BMWは2020年代後半に燃料電池車を市場投入する予定にしており、その実現に向けてドイツ、アメリカの主要国で「燃料電池実験車両BMW iX5 Hydrogen」で実証実験を行っている。日本では2023年7月より年末に渡って、日本の公道を走行し実証実験を行う。
BMWは、ガソリン・エンジン車、ディーゼル・エンジン車、プラグイン・ハイブリッド車、48Vマイルド・ハイブリッド車、電気自動車、そして、燃料電池車と、今後、幅広い製品ラインアップを提供予定としているが、燃料電池車は新たなパワートレインの一つとして位置づけられており、BMWグループは2011年よりトヨタ自動車と燃料電池車の基礎研究を共同で行っている。2013年からは燃料電池駆動システムを共同開発しており、個々の燃料電池はトヨタ自動車から調達している。
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水素を燃料とする燃料電池車は、燃料の充填に時間を掛けずに、長距離走行可能となることが最大の特徴の1つであり、「燃料電池実験車両BMW iX5 Hydrogen」の場合、燃料である水素が空の状態から、約3分程度の水素の充電で、約500kmもの長距離を走行する事が可能となる。
BMW iX5 Hydrogenは、リアアクスルに搭載した第5世代のBMW eDrive テクノロジー(電気モーター、トランスミッション、パワー・エレクトロニクスをコンパクトなハウジングにまとめたもの)を採用した高集積ドライブユニット、およびこのモデル用に特別開発したリチウムイオン・バッテリーを組み合わせて、最高出力295 kW (401hp) のパワートレインを実現した。また、コースティング・オーバーランやブレーキ時には、モーターが発電機として機能し、エネルギーをパワーバッテリーに供給する。
日本における実証実験においては、日本各地にて実際に3台の「BMW iX5 Hydrogen」を走行させ、様々なデータを取得すると共に、官公庁や行政機関、大学を訪問し、各方面の専門家の視点から製品に対するフィードバックを貰い、それら全てをドイツにあるBMWグループ本社に送り、製品開発に役立てる。
ミュンヘンのパイロット・プラントで製造
BMW iX5 Hydrogenは、ミュンヘンにあるBMWグループ研究革新センター(FIZ)のパイロット・プラントで製造している。ここでは開発と生産を結びつけ、同社ブランドのすべての新モデルを最初に製造する。車体工場、組立、モデルエンジニアリング、コンセプトカー製造、アディティブマニュファクチャリングなどで、約900人が働いている。従業員は、量産に向けて製品と製造工程の準備が整っていることを確認する。BMW iX5 Hydrogenの場合、水素技術、車両開発、新型車の初期組み立ての専門家が緊密に連携し、最先端の駆動技術とエネルギー貯蔵技術を統合している。
水素は急速補給が可能
燃料電池の供給に必要な水素は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製700気圧のタンク2基の中に貯蔵される。ここには合計約6 kgの水素を貯蔵、BMW iX5 HydrogenがWLTPサイクルで504 km (313マイル) の航続距離を走行するには十分な量である。水素タンクはわずか3、4分で満タンになるため、BMW iX5 Hydrogenは、数度の短時間停車で、BMWが得意とする長距離ドライブの楽しさが味わえる。
BMW iX5 Hydrogenの技術データ、性能、燃費、航続距離データの概要 駆動システム全体の最高出力:295 kW (401hp) 燃料電池システムの電気連続出力: 125 kW (170 hp) バッテリー(リチウムイオン技術)の最高出力: 170 kW (231hp) 高集積電気駆動ユニットの最高出力: 295 kW (401hp) 水素タンクの容量: 6kg 水素(気体) 加速度 0-100 km/h (62 mph) < 6秒 最高速度: 180 km/h (112 mph)以上 WLTPサイクルでの水素消費量: 1.19 kg/100 km WLTPサイクルでの航続距離: 504 km(313マイル)
脱炭素化に貢献するFCEV技術
BMWグループは、ドイツの自動車メーカーとして初めて、Science Based Targetsイニシアチブが主導する「Business Ambition for 1.5℃キャンペーン」に参加し、バリューチェーン全体で完全な気候ニュートラルを実現する目標の達成に取り組んでいる。このプロセスの次の段階として、BMWグループは、サプライチェーン、生産、使用段階といったライフサイクル全体における車両1台あたりのCO2排出量を、2019年比で少なくとも40%削減する目標を2030年までに達成する計画を立てた。
Text&Photo:アウトビルトジャパン
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