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【ゲイドンの救世主】ジャガーXK8、XKRとXKR-R 3台を比較 誕生25周年のX100系 前編

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【ゲイドンの救世主】ジャガーXK8、XKRとXKR-R 3台を比較 誕生25周年のX100系 前編

ブランドの未来を指し示したX100系

執筆:Greg Macleman(グレッグ・マクレマン)

【画像】ビッグジャガー・クーペ XK8、XKRとXKR-R 2代目XKも 全58枚

撮影:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)

翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)


英国ゲイドンのジャガー本社のどこかに、額装されたXK8の肖像画が保管されているに違いない。ジャガーのグランドツアラーとはどうあるべきか、ブランドの未来を明確に指し示した記念すべきモデルだから。

異世界からやって来たような不完全なスーパーカー、XJ220の数年後に発表されたモデルだが、オリジナルはそれより古い。タイムレスなデザインで、1996年から2006年までの10年間、ほぼ姿を変えずに販売が続いた。

コードネームX100として開発されたXK8は、美しいまま時を重ねている。では、動的性能は老化しただろうか。今回はXK8の発売25周年を記念し、ジャガー・クラシックが管理するフェンエンドのテストコースへ、特別な3台をお招きした。

集ったのは、X100系の初期に当たるXK8クーペと、チューニングを受けた後期のXKRのコンバーチブル。そして、ジャガーのスペシャル・ビークル・オペレーションズ(SVO)が手掛けたスーパーXK、XKR-Rのプロトタイプもやって来た。

X100系のXKシリーズは、直近30年のジャガーでとりわけ魅力的で能力に長け、商業的な成功を収めたモデルの1つ。完全に民営化された1984年以降、不安定な財政状態が続いていたジャガーを打開したモデルでもある。

国営企業のブリティッシュ・レイランド傘下にあった影響で、低い生産性という体質から抜けられずにいた。品質も褒められたものではなかった。

1986年に発売された4ドアサルーンのXJ40は複雑で効率が悪く、ジャガーを立て直すには至らなかった。むしろ、旧式化した技術を浮き彫りにした。

ジャガー独自の新ユニット XJ-V8

1991年末、ジャガーの損失額は221万ポンドにまで膨れ上がっていた。前年の3倍以上という、目も当てられない状況だった。そんな混沌とした中で、フォードが救いの手を差し伸べる。

その力を借り、救世主としてX100が誕生する。同じくフォード傘下に収まったアストン マーティンでは、DB7を名乗ったクーペだ。

このルーツは、過去に棚上げされていたXJ41へさかのぼる。寿命を迎えるXJ-Sの後継として、1980年代初頭に開発がスタートしたプロトタイプだ。とはいえ、X100の開発も簡単には進まなかった。世界的な不況とは、ジャガーも無縁ではなかった。

1992年3月、X100のデザインが本格的にスタート。デザインスケッチの後、工業用粘土で成形するクレイモデルが造られ、スタイリングの検討が進められた。

車両の技術開発担当者としては、ランドローバーでエンジニアを務めた経験を持つボブ・ドーバーが着任。しかし、英国政府との財政問題が解決せず、順調とはいえない状況が続いた。

フォードによる資金供出とモデル開発の承認は翌年へ持ち越されるが、最終的に英国東部、ブリジェンド工場へ100万ポンドの投資が決定。新しいグランドツアラーへは、北米産の既存ユニットではなく、ジャガー独自の新開発ユニットの搭載が決まる。

XJ-V8と呼ばれる、4.0LのV型8気筒エンジンだ。これは英断だったといえる。オーバヘッドの4カムで、1気筒毎に4本のバルブを備える、宝石のようなユニットが生まれるのだから。

Eタイプとの結びつきを強く感じる

初期のXK8では、自然吸気で最高出力294ps、最大トルク40.0kg-mを発揮。0-97km/h加速を6.5秒でこなし、最高速度は249km/hでリミッターが掛かるという、不足ない速さを得た。

スペックやパフォーマンスだけではない。初期のXK8には、ドライビング体験を深いものにするような、堂々とした味わいがある。

走行中にアクセルペダルを踏み込むと、現代のメルセデス・ベンツにも引けを取らないほどスマートにATがキックダウンする。驚くほど勇ましくフロントが上を向くものの、滑らかにパワーがリアタイヤへ伝わる。

サスペンションはとてもしなやか。乗り心地はシルクのようにスムーズ。気持ちを荒げるような素振りは殆どない。

軽くない車重を指摘する人もいるだろう。確かに、充分にダイエットできていれば、妖艶なスタイリングにぴったりなスポーツカー体験が得られたかもしれない。しかしXK8は、伝統的な英国のグランドツアラーとして見るべきだろう。

路面の隆起やくぼみを、車重を生かしてローラーを掛けるかのようにフラットにいなす。ベースを同じにするアストン マーティンDB7の方が、その特長は強いけれど。

XKというモデル名は1948年の2シーター・スポーツカー、XK120を由来とする。しかしスタイリングとしては、マルコム・セイヤーの傑作、ジャガーEタイプとの結びつきを強く感じさせる。

10年を通じてほぼ変わらなかったフォルム

落ち着いたフォルムをベースに、大きくカーブを描くラインと、ふくよかな面構成がEタイプの特長だった。50年の時を経て、そのスピリットがXKに宿っていることは間違いないだろう。

同時期の当たり障りのないデザインの日本車や、フラットな面構成のE31型BMW 8シリーズなどと並ぶと、洗練されたXK8の容姿は一層引き立って見える。有機的で、空力特性にも優れていそうな、セクシーで柔らかい曲面が美しい。

デザイン・ディレクターを努めたジェフ・ローソンは、当時のジャガーとして独自のアイデンティティを築き上げた。しかし、魚が口を開けたような楕円のフロントグリルや、膨らんだフェンダーラインに収まるタイヤなど、祖先の面影は明らかだ。

10年間に及んだモデルライフを通じ、ブラウンズレーンを旅立った初期のXK8から、最後にラインオフしたXKRコンバーチブルへX100は進化を続けた。それでも、フェンエンドで見る2台は驚くほど似ている。

ソフトトップであることを除き、全体的なフォルムはほぼ変化していない。唯一、2002年に施されたマイナーチェンジを経ているくらい。

フロントバンパーは手直しを受け、テールライトはキラキラとしたカットが追加され、クロームで縁取られている。ヘッドライトはキセノンになり、エンブレムが新しくなり、アルミホイールはギラギラと成長している。でも、ボディラインはそのままだ。

ボディの内側へは、大きな改良が施された。電子制御のスタビリティ・コントロールや緊急ブレーキ・アシストを獲得し、フロントシートはずっと快適性を高めてある。

この続きは後編にて。

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