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【海外試乗】ただ音や走りが官能的なのではなく、官能の伝え方を徹底的に研究している「マセラティ・グランカブリオ」

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【海外試乗】ただ音や走りが官能的なのではなく、官能の伝え方を徹底的に研究している「マセラティ・グランカブリオ」

5月初頭、国内で新型マセラティグランカブリオの国内導入を発表。その後を追うように6月半ばにイタリアで国際試乗会が開催され、ステアリングを握る機会に恵まれた。ブランドの進化が巧みに表現された新型は、新世代マセラティの答えであり、さらなる躍進を予感させる出来栄えであった。

グラントゥーリズモよりもプレステージ性は高い

マセラティのラグジュアリーオープンGT「グランカブリオ」が日本初披露! オーダー受付も開始

このクルマが、新世代マセラティの解答──。新型マセラティ・グランカブリオの試乗を終えた後、そんな言葉を頭の中でつぶやいた。乗り心地、デザイン、クルマの総合的なプレゼンスなど、いまのマセラティが目指す方向や、答えを感じ取ることができたからだ。

振り返れば、パンデミックで混迷する2020年9月にMC12以来となる自社製スーパースポーツのMC20を発表。話題はエレガントな体躯に留まらず、ツインスパークプラグを備えたプレチャンバー燃焼システムを擁するV6ツインターボの心臓部「ネットゥーノ」にも及び、新世代マセラティの幕が開けられた。

2022年3月に発表されたミドルサイズSUVグレカーレでは、ジャーマンプレミアム勢が躍動する市場に入り込み、彼らにはなかった官能性やフォーリセリエを筆頭とするパーソナライズによりその存在感を発揮。デビュー早々にミラノでステアリングを握ったが、動的質感の高さに驚かされたことを今でも記憶している。

そして、2022年10月にグラントゥーリズモを発表。グランドツーリングカーはマセラティの本家本元であり、固唾を飲んでその出来栄えを国内公道およびサーキットで確認したが、乗り心地、インテリアや室内装備のホスピタリティ、スタイリングなど、実に満足度の高いものであった。歴史と伝統を背負いながら革新を進める、名門ゆえの苦悩を見事に乗り超えた。

そのグラントゥーリズモをベースにオープントップ仕様に仕上げたのがグランカブリオとなるが、結論から言えば動的・静的にもプレステージ性は高められていた。

プレゼンテーションおよびQ&Aセッションでは、主にクーペカブリオレの違いについて話を聞いた。グラントゥーリズモからは100kgの重量増加となるが、技術担当者のマルコ・アダモ氏によれば、40kgはルーフのメカニズムに関する増加で、残り60kgはねじれ剛性の強化などの安全面の補強による増加とのこと。しかし、氏いわくグランカブリオは開発当初から予定されていたため、そもそもグラントゥーリズモとの共用シャシーにはアルミニウムやマグネシウムなどの軽量素材を多用しつつも、各所を超高剛性スチールで十分に補強していたと言う。オープントップがあることが前提なので、特に床下は十分な補強が成されていたのだ。

また、グラントゥーリズモとグランカブリオは、クローズ/オープンのX軸だけでなく、ICE/BEV(フォルゴレ)のY軸も考慮する必要がある。車両アーキテクチャもガソリンエンジンと電気モーターそれぞれのハウジングを両立させるためにモジュール式が採用されている。つまり、マセラティはXY軸から成るマトリックス図の4象限全てを網羅したシャシー開発を2017年から行なってきたわけで、2024年に全てのモデルが出揃ったということになる。

マセラティが作るGTカーの流儀とは?

今回はイタリア北部にあるマッジョーレ湖からドモドッソラを巡る周遊コースで試乗を行なった。市街地、道幅の狭いワインディングを抜け、標高1491mのモッタローネ山のワインディングロードが試乗のメインステージとなる。

試乗車は最高出力550ps、最大トルク650Nmを発揮する高性能版のトロフェオ。残念ながら、同時リリースされたBEVのフォルゴレは現段階で日本導入未定のためステアリングを握る機会には恵まれなかった。

早速、ファブリック製のルーフを開け放ち市街地を走り出す。走るよりも流す、という感覚でドライブをするが、改めて気付かされるのはマセラティが作るグランドツーリングカーの流儀だ。

乗り心地が良く直進安定性が高いのは当たり前として、アクセルレスポンスやハンドリング特性、ステアリングフィールなどにマセラティならではの“物語”を読み取ることができる。言い方を変えれば、ドライバーを飽きさせない、クルマからのメッセージを感じ取れる。例えば、コーナーでは動作に対する起承転結をおそらく意図的にクルマは感じさせてくるから、ぼーっと運転していても愉しさやワクワク感が手から頭へと伝わってくる。ドイツやイギリスのグランドツーリングカーとの決定的な違いはここにあり、ドライビングの物語性こそグランカブリオの大きな魅力であり、価値なのだろう。

また、100kgの重量増加の内訳は前述のとおり剛性強化によるもので、その分パフォーマンスに影響が出ないか心配であったが、まったくの杞憂に終わった。グランカブリオ用に設定し直された独自のエアサスペンションシステムはしっかりと乗り心地を高めてくれる。最新モデルらしく、ソフトウエアの進化がファン・トゥ・ドライブを支援してくれている好事例だろう。

走行モードをデフォルトの「GT」から「SPORT」そして「CORSA」に変更すると足元は格段に締め上げられてくる。グラントゥーリズモの時と同じく車体が路面に押さえつけられている感覚を持て、コーナーを激しく攻め込んでも高いダイナミクスを発揮してくれる。アシとボディの一体感も良好でバタつきや振動に悩まされることもなく、乗り心地は硬質ではあるけれども決して悪くはない。助手席に乗っていた時でもイヤな印象を受けることはなかった。

パワーユニットは基本的にグラントゥーリズモからのキャリーオーバーとなり、V6ツインターボエンジン「ネットゥーノ」を搭載。MC20はドライサンプ方式を採用するが、こちらはウェットサンプ方式を採用。右バンクのシリンダー休止機能も備え、燃費性能も向上している。

MC20からのモノづくりの集大成がグランカブリオ

試乗時間の多くはオープントップで過ごしたが、同乗者との会話は普段のボリュームで行なえ、乱気流で髪が乱されることもなかった。16個のスピーカーから2Dおよび3Dのサラウンドを提供するソナス・ファベール製のオーディオも搭載され、音響設定にも妥協は一切見られない。サウンドシステムもさることながら、細かい所に気が聞いているのがこのモデルの美点で、ドライバーオリエンテッドな12.3インチのセンターディスプレイしかり、前席ヘッドレスト背面のジャケットフックしかり、ユーザビリティが高い。

試乗の全プロセスを終えて、感じたことは冒頭に記した「このクルマが、新世代マセラティの解答」であった。シャシー設計から乗り味、インテリアの仕立てからコクピットの操作性などは、MC20、グレカーレ、グラントゥーリズモで進化を経て、グランカブリオで完成されている。一連の繋がりを意識したモノづくりをしてきたことがよく理解できた。それは何よりも、グランカブリオの物語性のある走りに現れている。

【SPECIFICATION】マセラティ グランカブリオ・トロフェオ
■車両本体価格(税込)=31,200,000円
■全長×全幅×全高=4966×1957×1365mm
■ホイールベース=2929mm
■トレッド=前:1646、後:1660mm
■車両重量=1895kg(EU)
■エンジン形式/種類=ー/V6DOHC24V+ツインターボ
■内径×行程=88.0×82.0mm
■圧縮比=11.1
■総排気量=2992cc
■最高出力=550ps(405kW)/6500rpm
■最大トルク=650Nm(66.3kg-m)/3000rpm
■燃料タンク容量=70L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン/エア、後:マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:265/30ZR20、後:295/30ZR21
問い合わせ先=マセラティジャパン TEL0120-965-120

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