発表から半年、トヨタ新型「プリウス」が、2023年1月10日、ついに発売(シリーズパラレルハイブリッド車のみ)となりました。
スタイリッシュなエクステリアデザインや、先代を上回る燃費と性能を達成するなど、数々の話題を提供している新型プリウス。そのひとつが、エコカーの象徴的存在であるプリウスが19インチの大径タイヤ、しかも195mmの細幅タイヤを装着していることです。
新型プリウスが大径細幅タイヤ採用!! 常識を大きく変える新思想のメリットとデメリット
新型クラウンでも装着され、最近注目されている大径・細幅タイヤ。メリット/デメリットとその狙いについて、ご紹介します。
文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
写真:TOYOTA、ベストカー編集部
クラウンに続いて、プリウスも大径・細幅タイヤに
最新の5代目ハイブリッドシステムを搭載し、先代を上回る燃費28.6L/km(2.0Lモデル)および32.6km/L(1.8Lモデル)を達成した、新型プリウスのシリーズパラレルハイブリッドモデル。高出力モーターの採用によって卓越した加速性能も実現し、大きな話題を呼んでいます。
多くの最新技術を採用している新型プリウスですが、注目ポイントのひとつに大径・細幅タイヤの採用があります。新型プリウス(Z/Gグレード)のタイヤサイズは、19インチ/タイヤ幅195mm(195/50R19、タイヤ外径678mm)。先代プリウスの高級仕様である「ツーリングセレクション」が17インチ/タイヤ幅215mm(215/45R17、外径626mm)、標準タイプが15インチ/タイヤ幅195mm(195/65R15、外径635mm)であったことを考えれば、先代のツーリングセレクションと比べて、新型プリウスはタイヤ外径で52mm大きくなっているにもかかわらず、タイヤ幅は20mm細くなっています。
19インチといえば、トヨタではスポーツモデルのGRスープラ(RZ)同じ。ただGRスープラは、タイヤ幅がフロント255mm、リア275mmと、新型プリウスより60mm以上太いタイヤを履いています。
昨年6月にデビューした新型「クラウン クロスオーバーRS」のタイヤも225/45R21で、先代の18インチから21インチにインチアップしたのにタイヤ幅は225mmしかなく、こちらも大径・細幅タイヤで話題となりました。トヨタが、新しい思想のタイヤの採用を進めていることがうかがえます。
2022年6月にデビューした新型クラウン(クロスオーバー)。21インチ/タイヤ幅225mmの大径・細幅タイヤが話題を呼んだ
スタイリッシュでメリットの多い大径タイヤだが、乗り心地が悪化傾向に
タイヤを大径・細幅にするメリットは何なのか、まずは、タイヤを大きくするメリットとデメリットを考えてみましょう。
タイヤ外径を大きくした大径タイヤは近年、ドレスアップの定番となっており、増加傾向にあります。大径タイヤと合わせてホイールをインチアップすれば、タイヤが薄くなってホイールが強調されるのでスタイリッシュに見えます。また、見かけのカッコよさだけでなく、扁平率の低いタイヤは、タイヤ単体の横剛性が高くなるのでタイヤの撓みや捩れが小さくなって、走行中のタイヤの変形量が少なくなります。これにより、転がり抵抗が減少して燃費的には有利に働き、さらに縦方向の接地面積が長くとれるので、旋回時やブレーキ時のグリップが強くなり、走行安定性が増します。
また、この20年ぐらいの間にタイヤ径が大きくなった要因としては、クルマの加速性能が上がったことと、衝突安全性能の対策のために車両重量が増加したことで、ブレーキ性能を高める必要があったという背景も関係しています。ホイール径を大きくできれば、その分ブレーキディスクのサイズアップができ、制動力の高いブレーキを採用できるのです。
逆にデメリットとしては、扁平率が下がる(タイヤの縦剛性が高まる)と路面の凹凸を感じやすくなり、乗り心地が悪く、ロードノイズも悪化します。またタイヤが大きくなると、どうしても最小回転半径が大きくなるので、切れ角を確保するために大きなタイヤハウスが必要となり、場合によってはボディの幅を広げなければいけません。タイヤとホイールの重量が増すので、バネ下荷重が重くなり、ハンドリング性能や乗り心地が悪化しやすくなります。
新型プリウスのホイール&タイヤ。スタイリッシュなスタイルに合わせた大径・細幅タイヤ(19インチ/タイヤ幅195mm/扁平率65%)を履いている
タイヤを細くすると燃費は良くなるが、グリップ力が落ちて危険なことも
次に細幅タイヤについてですが、タイヤの幅を細くする最大のメリットは、燃費が向上することです。タイヤ幅方向の接地面積が減るので転がり抵抗が減少し、空気抵抗も下がるので、ダイレクトに燃費の向上につながります。またタイヤが細くなると、ハンドル切れ角が大きくとれるので最小回転半径が小さくなり、ハンドリングが軽くなるメリットもあります。
デメリットは、グリップ力が下がること。クルマの基本性能である「走る・曲がる・止まる」の性能が低下します。スポーツモデルやレースカーで太いタイヤが使われるのは、このグリップ力を確保するためです。転がり抵抗とグリップ力は相反関係にありますが、エコタイヤのように摩擦力の高いシリカ(二酸化ケイ素)を配合することによってゴム質を若干柔らか目にして、グリップ力と転がり抵抗のトレードオフ関係を改善したものもあり、使用環境によっては細幅タイヤがハンディとはならないこともあります。
また、性能には関係ありませんが、細いタイヤを後ろから見ると、頼りなく迫力に欠けて見えます。やっぱり、タイヤは太いほうがカッコいいのは、異論ありませんよね。
大径と細幅の「いいとこ取り」で燃費と走行性能を両立
燃費が最優先の時代、タイヤを細くすることによって、空気抵抗を減らしつつ、転がり抵抗も減らしたい。しかし、ただ単にタイヤを細くするだけではグリップ力が落ちて、肝心の走行性能が低下してしまいます。
そこで、タイヤの横幅の接地面積の減少を、タイヤを大きくして縦方向の接地面積の拡大でカバーしたのが、大径・細幅タイヤというわけです。大径タイヤは、変形が小さく転がり抵抗は抑えられるので、転がり抵抗を抑えつつグリップ力も確保できます。また、大径タイヤのデメリットである最小回転半径の増大についても、タイヤが細くなることで抑えられ、さらにタイヤ重量が低下するのでバネ下荷重の軽減にもつながります。
スタイリッシュなクーペスタイルに合わせた大径・細幅タイヤは、性能と燃費の両立を図った欲張りなタイヤといえます。燃費が重視される現在、SUVやスポーティなモデルであっても燃費を疎かにすることはできません。大径・細幅タイヤは、走りをスポイルすることなく燃費を向上する有効な手段のひとつなのです。
大径・細幅タイヤは、走りをスポイルすることなく燃費を向上する有効な手段
◆ ◆ ◆
「燃費のプリウス」という固定したイメージからの脱却を狙って、クロスオーバー(未来的なカッコ良さを狙ったデザイン)に変身した新型プリウス。それに見合ったタイヤとして、燃費と性能を両立できる大径かつ細幅タイヤは必須です。タイヤは今後、「大径・細幅」へ向かうのかもしれません。
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