれを却下し、これまでの固定観念を捨てるところから開発がはじまったことが記者会見では明らかにされています。

 また、新型クラウンは、ハードウェア以外の面でも従来と異なります。その最たるものが、世界40か国で販売されるグローバルモデルへの転換です。

 厳密にいえば、歴代クラウンのなかには、北米や中国などへと輸出されていたものも存在します。

 ただし、その販売台数は極わずかであり、開発時における主たるターゲットは、日本国内のユーザーにあったことは疑いようのない事実です。

 例えば、歴代クラウンは、途中から全幅1800mm以内となるように設計されていますが、これは日本の道路環境や駐車場事情を踏まえたうえでのことでしたが、新型クラウンではグローバルを意識して1840mmとなりました。

 クラウンがグローバルモデルとなることで、日本のユーザーのニーズが反映されないのではという懸念も生まれます。ならば、なおさらまったく新しい新型車として発売するべきだったかもしれません。

 それでも、トヨタはFFベースのSUVに「クラウン」の名を与え、それをグローバルで販売するという決断をしました。では、トヨタにとって「クラウン」とはいったいなんなのでしょうか。

■クラウンは「豊かな日本」を示すバロメーター?

 クラウンが日本を代表する高級車であることはいうまでもありませんが、 レクサスの日本導入や輸入車の台頭、高級SUVや高級ミニバンの隆盛など、近年のクラウンは必ずしも順風満帆とはいえませんでした。

 それに加えて、少子高齢化による人口減少が見込まれる日本市場に対して、積極的に投資を行うのが難しいことは、火を見るより明らかです。

 つまり、「日本国内専用のFRセダン」という点にこだわってしまうと、そもそもクラウン自体の開発を続けることが困難になってしまうことになります。

「日本の企業なのだから日本市場を大切にしてほしい」というのが人情というものですが、トヨタも営利企業である以上、利益の見込みが少ないところへの投資はできません。

 では、60年以上も続く「クラウン」の名をここで絶やすのか、それとも、どんなことをしてでも「クラウン」の名を引き継いでいくのかという決断を迫られたとき、トヨタは後者を選択しました。

 それは、まさしく「攻め」の選択であったと筆者は考えます。

 たしかに、「日本国内専用のFRセダン」のまま歴史に幕を下ろし、感動のうちにグランドフィナーレを迎えることもできたかもしれません。

 もしくは、「日本国内専用のFRセダン」を守り抜き、だましだまし販売を続けていくこともできたかもしれません。

 しかし、その先に未来がないことは明らかです。少なくとも、当時のユーザーが初代クラウンに国産高級車の夜明けを見たというような感動は得られないでしょう。

 それならば、これまで以上にリソースを投資して開発をし、現代のユーザーが感動するようなクルマをつくることは理にかなっていると言えます。

 そして、そのクルマをもって世界へと挑戦するというのは、「攻め」の選択以外のなにものでもありません。

 新型クラウン発表会見の場で、豊田章男社長は次のように語りました。

「クラウンは日本の豊かさ、ジャパンプライドの象徴であり、世界に誇る日本の技術と人材を結集したクルマでした。新型クラウンにはそんな日本の底力が詰まっています」

 この言葉を聞く限り、単に「グローバルモデルを日本市場でも販売する」のではなく、「日本の力を世界へ見せつける」という強い意志が、新型クラウンにはあるように思います。

 現在、トヨタは名実ともに日本のトップ企業です。そこに至るまでの歴史は、ほとんどクラウンとともにあったといっても過言ではありません。

 歴史を見れば、クラウンが売れているときは、日本という国そのものが勢いがあるときでした。

 つまり、クラウンとは「豊かな日本」を示すバロメーターであったわけです。実際、これまでのクラウン史上最大の販売台数を記録したのは、日本がバブル景気に沸く時代です。

 したがって、「クラウン」の名を絶やしてはならないことはいうまでもなく、「売れないクルマ」となってしまうわけにもいきません。

 今回大きく変化を遂げた新型クラウンは、「売れるクルマ」であり続けるための工夫の成果といえます。

 新型クラウンはシリーズの年間販売台数で20万台を見込むといいます。これは現行クラウンの10倍近い数字です。

 もし、クラウンが日本の豊かさを示すバロメーターであるなら、この数字が達成できたときには必ず日本の景気は上向いているといえるでしょう。

 そういう意味で、クラウンはトヨタにとって、そして日本にとって、単なるクルマ以上の存在といえるかもしれません。

※ ※ ※

 関東のあるトヨタ販売店では、新型クラウンの受注開始以降すでに多くのオーダーを受けているといいます。

 購入者のほとんどは、このクルマが「クラウン」であるかどうかはそれほど重視しておらず、ひとつの「優れたクルマ」であることが主な購入理由となっているといいます。

「クラウン」という名前に依存することないその様子は、新型クラウンが新たな歴史を築きはじめていることの証左といえるかもしれません。

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みんなのコメント

6件
  • 日本の平均年収が上がらないから外需に頼ることになる。だから日本専用車だったクラウンはグローバル車になってしまった。全幅云々言ったところで、道が広い外国には関係ない。
    新型クラウンを通じて、日本人の給料アップが早急の課題だと実感。
  • 道路で新型クラウン?かと思ったらホンダ インサイトだった!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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