現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > まさかのスズキ新型「ジムニー」は出ない? 去年話題の「カクカクなシルエット」はどうなった? 電動化が難しい理由とは

ここから本文です

まさかのスズキ新型「ジムニー」は出ない? 去年話題の「カクカクなシルエット」はどうなった? 電動化が難しい理由とは

掲載 20
まさかのスズキ新型「ジムニー」は出ない? 去年話題の「カクカクなシルエット」はどうなった? 電動化が難しい理由とは

■「ジムニーEV」の計画は白紙? 驚くべきニュースとは

 スズキの新しい世界戦略車として、華々しいデビューを飾ったBEV第1弾「eビターラ」。
 
 同社が2013年に発表したBEVの世界戦略計画がいよいよスタートしたわけですが、一方で驚くべきニュースも飛び込んできました。

【画像】「えっ…!」これがスズキ「“2階建て”ジムニー」 です!(100枚)

 ミラノで行われたeビターラの発表会において、鈴木俊宏社長はジムニーEVの発売について否定的な見方を示したというのです。

 これは欧州の複数メディアに語ったもので「ジムニーをEV化すると、もっともいい部分を台無しにするだろう」というのです。

 そもそもジムニーEV化については、メディアや市場の予想で出たきた話ではありません。

 同社が行った2030年までのEV世界戦略の発表会にて、将来欧州に投入されるEV6台のうちの1台として、シルエット化されたジムニーが描かれていたのです。

 世界のメディアはこれを信じて記事などにしてきたわけですから、今回の鈴木社長のコメントはまさに青天の霹靂ともいうべきもの。

 なぜ、ここにきてジムニーEV計画が白紙になったのかを検証したいと思います。

 さて、ジムニーは日本だけでなく、欧州やアジア、南米の各地で人気のあるクロスカントリー4WDです。

 小型ながら、伝統的かつ本格的なラダーフレーム構造とリジッドアクスル式サスペンションを歴代モデルで受け継ぎ、優れた悪路走破性と高い耐久性を備えている唯一無二のクルマなのです。

 海外で販売されている「ジムニー(日本名ジムニーシエラ)」の車重は、わずか約1t。

 鈴木社長が言及している通り、実はジムニーの特徴はこの軽量さとコンパクトさにあると言っても過言ではありません。 

 一般ユーザーには、レジャーユースのクルマとして捉えられがちですが、実は日本をはじめとする各国では、ジムニーはプロユースとしての需要が非常に高いクルマです。

 例えば主要輸出国のひとつであるドイツでは、同国の主要産業である林業で重宝されています。

 ジムニーに設定されているキネティックイエローは、こうした現場で視認されやすいカラーとして考えられました。

 日本でも、山岳地帯、降雪地帯などの工事現場ではジムニーが使われていることが多く、筆者も地形改良工事の南アルプス山中で、日頃では見たこともないほどたくさんのジムニーが働いている姿を目撃しています。

 プロユースで使われる大きな要因は、道幅が狭いという条件でも臆することなく入ることができ、いざとなれば転回もできます。

 くわえて、車重が軽いゆえに重量車では重くて埋まってしまうような路面状態でも、ジムニーなら走れることが多いのです。

 実際、オフロードコースなどを走ってみると、トヨタ「ランドクルーザー」ではクリアできなかったようなステージを、ジムニーが難なくクリアしてしまうということが珍しくありません。

 クロスカントリー4WDにとって、“小さい”“軽い”は性能的に有利な条件なのです。

 EV化すれば、駆動用電池を新たに積載するために、どうしても重量増の傾向にあります。

 つまり、せっかく1t(5ドアでも1.2t)で済んでいる車重を重くすれば、せっかくの悪路走破性が削がれてしまうというわけです。

■ジムニーをEV化するには…別の課題も? それはなに?

 さらにジムニーをEV化するには、別な難点もあると筆者は考えます。それはメカニズムです。

 まずeビターラは、駆動モーターとインバーターを一体化した「イーアクスル」という車軸を使っています。FFはフロントに1本、4WDでは前後に2本配置しています。

 一方、ジムニーは鋼鉄製のアクスルというケースの中に、車軸とディファンレンシャルギアを内包。これが前後に2本配され、さらにこれをプロペラシャフトで結んでいます。

 クロスカントリー4WDが悪路走破性を発揮するのは、左右のタイヤがアクスルで繋がっているためで、一方のタイヤが凸で持ち上がると、猛一方のタイヤは凹の路面にタイヤを押しつけます。

 これでタイヤのトラクション性能がより発揮されるという仕組みです。

 仮にリジッドアクスル式でイーアクスルを造った場合、不可能ではないと思いますが、耐久性などの面で不安が出てくるのではないでしょうか。

 またオフロードでは舗装路とは違う予期せぬタイヤの回転や負荷があります。こうした動きが電動モーターに与える影響も未知数です。

 さらに、現在サブトランスファーで実現しているローレンジの駆動力を、果たして2モーターで実現可能なのかという疑問もあります。

 サブトランスファーは2WD(FR)と4WDの切り替えを行うだけでなく、「4WD H」「4WD L」という4WD時のギア比の変更も行うことを担っています。

 2WDや4WD Hでは、エンジンの力:1を駆動力:1(ATの場合は約1.3)としてディファレンシャルギアに伝えます。

 しかし、4WD Lにシフトするとエンジンの力:1を駆動力:2.002(ATの場合は約2.643)としてディファレンシャルギア(最終減速比はMTが4.090、ATは4.300)に伝えるのです。

 つまり同じエンジンの力でも、サブトランスファーのギア比を変えることで、より大きな駆動力に変えることができるわけです。

 これはオフロードでは非常に重要であり、例えばフル乗車満載の状態で走っても力不足と感じることはありません。

 さらに、岩など大きな段差を乗り越える時には大きな駆動力が必要になりますが、ローレンジにすれば1.5L(ジムニーは660cc)という排気量以上のパフォーマンスを発揮してくれるわけです。

 かつて動画サイトで、大雪の中を自分の何倍もの大きさのトレーラーをジムニーが牽引する様子が話題になりました。

 これはまさに、サブトランスファーの恩恵をよく表したものと言えるでしょう。

 こうしたジムニーの性能こそが、世界のプロフェッショナルに愛される由縁なわけですが、EV化してしまうと担保できないという結論にスズキは達したというのが筆者の見方です。

 すでにこの夏、欧州向けとしてのジムニーの生産を終了すると発表されています。

 これはより厳格化される環境規制に対して、ジムニーが十分に対応できないためだと思われます。

 かつてスズキが計画の中で発表したeジムニーは、この規制への対応策だったわけですが、白紙状態に戻ったわけです。

 ちなみに鈴木社長は前述のインタビューの中で、「ジムニーをプロフェッショナル向けの道具として提供し続けるとすれば、eフューエルやバイオ燃料を使用したICE(内燃機関)技術がジムニーの未来を支え続ける技術かもしれない」と語っています。

 スズキの未来的なICE技術開発がどこまで進んでいるかは分かりませんが、数年内に欧州で新しいジムニーが登場するというのは難しくなったと言えます。

 日本でも660cc版ジムニーの環境性能がギリギリだという話は数年前から出ており、今後の対応が業界やユーザーから注目されていました。

 まだ規制がそれほど進んでいないアジアや南米を除いて、先進国でのジムニーの立ち位置は一大転機を迎えたと言えます。

 2025年夏には日本で5ドアモデルが導入されるかもしれないという情報もあるジムニーですが、シリーズの今後の成り行きに注目したいところです。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

100万円以下で「クラウン」に乗りたい! めちゃ安い“高級セダン”は買っても大丈夫? 古くても「やっぱりクラウン」だけど格安中古はやめたほうがいい?
100万円以下で「クラウン」に乗りたい! めちゃ安い“高級セダン”は買っても大丈夫? 古くても「やっぱりクラウン」だけど格安中古はやめたほうがいい?
くるまのニュース
全盛期は4つの排気量があった! 1970年代のレジャーバイク、スズキ・バンバンシリーズ50/75/90/125って知ってる?
全盛期は4つの排気量があった! 1970年代のレジャーバイク、スズキ・バンバンシリーズ50/75/90/125って知ってる?
モーサイ
トヨタが「超スゴいハイエース」実車公開! ホワイト&ブルーボディに「画期的システム」搭載!? 「H2×HEV」仕様とは
トヨタが「超スゴいハイエース」実車公開! ホワイト&ブルーボディに「画期的システム」搭載!? 「H2×HEV」仕様とは
くるまのニュース
5速MT搭載! ダイハツ「斬新タフすぎ軽トラ」がスゴい! 全長3.4m“カクカク”デザインに「300mm超え地上高」確保! 活躍間違いナシの「マッドマスターC」は今欲しい1台
5速MT搭載! ダイハツ「斬新タフすぎ軽トラ」がスゴい! 全長3.4m“カクカク”デザインに「300mm超え地上高」確保! 活躍間違いナシの「マッドマスターC」は今欲しい1台
くるまのニュース
6速MT搭載! トヨタの「“最新”AE86」が凄かった! 「旧車そのまま」デザインד漢”の「2シーター」仕様採用! 「最新ユニット」で復活の「AE86 BEV」実際の印象はいかに
6速MT搭載! トヨタの「“最新”AE86」が凄かった! 「旧車そのまま」デザインד漢”の「2シーター」仕様採用! 「最新ユニット」で復活の「AE86 BEV」実際の印象はいかに
くるまのニュース
“低燃費”な新型「クーペSUV」発表!軽量ボディד独自ユニット”装備でめちゃ楽しそう!「映え内装」も超カッコイイ「アルカナ」の魅力とは?
“低燃費”な新型「クーペSUV」発表!軽量ボディד独自ユニット”装備でめちゃ楽しそう!「映え内装」も超カッコイイ「アルカナ」の魅力とは?
くるまのニュース
トヨタ新型「カカドゥ」がスゴイ! カクカクボディ&「旧型デザイン」に反響多数! 「Vアクティブテクノロジー」搭載の「豪州プラド」が話題に
トヨタ新型「カカドゥ」がスゴイ! カクカクボディ&「旧型デザイン」に反響多数! 「Vアクティブテクノロジー」搭載の「豪州プラド」が話題に
くるまのニュース
日産「“5ドアワゴン”GT-R!?」出現! 「5速MT」×強力すぎる「ツインターボエンジン」で超カッコイイ! ド迫力エアロ「フル武装」のスゴいモデルが米で落札
日産「“5ドアワゴン”GT-R!?」出現! 「5速MT」×強力すぎる「ツインターボエンジン」で超カッコイイ! ド迫力エアロ「フル武装」のスゴいモデルが米で落札
くるまのニュース
マツダ新型「4ドア・クーペ」発表に期待大! 伝統の“人馬一体”と進化した「新・魂動デザイン」を採用! めちゃ“豪華インテリア”も魅力の「走りのセダン」新型イージーシックス中国仕様が凄い!
マツダ新型「4ドア・クーペ」発表に期待大! 伝統の“人馬一体”と進化した「新・魂動デザイン」を採用! めちゃ“豪華インテリア”も魅力の「走りのセダン」新型イージーシックス中国仕様が凄い!
くるまのニュース
カワサキの名車「シェルパ」17年ぶり“新型”で復活! オフから高速まで使える「新・万能マシン」って最高!「ゆったりツーリング」に最適な新型「KLX230シェルパ」発売へ!
カワサキの名車「シェルパ」17年ぶり“新型”で復活! オフから高速まで使える「新・万能マシン」って最高!「ゆったりツーリング」に最適な新型「KLX230シェルパ」発売へ!
くるまのニュース
8年ぶり全面刷新! 日産新型「小さな高級車」登場! 全長4.3mに「クラス超え上質内装」とめちゃ“スゴいシート”採用! ちょうどイイサイズの「新型キックス」日本には来る?
8年ぶり全面刷新! 日産新型「小さな高級車」登場! 全長4.3mに「クラス超え上質内装」とめちゃ“スゴいシート”採用! ちょうどイイサイズの「新型キックス」日本には来る?
くるまのニュース
ホンダの新SUV「CR-V」にはエンジンがない!? “燃料電池で発電”モーターで駆動! 欠点さえ許容できれば「全方位的に魅力的」
ホンダの新SUV「CR-V」にはエンジンがない!? “燃料電池で発電”モーターで駆動! 欠点さえ許容できれば「全方位的に魅力的」
VAGUE
ホンダ新型「スポーツネイキッド」発表! “17年ぶり”に日本導入か! 攻撃的な顔付きにメリハリボディ! 「CB750 ホーネット」登場!
ホンダ新型「スポーツネイキッド」発表! “17年ぶり”に日本導入か! 攻撃的な顔付きにメリハリボディ! 「CB750 ホーネット」登場!
くるまのニュース
スズキ 新型「メガスポーツツアラー」発表! 見た目と裏腹な俊敏性!? 重量級ハイパワーマシン! 新型「ハヤブサ」何が変わった?
スズキ 新型「メガスポーツツアラー」発表! 見た目と裏腹な俊敏性!? 重量級ハイパワーマシン! 新型「ハヤブサ」何が変わった?
くるまのニュース
スズキの「“1人乗り”軽トラ!?」いつ発売? 斬新“静音”仕様の4輪モデル! 超小型な「SUZU-CARGO(スズカーゴ)」どんなクルマ?
スズキの「“1人乗り”軽トラ!?」いつ発売? 斬新“静音”仕様の4輪モデル! 超小型な「SUZU-CARGO(スズカーゴ)」どんなクルマ?
くるまのニュース
6速MTあり! トヨタの最新「めちゃデカいバン」がスゴい! 全長6.3m超え&「2列7人乗り仕様」も設定! 高性能“静音仕様”まで選べる最新「プロエース」欧州モデルとは!
6速MTあり! トヨタの最新「めちゃデカいバン」がスゴい! 全長6.3m超え&「2列7人乗り仕様」も設定! 高性能“静音仕様”まで選べる最新「プロエース」欧州モデルとは!
くるまのニュース
ホンダ「新型“V6”SUV」世界初公開! 5年ぶり全面刷新で「“カクカク”デザイン」に! 本格仕様「トレイルスポーツ」も超カッコイイ「パスポート」米に登場
ホンダ「新型“V6”SUV」世界初公開! 5年ぶり全面刷新で「“カクカク”デザイン」に! 本格仕様「トレイルスポーツ」も超カッコイイ「パスポート」米に登場
くるまのニュース
トヨタ最新型「C-HR」新発表に反響多数! 「赤いTOYOTAエンブレム」も超カッコイイ「コンパクトSUV」に熱望の声! 新モデル搭載の新機能「ジオフェンシング」欧州で公開され話題に
トヨタ最新型「C-HR」新発表に反響多数! 「赤いTOYOTAエンブレム」も超カッコイイ「コンパクトSUV」に熱望の声! 新モデル搭載の新機能「ジオフェンシング」欧州で公開され話題に
くるまのニュース

みんなのコメント

20件
  • saj********
    ジムニーにEVって期待してないよ
    クロカン出来なくなるの元々解ってるから
  • ユズヒコ
    >ジムニーをEV化すると、もっともいい部分を台無しにするだろう

    さすがにスズキはわかってるね。日産のように突貫工事でショボいEV作って補助金で儲けてやろうなんてことは毛頭考えていないんだ。やはり日本の自動車メーカーで生き残るのはトヨタとスズキだけ。これは間違いない。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

165.4200.2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

0.0650.0万円

中古車を検索
ジムニーの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

165.4200.2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

0.0650.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村